第10部 ブルー・スウェアー 第5章 魔力 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

馬場忍は幼少期を仙台で過ごしていた。忍は結婚後「馬場」へ変わったがその前は指宿忍だった。自宅は地元でも有名な名家でたくさんの地元の代議士も足しげく通う知る人ぞ、有名な和菓子屋だった。比較的閑静な住宅街の外れにあり、普通の家より大きな家だった。それでも新築の家が新興住宅地とどんどんと立ち並んで行く中で年季の入ったこの家は昔のお屋敷のような家は町内でも異空間の様相を呈していた。近所からも敷居が高そうだと噂されていた。同時にこの家にまつわる噂というのは「忍」の事に他ならなかった。

忍は幼少期から英才教育を受けて育てられてきたが、なかなか学力がふるわず両親を落胆させていた。両親は幼少期から忍にはとりわけ厳しかった。その理由は忍には薄々気がついていた。それは自分と全く似ておらず、同じDNAが入っているとは思えないほどの全くといっていいほど似ていない妹の存在だった。忍にとって妹の雅恵は目障りの何者でもなかった。雅恵は自分とは違ってとても伸び伸びとしていた。うるさい英才教育も受けずに、自由にやりたいように、それでいて尚且つ、親の愛情を深く受けていた。そのことが少なからず、忍の心に深い影となっていた。どうみても妹だけが愛情をうけていて、自分がどんなに考えても愛されている感じがしなかった。

母親は口ぐせのように言っていた。

「あなたはお姉ちゃんなのだからしっかりしなさい!!」

「あなたはゆくゆくこの家の大黒柱になるのだからもっとしっかりしなさい!」母親の節子は長女としてしっかり育てる為だといいながら、厳しく躾けをしてきていた。だから自分に対して厳しいのだと必死に自分に言い聞かせてきていた。全ては自分への愛が故に厳しいのだと、そう思わないとやっていけないような気がしたりしていた。それでも母親は内緒だよなんていって、妹にお菓子を分け与えてくれたりする姿をみると、自分にはそんなことがなかったりするのに何故なのか?いつも隙間からみてはそう思っていた。忍はそんな違和感を感じながらそんな教育環境の中で育ってきていた。

心の軋みと屈折はこの頃から始まっていた。馬場忍は結婚する前までは指宿忍という苗字だった。忍の心の中には幼少期のプリズムのように屈折した心はずっと消えることなくいろごく残っていた。

(なんで私ばっかりいじめられなきゃいけないの?なんで私ばかり、私ばかり)

忍は障子の隙間からいつもそっとみていた光景があった。

母親はいつも着物に身を包んでいた。艶やかな着物に身を包んでいた。そして、贔屓にしている顧客には地元の有力者がよくこのお茶屋を贔屓にしている理由も幼心に忍は何度も目に焼き付けていた。

「いつもご贔屓にありがとうございます!」

「いえいえ、お宅のお茶がとても美味しくてねぇ、女房も喜んでいるよ!」恰幅のよい禿げているいかにも成金そうな男はタバコを吸いながら豪快そうに笑った。

「先生、今後ともよろしくお願い申し上げます」節子は風呂敷に包まれた重箱を差し出した。すると、それまでゲラゲラと笑っていた先生といわれた地元の代議士の顔が真顔に変わって、意味ありげな顔で節子を見上げた。忍は障子のほんの僅かな隙間から人間の顔色がどう変わるのか固唾を飲みながら見つめていた。気さくに笑っていたはずの先生と言われる男の顔が一瞬でもう一つの顔が覗いた。

「いいのかね?」

「はい、今後ともよろしくお願い申し上げます」節子は深々とお辞儀をした。

「あー、いつも悪いね。気を使わせて」代議士は柔和な微笑みを浮かべた。

「こんな事しかできませんから」

「今後ともご贔屓にさせてもらうよ」代議士は上着のポケットからハンカチをとりだすと額にうっすら浮かんでいる汗を拭いた。

「安心してくれ。他の競合店が現れてもそんなに繁盛させたりはしない。なんてたって、この地元の最も優良なお茶は<久留米屋>なんだから!!はっ、はっ、はっ!!」代議士はこれ以上ない豪快な笑いを浮かべた。

あの目の色が色ごく変わる瞬間を忍は幾度となく目に焼き付けてきた。

人の心はモノで釣ることができる、それは忍の人生の原理とも呼ぶべきものはこの幼少期に形成されたものだった。


p.s

真夜中にキャンドル🕯製作💦

なんかよくわからないキャンドルができた。うぇーんヽ(;▽;)失敗?成功?まったくわからない!!なんじゃこりゃー!!