「・・おまえ・・まだ早いだろ。今日、卒業してきたばかりだろう。別に反対はしないが、そんなに焦らなくてもいいだろう?」健三は娘をたしなめるようにいった。
「別に焦ってはいないの。そう思った時は一番なのよ。愛に年齢なんて関係ないわ。お父さんとお母さんだってそうでしょ?」愛那にいきなり母親のことを持ち出されて健三は少し狼狽えた。
「俺らのことはとおの昔の事だ。昔と今は違うだろう」健三は恥ずかしさを紛らわすようにいった。
「でも一緒よ。昔も今も」
「早くに母さんが病気で早くに亡くなって、父さんと2人で二人三脚で暮らしてきた。ようやく1人前になって安心と思いきや、こないだ成人式をあげたばかりなのに、小娘がもう家庭を持つなんていいやがって、全然父親孝行してくれないな」健三はしんみりとした口調でいった。
「やだ!まるで他人になる訳じゃないし、これからお父さんには恩返しをしていきたいって思っているわ。お母さんにもちゃんと報告できるね」愛那はしょげている父親を見兼ねて思わずいった。
「そうですよ。お父さん。他人になる訳ではないんです。家族になるんですよ!」俊也も励ますようにいった。
「・・・」健三はいきなりの報告にだまりこんでしまった。
「お父さん、ごめんなさい。びっくりさせてしまって!」愛那は健三の気持ちを推し量るようにいった。
「いやー、まさかこんなに早く娘が自分の手から離れていくのが早いなんて想像できなかった。あと2〜3年は娘でいてくれるものだと思っていた」
「私はずっとお父さんの娘なのよ!そんな風に言わないでよ。寂しくなってしまうじゃない」
「そうですよ、そんなことを言わないで下さいよ」俊也も笑顔でいった。
「おまえがそれでいいなら認めるしかない」健三は諦めるようにいった。
「・・・お父さん・・・」
「俊也くん、この子がまだ小学3年生の頃、この子の母親が亡くなってから寂しい思いをさせながらも、何の不満も溢さずに親思いの子に育ってくれた。私にとっては自慢の娘だ。そんな娘だから、娘が不幸にするような事だけはしないで欲しい。私が望むのはそれだけだ」健三は言葉を噛みしめるようにいった。
「はい、お父さん。大事なお嬢様であることは重々承知しております!若いからといって、若気の至りだったなんていう後悔をさせたり、悲しませるようなことは断じて僕はしません!!ですので、卒業したばかりの今日という日にこんな風にいうのはとても心苦しいのですが、ずっと僕の心の中で決めていたことでした。そして、彼女も僕の気持ちを受け入れてくれました!なので僕も若かったことを言い訳にして不幸にしたり、泣かせるようなことは絶対にしません!!これだけは絶対に誓います。愛那さんを不幸にしたりしません」俊也は高々と声をあげていった。健三はうつむいて、何か考えているような表情だったけれど、意を決したように顔をあげると、小さく頭を下げた。
![音譜](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/038.gif)
![ひらめき電球](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/089.gif)
![ひらめき電球](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/089.gif)
![アップ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/173.gif)
![アップ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/173.gif)
![ニヤリ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/003.png)
![びっくり](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/014.png)
![ウインク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/004.png)
![ドキドキ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif)
![ドキドキ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif)