エレファント・マン
1980年 イギリス・アメリカ合作映画
監督 デビッド・リンチ
脚本 デビッド・リンチ
出演 ジョン・ハート
アンソニー・ホプキンス
アン・バンクロフト
⚫︎あらすじ
見世物小屋で「エレファント・マン(象人間)」として虐待されながら暮らしていたジョン・メリックは、頭部や身体に著しい変形を抱えていた
外科医トリーヴスは彼に興味を持ち、医学的な研究対象として病院へ連れて行く
トリーヴスはメリックを「知能のない哀れな怪物」だと思っていだが、交流を重ねるうちに、彼が非常に知的で、詩や聖書を愛する繊細で美しい心を持っていることに気づく
トリーヴスの助けでメリックは上流階級の人々とも交流し、人間らしい生活を手に入れる
しかし、社会の好奇の目は冷酷で、彼は再び見世物小屋の興行主に誘拐され、ヨーロッパ中を連れ回される
心身ともにボロボロになりながらも自力でロンドンへ戻ったメリックは、駅で群衆に追い詰められた際、「私は象じゃない!私は人間だ!」と叫び、自身の尊厳を訴える
最後は病院に戻り、友人たちの愛に包まれながら、彼は「普通の人と同じように横になって眠りたい」という唯一の願いを叶えるため、重い頭を枕に沈め、静かに息を引き取る
⚫︎感想
かつて映画を見たことがありましたが、あまりよく解らず内容もほぼ覚えてもいませんでした。
ですが、あらためて見てみると、白黒で19世紀の産業革命の頃のイギリスに実在した青年の悲劇を描いた映画でした。
産業革命当時、機械で怪我をした労働者を手術していた医者が、エレファント・マンに興味を持つ医者、フレデリック・トリーヴス(アンソニー・ホプキンス)です。
エレファント・マンの飼い主は、彼を世界一のフリーク(奇人)だと言って、彼を見世物にして生計を立てていました。
トリーヴスはエレファント・マンを飼い主から引き離し、病院の部屋を与え安らかに生活をさせます。
トリーヴスはメリックを学会で紹介し、医者として有名になりました。
そして有名になったメリックも社交界から一目会いたいと病室に人々が押し寄せて来ました。
しかし看護婦長から「トリーヴス先生のやっていることは飼い主と同じだ」と言われて、彼自身も悩むようになります。なぜなら興味を持つ人を招き、病室でメリックに会わせていたからです。
病院内では、今後メリックをどうするかで議論になります。寝たきりの病気では無いのだからあの生き物は追い出せと。
その会議中にヴィクトリア女王から「メリックの面倒を見てくれてありがとう」と言うメッセージが届きます。
その手紙1つでメリックは病室に一生暮らせることが決定します。
ですが病院内にも悪い奴がいて、メリックを見世物にして金を取る商売をします。その見物客の中に元の飼い主が居たため、メリックは連れ出され、また見世物にされてしまうんです。
メリックに対する酷い扱いを、見るに見かねたサーカスの仲間たちは、サルのオリに入れられたメリックを逃します。
命からがらイギリスの病院に戻ったメリックは元の幸せな生活に戻ります。
サルの檻に入れられていたメリックが、今では貴婦人と一緒にオペラ鑑賞をします。
そして最後に、ずっと夢だった普通の人のように横になって寝るメリックでした。
産業革命当時のイギリスでは、労働者は機械の一部のように働かせられて、瀕死の怪我を負う人も多かったようです。
19世紀のロンドン(ヴィクトリア期)は、産業革命を経て高度な文明を誇る一方、貧富の差が激しく、見世物小屋(フリーク・ショー)が娯楽として存在していた時代でもありました。日本では文明開花の頃のお話しです。
実在の人物ジョゼフ・メリックは、1862年に生まれ、1890年(明治23年)に27歳で亡くなっています。
見せ物小屋にはコビトや髭のある女、異常に背の高い男や胴体のくっついた双子などが居て、映画「グレイテスト・ショーマン」のようでした。
ジョン・メリックの容姿はエレファントというよりコブダイのように見えました。
映画「エレファント・マン」は異形ゆえの孤独と、その奥にある気高い魂を鮮烈に描き出した不朽の名作なんですね。
⚫︎ ジョゼフ・メリック
1862年8月5日〜1890年4月11日
生まれたときは何でもなかったジョゼフは、2歳になるころから口の下に腫れ物が出てきて、成長するにつれて見た目が変化していったそうです。
12歳で学校を卒業して葉巻の会社に就職しますが右腕の変形が進み離職します。
1832年に設立された貧困者を収容する救貧院に入り生活していましたが、22歳のときに奇形者を出演させる興行師の存在を知り、身の上を手紙に認めて送り見世物興行の世界に入りました。
そこではメリックの自伝も発売され「母が妊娠中に移動動物園の象の前で転倒し踏まれそうになり恐怖のまま生まれた」と。
メリックたちがロンドン公演を行ったときにトレヴィス医師が彼を見つけ、彼を標本として学会に発表します。
しかし、このころより見世物小屋を公序良俗に反するものとして排斥する風潮が強まり、メリックの出演する小屋にも警察から閉鎖命令が下されます。
今までの興行師は、メリックを他の興行師に売り、次の興行師はメリックの金を横取りして解雇してしまいます。
仕方なくメリックはイギリスに戻りトレヴィス医師に保護を求めたそうです。
メリックは自分で自分を見世物にして稼いでいたんですね。自分の見た目を売り物にして稼ぐなんて、凄い精神力の人だったんだと思います。
いや、そうするしか生きるすべが無かったのかも知れません…




