Tue 251223 カニカニ詐欺/我がカニ歴/朝日ジャーナル/豚肉の値上がりが心配 4884回
週刊誌「AERA」によると、何だか全国で「カニカニ詐欺」と言ふマコトにケッタイな詐欺が横行しているんだそうだ。
いきなり電話がかかってきて、「ぎっしり身の詰まったすごくお得なカニがあるんですが、お安くお届けできます」と、少し訛りのある実直な声で説得される。何だか義理と人情にホダされるような気分になってついつい注文してしまうと、たいへん劣悪なクオリティのカニが送られてきてガッカリする。そういうストーリーなんだそうだ。
何しろ天下の朝日新聞出版による雑誌記事だ。記事を書いた人の署名まで、ちゃんと入っている。まさかテキトーな取材で書いた記事じゃないだろう。それにしてもこりゃ何だか日本、情けないにも程がある年末風景じゃないか。
(12月16日、福岡空港で旨いヒレカツをいただいた。「黄金色の豚」という店である)
「AERA」と言えば諸君、正式名称「朝日新聞ウィークリーAERA」であり、1988年の創刊からすでに40年近く頑張ってきた伝統ある週刊誌。創刊当初は「ライバルは朝日新聞です」が決め台詞で、2023年に「週刊朝日」が休刊してからは、その週刊朝日の役割も引き継いだ大切な雑誌である。
ま、我々の世代にとっては「朝日ジャーナル」の役割を引き継いだ雑誌、そんな位置付けだったはずだ。若い諸君はきっとご存知ないだろうが、「朝日ジャーナル」は1959年創刊、まさに一世を風靡したが、1992年に廃刊になった。
1960年代から1980年代まで、日本の青年層の世論は、とにかく左寄り。面白いほど左に寄っていて、ググッと左でなければ知的でないようにさえ思われ、その「左」なるものを理解しようと思えば、まず何はともあれ手に取る雑誌が「朝日ジャーナル」であった。
(福岡空港「黄金色の豚」のヒレカツ御膳。普通の味噌汁を、+200円だったか300円だったかで豚汁に変更した)
だから深夜の喫茶店での仲間たちとの議論なんかも、「朝日ジャーナルを10年分、丸暗記しているんじゃないか」みたいな男子学生が引っ張って、もしも「朝日ジャーナル」を読んでいなければ、即座に「勉強不足」「知的な人間ではない」と土俵の外にポイ、そのぐらいの力のある雑誌だった。
一昨日と昨日の記事で紹介した駿台のレジェンド表三郎師なんかも、まさにそのタイプ。授業では教材そっちのけで左寄りの議論が展開され、「まだ右も左も分からない受験生に『左』を教えてくれる」と大評判、入試の英語の解説なんかより、左&左、徹底して左、その雑談を求めて関西の受験生は表三郎師の教室をギューギューに埋め尽くした。
当時の浪人生としてはマコトに珍しく「左にあまり関心がない」「超ど真ん中」だった今井君は、まあ問題なのは数学だけだったので、英語の授業にはほとんど出席しなかったが、いやはや当時の超人気講師は、どの予備校でもみんな左また左、知的青年はみんな朝日ジャーナルを小脇に抱えて街を闊歩した。
(ポイントは写真上方「ちょいがけカレー」の追加。+300円だったか、このカレーでカツカレーにもできるし、オカワリ自由のゴハンにかけて、カレーライスも満喫できる)
その朝日ジャーナルの(おそらくは)後身として位置付けていいはずの「AERA」に、「カニカニ詐欺」の記事が出て、だから諸君、何だかワタクシは寂しいのである。その寂しさはおそらくオカド違いなのだが、あれほど青年層が熱く燃えた知の世界から隔たること、こりゃ甚だし過ぎないか。
そもそもワタクシ、カニはちょっと苦手なのだ。そりゃ、誰かが食べやすく剥いてくれるならいいですよ。しかしカニのお店って、みんなが無口になってひたすらカニと格闘するばかり、知的な会話も全く交わさずに、クリスマスの夜に黙ってカニと格闘だなんて、寂しくないんですカニ?
「要するにそれが書きたかったんですカニ?」とか、そんな冷たいことを言わないでくれたまえ。思えば、今井君のカニとの付き合いはそんなに多くない。「やっぱりちょっと苦手なのカニ?」であるが、予備校講師になってからの30年、カニをいただいた経験は数えるほどしかない。
(たかが空港のトンカツだが、「黄金色の豚」、当分はワタクシの定番になりそう。特に「ちょいがけカレー」、全国のトンカツ屋さんにもマネしてほしいぐらいだ)
まず思い出すのは、1998年2月の新宿「かに道楽」。冬の夕暮れに新宿伊勢丹裏の「かに道楽」に入って、2時間だか3時間だかの食べ放題&飲み放題にチャレンジ、結局いっしょに食べ放題&飲み放題をやらかした人間が泥酔して、帰り道で吐瀉/嘔吐の欲求に耐えられなくなった。イヤな思ひ出である。
それに先立つ1995年には、駿台の先輩講師に誘われて埼玉県大宮駅前の「氷雪の門」という店に入った。今もあるかどうか分からないが「そごう百貨店」の最上階の店で、ずっと我々2人だけ、最初から最後まで他の客は入ってこなかった。マコトに寒々しい状態で、先輩の自慢話&お説教を聞き流しながら、黙々とカニと格闘した。
金沢だったか福井だったか、深く雪の降り積もった北陸の街で、カニ料理専門店に入ったこともある。最初からカニの匂いのムッとこもった個室に入ると、ムラサキ色に髪を染めた店員のオバサマがやってきて、次から次へとカニを茹で、次から次へとカニを剥き、今井君の目の前の皿に堆く積み上げるのだった。
そういう山盛りのカニを目にすると、さすがに何だか気持ち悪くなってきた。過ぎたるは、及ばざるが如し。そんな激しい勢いでひたすら茹で、ひたすら剥かれ、ひたすら積み上げられると、気の弱い今井君はもう目を回すしかないのである。
(12月16日、博多からヒコーキで京都に移動したワタクシは、四条烏丸の日本酒の店で豚しゃぶをいただいた)
これも金沢だったか福井だったか、店が特定されるといけないから黙っておくが、「エビでカニを煮る」という豪華料理に目を回したこともある。
店の人々は「ビスク風のお料理」とたいへん自慢気だったが、まずは大量のエビを思い切り煮込んで、どろどろのスープ状にする。そういうエビのどろどろが激しくアブクを上げ、マグマ地獄のように煮立ったところで、そのエビの朱色のマグマの中に、カニをドサドサ投入するのである。
いやはやあまりに豪華、あまりに贅沢、豪華すぎて&贅沢すぎて、ここでも気の弱い今井君はとても落ち着いて食べていられなくなった。「どうかなさいましたか?」と店の人に尋ねられたが、平身低頭して「もう満腹でこれ以上詰め込めない」の意を伝え、ほうほうのていでお店を出たのだった。
(京都・四条烏丸の日本酒専門店「玉乃光」にて。豚しゃぶの豚が、こんなに豪華。日本酒も飲み放題を選択した)
我が約30年の「カニ歴」を簡潔に綴れば、ほぼ以上のごとし。あんまり碌なことになっていない。今回の京都でも「カニカニランド」という店への入店を一瞬考えたが、やっぱりヤメにした。JR西日本では「カニカニエクスプレス」という特別列車を運行しているが、どうしてそんなに「カニカニ」とカニ2つ、意地でもくっつけたがるんですカニ?
今のワタクシは、高価なカニは敬して遠ざけ、ひたすら豚肉を愛し、フゴフゴ豚さんの鳴き声のマネをしながら街を闊歩し、そこに豚しゃぶ屋があれば闖入し、そこにトンカツ屋があれば迷うことなく案内を請う。
ところが諸君、その豚肉がピンチなのだと言ふじゃないか。報じたのは「AERA」ではなくてNHK。イベリコ豚など豚肉の生産が盛んなスペインでASF=「アフリカ豚熱」の発生が確認され、11月下旬から豚肉の輸入が停止されているんだという。
(四条烏丸「玉乃光」にて。豚しゃぶの豚の長さに一驚を喫する。みんな余りにも長い。1/2に切断するのを忘れちゃったのかもしれない)
おやおや困りましたな。大手食品メーカーでは「パニック的な相場になって値上がりしている」と言い、卸売会社では「今後の値上げを検討せざるを得ない」とおっしゃる。おお、これこそ「カニカニ詐欺」なんかより先に「AERA」が伝えるべきニュースなんじゃないのか。
だから早速ワタクシは、12月中旬にどれだけ豚肉をワシワシやったか、その写真を昨日からたくさん掲載して、「困りますよ、豚肉の値段を上げちゃ」、そこんところを訴えようと考えたのだ。
豚肉は、すでにイタリア産も3年前から輸入が止まっているんだそうだ。いま頼れるのはカナダ、メキシコ、スロベニア。「おやおや日本の養豚はどうなっちゃったの?」であるが、まあ諸君、日本の豚君たちはすっかり超高級にガラパゴス化してしまって、安価な普通の豚君は、そう簡単に見つからない。
もしも今あの「朝日ジャーナル」が健在なら、ここでもまた日本の農業政策の失敗を糾弾して、何でもかんでもガラパゴス的に高級化してしまう愚を指摘し、安価な豚君を安心安全に安定的に供給するシステム作りが急務であることを論じて、日本の青年たちを熱狂させたに違いない。しかし諸君、いま目の前にあるのは「カニカニ詐欺にご注意」、そういう記事なのである。
1E(Cd) Baltsa, Carreras, Karajan & Berlin:BIZET/CARMEN ①
2E(Cd) Baltsa, Carreras, Karajan & Berlin:BIZET/CARMEN ②
3E(Cd) Baltsa, Carreras, Karajan & Berlin:BIZET/CARMEN ③
4E(Cd) Take 6:BEAUTIFUL WORLD
5E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 1/6
total m115 y1489 dd31054






