評決


1982年 アメリカ映画

監督 シドニー・ルメット

脚本 デヴィッド・マメット

出演 ポール・ニューマン



弁護士役のポール・ニューマンが、医療ミスをしたキリスト教系病院を相手に争い、陪審員たちに正義を訴えます



⚫︎あらすじ


かつてはエリートだったが、今や酒浸りで仕事も失いかけた弁護士フランク・ギャルヴィン


彼に残された唯一の仕事は、出産時の医療ミスで植物状態になった女性の損害賠償訴訟


被告はカトリック教会が運営する権威ある大病院


当初、フランクは示談金目当てで引き受けるが、変わり果てた被害女性の姿を目の当たりにし、金で解決するのではなく、真実を明らかにするために裁判を戦う決意をする


しかし、相手は教会という巨大組織


教会側は辣腕弁護士コンキャノンを雇い、圧倒的な資金力と権力で証人を次々と買収・懐柔していく


フランク側は味方にも裏切られ、重要な証拠も封じられ、絶体絶命の窮地に追い込まれる


それでもフランクは、わずかな手がかりを頼りに、法廷で「正義とは何か」を陪審員に問いかける




 

⚫︎感想


ポールニューマンが初老の枯れた弁護士を演じています。あの、「明日に向かって撃て」の頃のイメージではありません。



簡単に言えば、医療ミスで植物人間となってしまった患者側の弁護士です。


最初は金だけ取って示談にしようとしていたポールニューマンでしたが、患者の状態を見て、裁判で闘う決意をします。


対する病院側の最強弁護士団は、何としても病院側が勝つように、都合のいい記事を新聞に載せたりと画策するんです。


はい、出ました、訴訟大国アメリカの雰囲気!患者のことなんか誰一人考えていないんです。


考えているのは訴訟に勝つこと、勝つための根回し、そのための優秀な頭脳が集結していきます。


とにかく相手の意思など尊重せず、すべて金で解決しようと考えている。もしかして敗戦後の日本も同じようなことをしてしまっていたのかも知れないですね…



⚫︎裁判長も教会病院の味方


教会が経営する病院で、医療ミスは起こりました。ですが、教会の権威が強く、裁判長までもが教会病院側の味方なんです。

現代では、このような露骨な癒着は厳しく監視されているようですが、「権力を持つ側が暗黙の了解で有利になる」という不条理は、今もアメリカの法廷映画やドキュメンタリーが繰り返し扱うテーマとなっているようです。



⚫︎フランクが惚れた美女はスパイ


フランクが裁判で使おうとしていた戦略や、見つけ出した重要な証人が、なぜか先回りして教会側に潰されてしまいます。フランクは最初「どこから情報が漏れているんだ?」と疑心暗鬼になります。

ローラは被告側(病院・教会側)の辣腕弁護士コンキャノンが、フランクの動きを監視し、作戦を潰すために送り込んだ「ハニートラップ兼スパイ」でした。



⚫︎ アメリカのアパートの入り口が、階段の上にあるのはなぜ?


自動車が普及する前、街の移動手段は馬車でした。道路には大量の馬糞がたまり、その臭いや汚れが家の中に入らないよう、居住スペースのメインフロアを道路より高い位置に設置しました 。これは特にニューヨークやボストンなどの古い都市で見られます。

この階段はオランダ語で「階段」を意味する言葉に由来して「ストゥープ(Stoop)」と呼ばれています 。ニューヨークを築いたオランダ人入植者が、母国オランダの低湿地での洪水対策として建物を高く建てる習慣を持ち込んだと言われています。

アパートに庭やベランダが少ない都市部では、住人が階段に座って近所の人と話したり、子供が遊んだりする「屋外のリビング」のような場所になっています 。



⚫︎アメリカは全て陪審員制?


全て陪審員制ではありません。裁判官が判決を下す裁判官裁判もあります。アメリカの陪審員制は憲法で保障された権利ですが、常に適用されるわけではない仕組みです。

映画のように「市民が正義を決める」シーンは非常にアメリカ的で象徴的ですが、現実には裁判になる前に決着がつくケースが一般的です 。



⚫︎陪審員は12人


キリストの12使徒からきています。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に描かれている弟子12人です。

少なすぎると偏るし、多すぎるとまとまらないこともあり、統計学的に「12人いれば、社会の平均的な意見や多様性が概ね反映され、かつ全員で顔を突き合わせて議論ができる最大の人数」と考えられています。

陪審員制度の12人は「全員一致」が原則です。1人でも反対すれば評決は成立せず、審理無効となります。

もし審理無効になれば、莫大な資金がかかり、フランクには二度目の裁判を戦う力は残っていなかったでしょう。


映画「評決」で陪審員は1人欠席していて、11人で裁決されます。これは「最後の晩餐」でも描かれた裏切り者ユダを意味しているようです。裏切り者が1人も出なかったからフランクは裁判に勝てたのかもしれないのです。深いですね〜。



アメリカは弁護士の話が多いですね↓