Mon 260209 ワンヌ君が不憫だ/金沢「蓄音機館」で思ふ/師匠たちの声の思ひ出 4927回
いやはや今朝の東京はグングン気温が下がって、午前2時にはマイナス2℃、午前5時にはマイナス4℃、気象庁の記録は少し違うかもしれないけれども、我がスマホ君による渋谷区の数字はそうなっていたんだから、まあそれを信じてもらうしかない。
どうして午前2時だの午前5時だのの冷え込みを知っているのかと言えば、そりゃもちろん衆議院選挙の結果を最後までウォッチしていたからであって、15年前に民主党政権の中枢を担った五指に余る重鎮&大物議員の落選を1人1人確認した後、月曜日のゴミ出しをしてから羽毛布団にくるまった。
12月下旬の冬至を過ぎてから、すでに1ヶ月半が経過した。もう1ヶ月半すれば春分の日であって、夜明けは早くなり、日暮れは遅くなった。「羽毛布団にくるまった」という時点で、もう外はしらじら明け、選挙の結果を知らせる朝刊は遅くなりそうだっが、そろそろスズメが囀り始めていた。
(金沢・蓄音機館にて。「His Master’s Voice」のワンヌ君の勇姿に、ふと泣きそうになる 1)
ワタクシはあくまで予備校講師であるから、こういうブログなんかでも政治向きの話は書きたくない。というか、書かない方がいい。そういう難しいことは専門家や「インフルエンサー」の皆様に任せておくのが身のためだ。
そこで今日のワタクシは、今日も今日とて出張の旅の日々を記録するのであるが、諸君、例えばもしも犬を1匹飼っているとして、その犬を放置して旅だの出張だの、そんなドライなことが可能かどうか、考えてみてほしい。ワタクシもしも犬がいたら、とても海外の旅なんか行けないし、国内出張だってまず無理なのである。
だって犬、ワタクシは犬のことを「ワンヌ」ないし「オワンヌ」と呼ぶのであるが、置き去りにされたワンヌ君が不憫、あまりにも不憫じゃないか。不在のダンナを探して、オウチの中をいつまでもクンクン探し回るじゃないか。
不在のダンナが帰ってくれば、嬉しさのあまりオモラシするかもしれないし、くるくる&くるくる際限なく同じところで輪を描いて、たとえ叱られても輪を描きつづけ、疲れ果ててバタンキュー、幸せそうな笑顔で朝までぐっすり眠るだろう。それというのも前の夜、ダンナの不在が悲しくて眠れなかったせいなのだ。
(金沢・蓄音機館にて。「His Master’s Voice」のワンヌ君の勇姿に、ふと泣きそうになる 1)
そういうワンヌ君の姿を思えば、それを知っていてまさか旅にも出張にも出かけられないし、日々のお仕事に出かけるのだって命懸け、ワンヌ君をお部屋に閉じ込めて、ドアに鍵をかけて、駅まで徒歩10分、その駅までの道のりでもワンヌ君が可哀想で可哀想で、熱い涙が込み上げてくるじゃないか。
すると諸君、中型犬でも大型犬でも同じこと、「一緒に生活しよう」と決めてしまったが最後、もう仕事の形態は自宅勤務しか考えられなくなる。いつでもオワンヌといっしょ、散歩も買い物も仕事もいっしょ、例の満面の笑みを眺めてうっとり、そういう運命にギュッと繋がれることになる。
その点、ネコというのはなかなかオトナな生き物であって、まあ一応は不在への苦情をニャーニャーうるさく言ってはみる。しかしどうやらそのニャーニャーは「一応」に過ぎないようであって、ダンナが姿を消せばむしろせいせいして大アクビ、いつもの寝床やまだ温かいテレビの上を占領して、平気でヌクヌク&スヤスヤ、ダンナの帰りまでナンボでも気持ちよく眠っていてくれる。
(金沢・蓄音機館にて。「His Master’s Voice」のワンヌ君の勇姿に、ふと泣きそうになる 3)
だからワタクシは気楽なネコ派でいるのであって、7年前に死んだニャゴロワも、死んでからもう10年近くが経過するナデシコも、今井センセの不在を激しく責め立てることはしなかった。
旅や出張から帰ってくればマコトに冷静に一言、ニャゴロワは甲高いソプラノで「ミー」と言い、ナデシコは優しい落ち着いたアルトで「ナー」と挨拶し、後はまた知らんぷりでソファーに上がり、酒を飲み始める今井センセを呆れ顔で見上げて、ちょっと伸びをして、またいつの間にか眠りに落ちていた。
ワタクシはそういう人間であるから、金沢の「蓄音機館」で例の首を傾げたワンヌ君の姿なんか眺めると、不憫で不憫でもうたまらない、それだけで熱い涙を止められないのである。
だからホントは、金沢を訪問しても蓄音機館なんか訪問するのはツラいのだが、この2年間でもう3回目の訪問。館長・八百市屋典之氏の丁寧でユーモア溢れる蓄音機パフォーマンスが楽しみなのであるが、今回はおそらく日曜日のためにご不在だった。
(金沢・蓄音機館にて。謹厳実直な高級オジサマの蓄音機パフォーマンスがまた素晴らしかった 1)
だからお馴染みの蓄音機パフォーマンスは、館長とは違うタイプの謹厳実直な高級オジサマの担当だったのだが、こちらがまた全く別の味わいが素晴らしかった。説明は短く簡潔に的をしっかり射たもので、その分しっかり蓄音機の音を、長くたっぷり聴かせてくれたのである。
そしてその場にもやっぱり「His Master’s Voice」のワンヌ君が小首を傾げて、大きなラッパから響いてくるダンナの声に聞きっているのであった。
ワンヌ君のダンナはとっくに天国に旅立ち、いま蓄音機から流れるダンナの声は、もちろん録音されたものに過ぎないのだが、ワンヌ君にそんなことは分からない。とにかく懐かしいHis Masterの声が聞こえる。不思議でならないが、とにかくダンナの声がする。ワンヌ君はもう夢中、ラッパから離れようとしない。
いやはやこの姿、ワタクシはもう絶対にたまらないのである。海外旅行や国内出張で今井君が不在にしている間、もしもニャゴロワやナデシコがこんなふうに夢中になってくれているかもしれないと思ったら、旅でも仕事でもサッサと切り上げてオウチに帰ってしまっただろう。
(金沢・蓄音機館にて。謹厳実直な高級オジサマの蓄音機パフォーマンスがまた素晴らしかった 2)
というか、ワタクシはふと「My Teacher’s Voice」を思うのである。もちろん両親の声なんかも思うのであるが、何しろワタクシ、中学・高校・予備校と、ほとんどの先生方の声を記憶している。さすが抜群の記憶力だ。もしもいま目の前のラッパから先生方の声が聞こえたら、きっとオワンヌなみにラッパを覗き込むに違いない。
中学なら、国語の高橋先生・数学の竹島先生・英語の柿崎先生。高校なら、古文の高久先生・物理の高橋先生・数学の平田先生・英語の小野寺先生・化学の小野寺先生。やたらに小野寺姓の多い土地だった。
しかし諸君、やっぱり予備校の先生方は特別である。ワタクシ駿台予備校の生徒だったのはたった1年間に過ぎないが、数学の秋山師・長岡亮介師・野沢師、英語の鈴木長十師・伊藤和夫師、古文の桑原岩雄師、そういう懐かしい師匠たちの声がラッパから聞こえてくれば、間違いなく蓄音機のラッパの前に駆けつけて、その声にじっと聞き入るに違いない。みんな、素晴らしい声の持ち主だった。
問題は、大学の学部以降にそのレベルで「My Teacher’s Voice」に出会ったことがない点であって、もちろんだからこそこうしてずっと予備校の世界で生きていくことになったのだろうが、ホントにホントに不思議なほど、学部以降の「My Professor’s Voice」、サッパリ記憶がないのである。
(蓄音機館から泉鏡花記念館まで、雪の中をホンの十数歩である 1)
翻って諸君、では誰か今井君の声を記憶してくれていて、ふとどこかから今井センセの声が聞こえてきたとして、「お、今井だ!!」「あ、今井センセの声じゃないか?」と、「My Teacher’s Voice」として聞きいってくれるモト生徒諸君って、どのぐらい存在するんだろうか。
まあ、そんなに意地悪な顔で笑いなさんな。大学入試本番の真っただ中、ということは今年の受講生諸君もまもなく予備校の世界をご卒業、めでたく大学学部の世界に旅立っていらっしゃる。ワタクシたち講師などというのは、おそらくカンタンに忘れ去られる立場であって、この時期には若干オセンチになるのだ。
2月1日、大雪の金沢で蓄音機館を出た後のワタクシは、あまりの大雪に困り果ててしまった。何しろ東京から履いてきたのはツルッツルの革靴であって、ちょっと間違えばスッテンコロリ、こんな頑丈な肉体でもスッテンコロリには大きな危険が伴うのである。
そこでワタクシ、蓄音機館のお隣の「泉鏡花記念館」を訪問することにした。何しろお隣どうし、こんな短距離なら、スッテンコロリの危険性はぐいっと低くなるのである。
(蓄音機館から泉鏡花記念館まで、雪の中をホンの十数歩である 2)
しかもワタクシにとって泉鏡花、高校生の頃からたっぷり親しんだ作家である。受験勉強をみんなテキトーにゴマかして、そのぶん泉鏡花を読み耽った。岩波書店の鏡花全集28巻+別巻1冊、全て遥かな昔に読んじゃった。その独特の文体も我が頭脳に染み込んで、いつでもマネして書けるぐらいだ。
あえて言えば、好きな作家の文体と言ふものも「His Master’s Voice」であり「My Teacher’s Voice」でもあって、どこかから聞こえてくるダンナの声にワンヌ君が激しく反応するように、ふと目にした文章のリズムにワタクシ、「おお鏡花だ」「おお百閒だ」と、思わずウットリ首をかしげるのである。
ついでに今この季節のオセンチぶりを発揮するなら、このブログだってすでに4930回に迫るのだ。5000回近く熱心に読んでくれた人々の頭の片隅に、今井君独特のフザけた文体の残りカスでも残ってくれて、ふと何かの間違いで「おお今井だ!!」と小さく叫んでくれる奇跡でもあったら、そんなに嬉しいことは他に考えられない。
1E(Cd) Reiner & Wien:VERDI/REQUIEM 2/2
2E(Cd) Brendel(p) Previn & Wiener:MOUSSORGSKY/PICTURES AT AN EXHIBITION
3E(Cd) Sinopoli & New York:RESPIGHI/FONTANE・PINI・FESTE DI ROMA
4E(Cd) Dutoit & Montréal:RESPIGHI/LA BOUTIQUE FANTASQUE
5E(Cd) Rubinstein:CHOPIN/MAZURKAS 1/2
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