Wed 080820 右手首の状況 志望校対策講座について ヴィチェンツァ紀行 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 080820 右手首の状況 志望校対策講座について ヴィチェンツァ紀行

 昨日も書いたが、21日から「志望校対策・過去問研究」の授業収録が始まる。右手首の状況は相変わらず「危険度4」であり、病院なんか滅多に行かない私でも、少しだけ気弱になって「そういえば『整形外科』というものもあった」と考えていたりする。授業評論家の皆さんがよく口にする「自己管理」などという言葉が目の前をチラついて「大切な授業収録前に、キチンと自己管理するのは講師の最低限の義務だ」とか批判されるのもイヤだなと思う。


 写真上は、右手首の状況。ソフトボールで金メダルの上野投手などから見たら、私なんか本当のアホかもしれない。写真下は、ナデシコの手首、というか、足首。ネコは気楽なものである


 病院は、痛いからキライである。健康診断なんか、何だか知らないがやたら血液ばかり採られて損した気持ちになるだけだ。だから、病院というものにはこの20年で2回しか行ったことがない。1回は12年前「ボローニャの斜塔」のようだった2本の前歯を何とか見栄えよくするためと、奥歯を中心に大量発生していたC3レベルの虫歯4本(あのままにしていたら今頃はもう私は死んでいただろう)を処理するため。


 もう1回は、鼻の奥の、鼻と耳の管が接触するあたりに大量発生したポリープをすべて切除し、ついでに中学生の頃以来悩まされていた鼻の通りを改善するため。あの時は、ポリープで鼻が完全に塞がれ、鼻呼吸が出来なくなって常に口を開いて息をしているという状態だった。みっともないし、苦しいし、寝られないし、飛行機(当時は駿台講師で、毎週1回福岡出張があった)の離陸と着陸のたびに耳を激痛が襲うし、英語の発音が出来ないし、最悪の状況だったから、10日の入院で手術から何からとにかく事態を改善するために出来る全てのことをしてもらった。


 病院などと言うところはよく慣れていないから、ナースコールを押しまくって顰蹙を買ったかもしれない。食事の時にお箸がなくて、それだけのことでもナースコールを押した。慈恵医科大、担当のナースは大池さんという人で、鼻の穴の奥にガーゼを突っ込めるだけ突っ込まれた(あとで取り出された血まみれガーゼの山を見て、むしろそっちの方が感動的だったのだが)私のところに、笑いながらお箸を持ってきてくれたものだ。


 病院には、あれから行っていない。去年11月にインフルエンザの予防接種に行ったぐらいである。病気などというものは、気合いで十分に治るものだ。8年前、珍しく風邪を引いて39℃以上の熱が出たときだって、授業を休講にするわけにはいかないから(代ゼミ大宮校での直前講習だったが)暖房のガンガン効いている教室で、それでも余りに寒気が激しかったから、スーツの上から分厚いコートを着て、1日5コマちゃんとこなしたものである。たとえインフルエンザでも、冷えたポカリスウェットが6リットルあれば、それを飲んで1晩で確実に治してみせる。というか、ついこの間だが、実際に治したことがある。


 では、何故今回の右手首に限ってそんなに気弱になっているのか、ということになるが、原因は、おそらく明日から収録する「過去問研究」のせいだろうと思う。1回の授業で扱う量が、とにかく大量なのだ。たとえば明日は早稲田大学文学部2008年だが、たった180分で読解問題7問と英作文1問を解説しなければならないのだ。もちろん、もし私がいま受験生だとして「制限時間内にこれを解きなさい」と命じられれば、解いてみせることにやぶさかではない。しかし「生徒が全員理解できるように解説してください」ということになると、実際の受験生のレベルを熟知しているだけに、解説に困難を感じるのである。


 楽々合格しているような優秀な受験生諸君でも、制限時間内に全ての問題を楽々とこなしているわけではない。早稲田(文)なら、英語では約7割得点できればOK。英語7割、国語7割、社会7割、それで楽々合格できるのだ。英語7割の得点のためには、読解問題7問から自分に解けそうな5問を選んで、そこだけじっくり解けばそれで十分合格なのであるが、話が「解説授業」ということになるとそういうことは言っていられない。全問解かなければ合格できないというスタンスで解説し、全問にチャレンジするという前提で時間配分を述べ、しかも180分の解説時間に入れなければならないから、長文読解問題を全訳してあげることなどは不可能である。


 長文読解問題で全訳をせずに授業を行うことには、講師として大きなフラストレーションを感じる。実際の受験生は「全訳をしてもらわなければよく分からない」というレベルの者が圧倒的に多い。そのことを熟知している講師が、全訳をしてあげる時間がない。本来なら、1問ずつ50分でも60分でもかけてあげたいところなのに、1問15分程度しか使えない。これで何のフラストレーションも感じなかったら、講師として熱意がないだけである。というわけで、熱意を授業にぶつけられない欲求不満が、すべて右の手首の痛みに集約されてくる。いろいろ湿布は貼ってみても、湿布の冷たい快感は1時間しか続かずに「あああ、あああ、明日から1問15分の解説授業か、あああ」という欲求不満が疼きはじめるのである。


 もちろん、私は解説が言語道断に上手(自分でよく知らないことでも、他人に理解させることが出来るほどだ)から、私の解説を聞いてそれでもなお分からないという生徒はほとんど存在しないだろうという自信はあるのだが、1人でも2人でも取りこぼしが出るとすれば、その1人2人のことが気になってならないのだ。しかも、受講生はあの熱心な東進の生徒たちである。相手の熱意を知っていればいるほど、取りこぼすことなど決してしたくないのである。全力は尽くすが、全力を尽くしたからそれでOKと言っていられるうちはまだ素人である。取りこぼしが明らかに0人であることを自信をもって言えないような授業では、手首の痛みはなかなか引いてくれないだろう。


 昨年はこのタイプの授業を3年分(2005年・2006年・2007年分)まとめてこなした。私の担当は早稲田大学の政経学部・法学部・国際教養学部・文学部である。すべて非常にうまく進んで、収録を進めるに従って絶好調になり、いま考えてみれば、あの時の絶好調が今年の絶好調につながっているようにも思えるのだ。だから、もちろん今年も全力を尽くす。今年は2008年の1年分だけだから負担が大きすぎることもない。東進生諸君にも、ぜひ力をつけて、積極的にこのシリーズにチャレンジしていただきたいと切望している。


 4月21日、パドヴァ駅前の治安の悪さに驚いて、迷わずヴィチェンツァへの小旅行に踏み切ったまではよかったが、ヴィチェンツァ駅前もパドヴァに負けず劣らず治安はよくないようである。「長居は無用」かもしれない。ルネサンスの建築家アンドレア・パッラーティオの街ということになっていて、パッラーディオと彼の弟子たちが設計した有名な建築物が目白押しらしいのだが、何しろこちらは完全に素人である。「オリンピコ劇場」(写真上)「キエリカーティ絵画館」「バジリカと時計塔」(写真下)など、すべて「すみません、素人なもので。ではでは」「あらま、これって、有名なんですか、ほおほお。ではでは。」という感じで、ほおほお、ではでは、ほおほお、ではでは、というわけで、走り抜けるように終わってしまった。


 正直に言うが、パッラーディオという名前だって、ヴィチェンツァに小旅行すると決めた後でガイドブックを読んで初めて知った名前である。こういうところで知ったかぶりをすると返って恥をかくから、興味のないものは興味がないと最初から認めた方がいい。いま思えばバジリカの屋根の作りが同じ北イタリア・ブレーシャのロッジア(写真下。080626参照)とそっくりで興味深いのであるが、まあそのあたりは専門家に任せた方がいい。


 素人の私としても面白かったのは、時計塔のあるシニョーリ広場の「ヴェネツィア共和国総督官邸」Loggia del Capitaniato(写真下)。これもブレーシャのロッジアとよく似ている。そしてその近くで見つけたレストランの看板(写真そのまた下)。思わず「何だこりゃ」の一言が出そうな看板だが、外国を旅行していてガイドブック的なことに全く興味が持てない場合は、こういう下らない看板を見つけてガハガハ笑っているに限るような気がする。

 


 というわけで、ヴィチェンツァ滞在は2時間足らず。つまらないから、すぐにパドヴァに戻ることにした。おお、つまらない。おお。下らない。おお、損した。この1泊は無駄になった。ま、ホテルに帰って、じっくり眠って、明日から3回目のヴェネツィアを満喫する準備をしよう。誰でもそう考えるシチュエーションである。しかし、一つの旅行の中で1番感動的な場面というのは、そう思って諦めた時にこそやってくるものである。2005年、40日間かけてドイツ・イタリア・フランスを回ったときはマルセイユの4日間だったし、今回の旅行の中で私にとって一番印象的だったのは、この後パドヴァで過ごした夕方の数時間だった。それについては、明日の後半で記そうと思う。


1E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré
:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 6/9
2E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré
:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS7/9
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré
:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 8/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré
:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 9/9
7D(DvMv) OCEAN’S TWELVE
total m199 y965 d965