第10部 ブルー・スウェアー 第18章 あの夜の出来事 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
「単細胞でデリカシーなくて、ちょっと思わせぶりな態度を勘違いするし!身の丈に合わないのよ。夢の見過ぎなのよ。勘違いの夢なのよ!自分の器ってどんなものかわかる?」
「・・・おまえこそ、どんな器なんだよ。借金ばかりあって、それを誰が肩代わりしたと思っているんだ?自分では払えなかったくせに!」真一が言い返すと侑美はおじけることも怯むこともなく睨み返した。
「あなたが私の借金を肩代わりしたからって、私が一生あなたに尽くさなくてはいけないの?そんなの、変な話じゃない?私の借金を返したいからくれなんていってないじゃない?あなたが好きでやったことじゃない?」侑美は良心の呵責が本当はありながらそれでも強気でいいかえした。
「何だと?お前にとって俺って何だったの?」
「何って?」
「俺はどんな存在だった?」真一は自分からいいかけて、侑美の口から発せられる言葉が内心、何より怖かった。本当は本心など聞きたくなかった。
「何って?そうね、羽振りのよいお客様といった所かしら?」侑美はわざと嫌なヤツを演じている、本当は好きなのにわざと嫌なヤツを演じていると思いたかった。本心などではないと思いたかった。何か他に理由があって悪ぶっているだけだと思いたかった。自分の知ってる彼女ではなかった。
「・・・」
「あなたは私にたしかにいろいろしてくれたわ。それはあなたが好きでしたことよ。その見返りを求めるの?」
「おまえ・・じゃあ、今日の男はあれはどういう関係なんや?あの男が本命なのか?」真一はまたしても答えなど聞きたくない質問を投げかけたがこれは辛い現実でも避けては通れないことでもあった。
「・・・あの人は、建築士よ。会社の接待であの店に会社の人たちと来た時に知り合ってから連絡先交換したの」
「・・・」真一はこれから辛い現実を受け止めなくてはいけないのかと思うと胸がちぎれそうな思いだった。
「すごい大人しい人で何も語らない人だった。単なる会社の付き合いできたって感じだった」侑美は淡々と事実を語った。
「・・・」真一は今にもおかしくなりそうな高ぶる神経を押さえることに必死だった。
「あなたと一緒よ。いつも大人しくて静かだったのに、会社の付き合いではなくて一人で来るようになった!あっ、いい忘れた。この店ではないの。この店の知り合いの人が辞めて自分で店をもってちょっとそのお手伝いにいった時期があって、そこでの人だったの!」侑美は尚も淡々とした口調で話し続けた。
「・・・」
「なんか少し話しただけで向こうが真剣になったの」
「・・・で!?」
「私もあなたが自分に真剣だってわかっていたから、少し悩んだわ」侑美が少し悩んだという言葉が真一の中ではグサっときて、癪にさわった。少ししか悩める対象ではなかったということが何より腹立たしかった。俺の存在なんてそれでぐらいでしかなかったというのか?今まで自分に見せていたこの女は全部演技だったというのか?実際にはその表の姿勢はだんだんとつれない態度へと変わっていったから、本心が見えてきたのだろうけれど、実際にはあの男を好きになったから、心変わりがあったから自分に冷たくなったというのだろうか?ある人は人間は同時に2人の人を好きになることはできないということを何かで聞いたことがあった。妻など好きという気持ちの圏外みたいなもので、空気みたいなものだった。向こうも女がいるような気配を感じとっていたけれど、全く興味などないような様子だった。そう、興味などないから何も言わないのだ。もし、そうでなかったら、やきもちなどを焼いたり、嫉妬したりしたら喧嘩になったりするだろう。それさえも面倒くさくてどうでもいいといわんばかりの態度で見て見ぬふりをしていたから、喧嘩にさえならなかった。最初は我慢しているのは間違えないし、ストレスを感じているはずではあったけれど、どうでもいいと思われていることはかえってありがたかった。むしろ横暴な態度にストレスを貯めていたのだろう?
真一は同じ屋根の下にいても、妻には愛情のかけらさえなかった。妻の前でもごはんを食べている時でさえ、頭の中は侑美のことでいっぱいだった🥰


p.s
最近、これは私が考察していた内容と同じことだ!ビンゴ!!と思ったことがあった。
のちのち。あとずっと第17章 悪魔の子とばかり書いていて名前を変えるのを怠っていた💦17章が長すぎだからね。