髪結いの亭主
1990年 フランス映画
監督 パトリス・ルコント
脚本 クロード・クロッツ
出演 ジャン・ロシュフォール
アンナ・ガリエナ
少年時代に女性理髪師に憧れて結婚を夢見てきた少年が、大人になって美しい理髪師と出会い、結婚するストーリーなんですが…
⚫︎あらすじ
フランス・ノルマンディーのドーヴィルに住む12歳の少年アントワーヌは床屋に行くのが大好きだった。
一人で店をやっている、ふっくらとした美人の理髪師が自分の髪に触れる手触りや、彼女の体臭にうっとりする時間が至福のときだった。
ある暑い日、白衣のボタンを多めにあけた理髪師の胸に見入ったアントワーヌは、興奮して何も手につかず、夕飯の時に「女の床屋さんと結婚する!」と宣言してしまう。突然のことに驚いた父は彼を殴ってしまうのだった。
それから10数年後、大人になったアントワーヌ(ジャン・ロシュフォール)は、一軒の床屋で美しい女理髪師マチルド(アンナ・ガリエナ)を見かける。
「自分の結婚相手はこの人しかいない」と心に決めたアントワーヌは店に入り、散髪の途中で唐突に求婚する。
彼女は聞こえなかったようにそれを無視し、彼を外に送り出す。彼女の気持ちを測りかねながらも、アントワーヌは、「強く念じれば必ず願いは叶う」という父の言葉を胸にひたすら念じる。
三週間後、店を訪れたアントワーヌにマチルドは「あなたの言葉に心を動かされました。あなたの妻になります」と。彼の夢は叶った。
ささやかな結婚式をあげ、2人は一緒に暮し始める。夢が叶ったアントワーヌは彼女以外何も要らなかった。仕事も、友人も、子供さえも。
2人の店に様々な客がやって来ては帰って行き、幸福で静かな日々が続く。昔のことはあまり語りたがらないが、アントワーヌを深く愛しいつも静かに微笑んでいるマチルド。
しかし、ある雷雨の日、客のいない店の中で愛を交した後、マチルドは「買い物にいく」と言って雨の中に飛び出していく。
次に出会った時、マチルドは川から引き上げられ息をひきとっていた。彼女は水の中に身を投げたのだ。「あなたが心変わりして不幸になる前に死にます」という手紙を残して。
マチルドのいない店の中で、一人アラブの音楽にのせて踊り続けるアントワーヌの姿があった。
⚫︎感想
客の髪を洗う間にマチルドの股間を弄る亭主
(性癖の映画だな)
(店の場所が地下鉄のザジに似てるなぁ)
ある日ささいな喧嘩をした夜
仲直りにお酒のかわりにオーデコロンをカクテルにして飲んだ、そしてそのまま抱き合った
(オーデコロンって飲めるの⁈)
ある雨の日、突然抱き合い、そして買い物に行くといった妻は増水した川に身投げしてしまう
「あなたが死んだり、私に飽きる前に死ぬわ、不幸より死を選ぶの」
(嫌われる前に死ぬって…)
亭主はそれからも店を開け客には
「家内が戻ります」と告げるのだった…
いやぁ、何だかよくわからないような、官能的で魅力的な映画でした。
淡々とした会話が、なんとなくフランス版、小津安二郎のような雰囲気もありました。
少しジャン・レノに似た主人公の性癖が、大人になって叶うものの、最後は悲しい終わりを迎えることになってしまいます。
髪結いの女性も魅力的でした。ちょっとしたカットでエロチシズムが表現されていました。
そして亭主は独特の中東の音楽で踊ります。
なんとも言えない印象に残る映画でした。
きっと彼女は美しいままで死んでいこうとしたんですね…
⚫︎フランスの映画とは
映画はフランスが発祥の地です。
フランス映画は芸術性が高く、娯楽というよりは文化作品としての要素が高いです。
また、男女のさまざまな愛をテーマにしたものが多く、背徳の愛、溺れるような愛、いたずらっぽい愛、プラトニックな愛、燃えるような愛など様々な表現が多数あり「フレンチロマンス」と呼ばれています。そのため官能的な性描写もされています。
また型にはまらないアバンギャルドな作品が多いのも特徴です。特に革命期のヌーベルバーグ作品にはその傾向が強いです。
アバンギャルドとは先駆け・革新的という意味で元はフランス軍隊用語です。
フランス映画は政治的・社会的メッセージ性もあり、シュール(現実離れ)な笑いも盛り込まれているので解りづらいです。
フランスでは、音楽・誌・舞踏・建築・彫刻・絵画に続く第7の芸術が映画だそうです。そのため、ただの娯楽作品ではなく、文化や歴史、そしてお洒落で芸術性のあるパリの街並みがでてきます。
なんだかそう聞くと、フランス料理なんかも単なる食べ物ではなくて芸術作品なんでしょうね…
ただ単にフランス料理よりも、おにぎりのほうが美味いと思っている日本人には、もともと難解なものだったんですね。
フランス映画の世界観
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