「そうそう、あのコって卒業してからどうしているの?」
「私と一緒で、地元の不動産会社に就職したんですよ!」
「へぇ・・・なんか地味そうだったわね!」
「地味というか、ある意味で優等生なんですわ、彼女は・・」直美は少し嫌味っぽくいいながらワイングラスに注がれていたスパークリングワインを飲んだ。
「でも、そんな何か特筆するような何かがあったようにはみえないけれど・・ホント、なんの印象にも残らないコよね!?」
「そういう優等生じゃないですよ!!まぁ、四角いコなんですよ!」
「四角いコ?」
「ある意味で箱入り娘なんですよ。家族思いで、父親思いなんですよ。家の事をちゃんとやるし、彼氏も堅気の職人なんですよ!!しかも21で婚約してるし・・・」
「あの中学の時からの同級生よね?」
「同級生じゃないんですがね。同じクラスじゃないんですが・・」
「でもすごいよね!?中学のとき、いあなぁってときめく人がいなかったな」
「ホントですよ!同級生の男子なんてときめきより、ムカつきでしたよ!」直美は首を振りながらいった。
「私さぁ、同級生とか同世代の男の子がダメなのよ。生理的に!!一回り以上の年上じゃなきゃダメなのよ。だから淡路島ではぜーんぜん彼氏ができなかった!」あずさは頬杖をつきながらいった。
「・・・そうなんですか?」
「うん。淡路島は私にとって、退屈な場所だった」
「・・・ってことは先輩の彼は年上なんですか?」
「・・・うん」あずさはうなづいた。
「すごい年上なんですか?」直美は核心を突くかのように顔を近づけてきいた。
「・・・彼は・・・45なの」
「よんじゅう・・・ご!?」直美は再び大きめな声をあげた。
「しっ!!直美ちゃん声が大きいよ!」
「一回りどころかふた回りも年上なんですね!!」直美は驚きを隠せないと言わんばかりにいった。
「まぁね。なんか同世代とかタメとか付き合うって考えただけでも、悪寒がするの。私は年上の人の方が落ち着くのよ」あずさはほっとするように微笑んだ。
「でもそんな45才の人とどうやって知り合ったんですか?」直美は何事もなかったように聞いたが、あずさの心の内はけして穏やかなものではなかった。
「まぁ、適当に知り合ったのよ」あずさは急にバツが悪そうになったが直美はキョトンとしていた。
「適当に!?」直美は首を傾げた。
「そうよ」
「ふーん。でも先輩、実際、どーやって暮らしているのですか?」
「まぁ、バイトかなぁ・・」
「そうなんですね。再就職はされないんですか?」
「・・・しないんじゃない?面倒くさいし・・」あずさはなげやりな口調でいった。
「たしかに・・いきていくって大変ですよね?」
「社会人1週間ぐらいでもうそんな弱音を吐くの?」あずさはやれやれといった風にいった。