「ニュースの英語」シリーズ、今日のトピックは「裁量労働制」についてです。

この「裁量労働制」ですが、英語では何と言うのでしょうか?

その前に、まずは新しい制度や新語・流行語などは、辞書には載っていないことも多く、また載っていたとしても、各国の制度やしくみの違い、文化の違いなどもあり、辞書に載っている訳をそのまま外国の方に伝えても、なんとなく推測はしてもらえると思いますが、詳細まではわかってもらえない場合のほうが多いかもしれません。

この「裁量労働制」も、ネット上やオンライン辞書には"discretionary labor [work] system"と訳されていますが、これは直訳に近く、外国人の方に説明する際には、制度の内容について説明を加える必要があります。

"discretionary"は「任意の、自由裁量の」意味なので、とらえようによっては"flextime system"(フレックスタイム制)と同じようにとらえてしまう英語ネイティブもいると思います。ですので、説明する際には、『制度のしくみ(フレックスタイム制との違いなども含む)』や、『適用される職種』などについて触れると良いのではないかと思います。

今日も"The Japan Times"からの引用になりますが、日本の最新情報については、やはり日本の文献に当たるのが効率的です。(ただし、"The Japan Times"は会員登録をしないと一ヶ月に読める記事数が限られてしまいます。)

では、"The Japan Times"の記事を引用しながら、「裁量労働制」の英訳を考えていきます。


1、まずは定義の部分から。

"It’s a system that allows employers to pay workers according to a predetermined number of hours instead of actual working hours. Workers, therefore, would not be paid for overtime work that hasn’t been agreed upon beforehand."
(The Japan Times / Feb 20, 2018より)

「(裁量労働制とは)雇用主が、実際の労働時間数の代わりに、あらかじめ定められた時間数に従って労働者に給与を支払うことを可能にさせる制度です。労働者は、それゆえ、前もって同意されていない超過勤務分の給与は支払われないことになります。」


2、1だけでは制度の概要が見えてきません。記事では、続いて『制度のしくみ』についてわかりやすい例を挙げて説明しています。

"For instance, imagine a prearranged agreement with the employee is to work seven hours per day on weekdays. Even if the person works three hours or 10 hours on any given day, he or she will still be paid their monthly wages according to the presumption that they have worked seven hours each day."

(たとえば、従業員とあらかじめ交わした契約が、平日毎日7時間労働であったとします。その人が1日に3時間働こうが10時間働こうが、毎日7時間働いたという推測によって月給が支払われます。)

*記事では、これに続けて例外や協定について触れています。(夜10時から朝5時までは除外、雇用主と労働者(または労組)は適正な労働時間を定めて契約書にサインし地元の労働局に書類を登録または提出する、など。フレックスタイム制についてはこの記事では触れられていませんが、フレックスタイム制は自分の勤務時間帯を決められる制度であって、給与は実労働時間で計算されるため、契約に定められた時間数を超えれば残業代は発生するし、適用が及ぶ職種も裁量労働制よりもかなり広くなります。)


3、ここまでの説明だけでは、どんな職業についている人にも裁量労働制が適用されてしまいそうです。ですので、最後に『適用の対象となる職種』について説明しなければなりません。適用される職種は2種類に分けられます。

(1)"The first is those who have specific specialties in their work, including lawyers, accountants and architects. At present, there are 19 governmentally approved fields that meet this criteria."

(一つ目は、弁護士や会計士、建築家を含む特別な専門性を持った人たちです。現時点では、この基準を満たし政府により承認された分野は19あります。)

(2)"The second category is workers related to corporate management-related planning, research and analysis. To qualify for this category, the work must be carried out according to the employee’s discretion without being directly supervised by their employer."

(二つ目は、会社経営に関わる計画や研究、分析に関連する仕事をしている人たちです。このカテゴリーとして認められるには、雇用主によって直接監督されることなく、仕事はその人たちの裁量によってなされなければなりません。)

*さらに記事は、(1)とは異なり(2)は労働省によって承認された分野の明記がなく、雇用主は該当する労働者から個別に同意を得る必要があると述べています。


以上が「裁量労働制」の定義と簡単な説明になりますが、それでもかなり長いですよね^^;英語で説明する以前に、まずは日本語での理解を要しますが、wikipediaや専門家のウェブサイトで検索されることをおススメします。私が参考にしたのはこちらのサイトです⇒「労働問題弁護士ナビ」


実は、米国にも似たような制度があって、そのような労働者をexempt employee [worker] と言います。直訳すると、「残業代などを免除されている労働者」ですが、国の労働基準法の定めによって、超過勤務手当が支払われない労働者の人たちのことです。米国では管理職などがこの部類に当てはまること多いそうですが、日本の規定とはしくみや適用範囲が違いますので、この"exempt"と言う単語は日本における「裁量労働制」には使っていないのだと思います。イギリスやドイツにも似たような制度があるそうですが、国によってしくみも適用範囲も違うので、「"discretionary labor [work] system"は"exempt employee"と似てるけど、日本の制度は〜だ」、と仕組みや適用範囲の違いを説明できれば理解してもらえるのではないでしょうか?


★参考:第1回「ニュースの見出しを読むコツ」

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