悠人はやりきれない想いに囚われていると、携帯が鳴っていた。しばらくして気がつき、慌てて電話に出ると相手は原嶋からだった。
「はい!」
「あぁ、原嶋です」
「どーも・・」悠人は小声でつぶやいた。
「大変なことが起きたんですよ」
「なんですか?」悠人はつれない声でいった。
「連れ去られたんですよ!!あの子が連れ去られたんですよっー!」
「あの子って?」
「あの子ですよ。あ、あお、何とかみずほって子ですよ!」
「えっ?」
「男どもに連れ去られてしまったんだよ」
「嘘だろう?」悠人は思わず立ち上がった。
「目の前で、目の前で連れてかれたんだ!!」
「誰に?」悠人は慌ててきいた。
「おそらく、あいつの連中だ!!一刻を争うから、あの子のいた家に来れるか?」
「じゃあ、住所知らないから教えて!!」悠人は上着のポケットの中から手帳を取り出すと、関口からみずほの前の住所を書き取り、電話を切るとメモした住所をしげしげとみたら、少し胸に失望がわきあがってきた。
「なんで戻ったりしたんだよ。大人しくしていればよかったのに!!」悠人は情けない気持ちに囚われながら涙を手で拭き取ると急いでみずほの家に向かった。
悠人が部屋に向かった時はみずほの部屋に俊が手に手錠のようなものをつけたまま床に座っていた。そこには関口もいた。
悠人は靴のままで畳に上がると壁に括り付けられている俊にドカドカと歩み寄っていて、襟元を押さえた。
「おい、どこにやったんた?あの子はどこに行ったんだ?」悠人の問いかけに俊は黙っていた。
「どこにいったんだ?」悠人は周囲にも聞こえるくらいの大声で叫んだ。
「・・・ふふ・・」俊は不敵な微笑みを浮かべた。
「・・・何がおかしいんだよ。どこにいったって聞いてんだよっ!!」悠人は俊の耳元で大声で叫んだ。
「うるせぇな。あの貧乏娘、今ごろ船に揺られいるじゃねー!あっ、でも死んではいないと思う。誰もいない場所に船に乗せるって言っていたから!」
「一体何者なんだよっ!!」
「・・・俺も知らない・・知ってたらこんな目にあうか?」
「どこに行ったんだよ」悠人はまくし立てると俊は手をだした。
「何だよ?」
「紙だして、ボールペンと」俊がめんどくさそうに言うから悠人はしぶしぶ手帳をとりだした。
「・・・歌舞伎町のバー、trigger。ネットで調べりゃわかるさ。どんな店か?」
「調べて何がわかるんだよ!!」
「そこで働いていたんだ!脱走するまではな」
「何でそこで働いていたんだ?」
「街であの子がふらぁっと歩いていたからね、声をかけたんだ。行き場がない感じだった」
「・・・それで?」
「うちで働いてみないかって声をかけて、この部屋を斡旋したら、最初は半信半疑だったけれど、働くようになった」俊は無愛想にことのあらましを語り始めた。
「どうしてそんな危ない所だったんだ?」
「そんなものだろう?水商売の世界なんて、まとなわけないだろう?」
「売り飛ばすことも普通なわけないだろう?」
「・・知らんがな、俺は。いきなり声をかけられたんだよ」
「誰に?」
「知らない・・」悠人が詳細をさらに尋ねようとすると俊は急に何か怯えたように顔をひきらつした。
「・・いえよ」
「口紅を塗った、化粧をした男にさ」俊が怯えたようにいうと、悠人と関口は思わず顔を見合わせた。
つづく、、、
p.s
次の小説のタイトル、、、突如、降ってきたタイトル「カシス〜愛だけ」にしました‼️
カシスのタイトルの意味をこじつけてかきますと、LOVEは❤️レッドもしくは💖ピンクという意味あいが強いと思うのですが、カシスというともっと強い色という印象がありますっ!!普通のLOVEよりもっと強烈なものという意味あいを込めました