「俺からいってあげようか?君のわからずやの母親に。式をぶち壊すなんてことより、遥かに容易いことだよ」
「あなたに言われて聞き入れる訳がないわ。恋人役でぶち壊してくれた方がまだいいわ」文香はぷいっとそっぽをむいた。
「役者を雇えばいいじゃないか?」悠人はそういって思わず吹き出しそうになっていた。
「他人事(ひとごと)だと思って!!」
みずほは今、一刻も逃げ出したい衝動に駆られたが、動けずにいた。
今もあの店の店員が放った言葉を考えるとこの暮らしやしがらみから抜け出したいと思っていた。みずほは時計をみるともう出勤しなきゃいけない時間になっていた。心は行きたくないなまりのように凍りついていた。ズシンと重たいなまりのような岩石が心にのしかかっていた。
(どうしたら、どうしたら、この真っ暗なトンネルから抜け出せるのだろう)みずほは両手で顔を覆った。気を紛らわす為にスマホの動画をみていた。
「今日未明、知らない男に声をかけられた男の子が行方不明になっています」ニュースから流れてくるアナウンサーの声にみずほの心は再び締め付けられてしまう。言われもない思いがよみがえってきて、心をしめつけた。
窓越しに今にも死にかかっている蒼ざめた表情(かお)でいた少年のことをはっきりと思い出していた。
(あれが、そう、わたしの運命の分岐点だった)みずほはしっかりとした根拠はないけれど、あれから人生が一変したのだとつくづく思った。
あの少年は助けてあげてはいけない人だったとでもいうのか?自問自答してみるものの、わからなかったけれど、人生にそして、家族に対しても絶大な悪影響であったことは根拠がなくても紛れもなく事実であった。
でもあの少年は笑っていた。死にかかっていたのに微笑みを浮かべていた。
ーうちの悠人を助けてくれてありがとうございますー
暢三が、床に頭がつくように深々とお辞儀をした時のことをみずほは朧げに思い出していた。
ーずっと会いたい人がいるんだよね。なんかすごく悪いことをしたようなー
渡された名刺に渡された<蔵田悠人>という名刺。今はボロボロになって、セロハンテープでつぎはぎをして留めているけれど、みずほは今更ながら、あの人だったんだと気がついた。そして、悠人が会いたい人がいるといったことも、本当は自分だったのではないかと突然思えてきた。
(まさか・・・もし、もし、推測が本当なら、それってすごいことじゃないの?)みずほは、ハッとなった。
あの時、あの夜に屋上で出会ったことは運命だったのだろうか?今まで何で気がつかったのだろうか?あのバカ男のお陰で冷静に考える思考がなかったけれど、あの人だった。あの死にかかっていた少年はあの人だったんだと強く思えてきた。見えない所で、見えない糸が繋がっていたんだと思えてきた。それが赤い糸じゃなかったとしても!
p.s
こないだは偽果について書いたことがなんだかディープ!って思いましたが、、人間は葛藤とか否定的な気持ちが強くなると、電子機器に故障という現象が現れるみたいなんです。なので、私は電子機器が壊れるくらい悩んでいるんですよね。全力で考えるんですよね、いつも。長編は特に悩みますからね。
本当、全力で恥も捨てて、人からどう思われるのか捨てて、真剣に考えているんですよね。
極限まで考えています。
愛だけというタイトルは本当に深い意味があります。前にチラッと書きましたが。
あと少し、あと少し、あと少し、、幻(フレア)ゴールが近い。
大変なことも多いけれど、負けずに頑張るよー!
繋ぎ目はいつも、しんどい。