2022/02/22 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
「・・・」愛那は忘れていた俊也の存在がふつふつと沸き上がっていくかのようだった。不器用でナルシストだったけれど、たしかに血の通った男だった。真一は正反対でとかくわかりやすい人で何を考えているのかよくわかる人だった。情にもろくて、人情があってたまにバカっぽかったけれど、真一のサイコパスよりかは遥かによいのかもしれないと今さらながら思えてきた。なんであんな男に惚れたというのだろうか?と愛那はつくづく思えて仕方がなかった。扉をガラーッと開けたときに感じた血が逆流するような衝撃とは、直美のいう単なる気のせいだったのかもしれないと愛那は今さらながら痛感していた。そんな気のせいで大切なものを失うなんて、そして信じていた人が狂っている人だったなんて愛那は悔やんでも悔やみきれない気持ちになっていた。あんなに単純そうにみえて、あそこまで本心を隠せる人も凄いとつくづく思った。
(ある意味で凄い男だわ・・)
愛那は人生で男というのは真一と俊也しか知らなかった。真一は自分の人生というものをある意味で狂わせてくれたようなものだった。昔、島の人が言ってたことを思い出していた。
一緒になる相手で人生がおかしくなってしまうこともあるから、慎重に相手を選びなさいと。今となっては今の自分を暗示していたような気がしてならなかった。そんなことをいう人でさえ、俊也君なら間違えないと太鼓判を押していたくらい彼は島の中でも公認の人だったというのに、それなのに・・今のこの惨めな惨状は立ち直れなくなっていた。
「愛那はどうしたいの!?」直美は心の整理がついていない胸をえぐるようにいった。
「・・わかんないよ、何にもわかんないよ、どうしたいのかそれすらわからないよ・・」愛那は混沌している胸のうちだった。
「もし、今、俊也くんが愛那の現実を知ったら・・どうするんだろう!?」直美は誰にともなく問いかけるようにいった。
「知ったって迷惑なだけだし、どうすることもできないよ」
「そうかな!?迷惑かもしれないけれど、ほっとくとは思わないよ」
「今さらどうしろっていうのよ。からかっているの?」愛那は苛立たしそうにいった。
「そんなことはないよ。でも今さら付き合うことはなくても力にはなってくれると思うよ」
「いやよ・・単なる迷惑よ。それに私が悪いんだから・・」愛那の気持ちは俊也を思うと罪悪感で気持ちがいっぱいになるのだった。
「愛那が事故にあったときのことを覚えている!?」
「その話、やめてよ。忘れていたのに・・」
「愛那が今、こうやって生きているのだって、俊也君のお陰かもよ!!」直美は急にいきりたつように言い放った。
「えっ!?それはどういう意味!?」
「愛那は知らないかもしれないけれど・・・」直美は頭の中でいうべきか否か迷っていることがあるようだった。
「私が知らないこと!?」
「そっ、そっ!」直美はそっけない顔でいった。
「何よ!?そんなことあるの!?」愛那は憮然とした表情(かお)でいった。
「あるよ。愛那が助かったのは、きっと俊也君のおかげだよ!」
「・・・たまたま運が良かっただけよ」愛那は忌まわしい過去をほじくりかえされて、内心、直美に対してもいらだっていた。
「他の人は助からなかったのに・・」直美は思いがけずくいついてきた。
「どういう意味よ!?俊也が何か特別なことでもしたといいたいの!?」
「そうだよ!」

p.s
最近、夢にもとにかくいろんな人が出てきて、朝起きると逆にホッとするのです。外人まで出てきて、ごちゃごちゃいろんな人が出てくるのは、あまりいいものではないですね。いろんな思念が飛び交っているこの頃。