みずほは家の扉を開けて中に入ると居間で買ってきたポテトチップスを開けて食べようとした時、母親の碧名芙美がポテトチップスを食べようとするみずほを牽制した。
「みずほ!!手を洗ってきなさい!あと着替えもしてきなさい。今日は午後からお出掛けするんだから。それが終わってから食べなさい」
「いいじゃん、食べてからでも」みずほはふくれっ面をした。
「いいから、お母さんの言う通りにしなさい」芙美に言われ、みずほはしぶしぶ着替えをするために立ち上がり二階に行こうとした時だった。カーテン越しに太陽の光がいつもに増して射し込んでいた。
「わぁ、綺麗!!」みずほはいつもみたことのない太陽の光に仄かに感動して二階に続く窓ガラスのカーテンを開けた。
二階のカーテンを開けると窓ガラス越しに太陽の光がいっぱいに射し込んできて、あまりの眩しさにみずほは思わず目を顰めた。
「目が悪くなる~!」みずほは顔を両手で覆いながらも光に背を向けて家の天井を見上げた。
目の奥にある太陽の残像をかき消そうとしても黄色く光る残像が消えなくて、みずほは思わず目をパチパチした。しかし、太陽の光はすぐに部屋からきえていき、射し込んでいた光はすぐにきえた。みずほは少しホッとしながらも、カーテンを閉めようとした時、窓ガラスの向かい越しに誰かがこちらを見ているような気がしてみずほはそっと窓ガラス越しに微かに映っている顔を目を凝らして見つめた。分厚いガラスに確かに人間の顔がはっきりと見えた。
(たしか、隣は無人で、幽霊屋敷って言われていたような・・・ま、まさか本物のお、おばけ?)みずほは金縛りにあったような気持ちがしてゾクゾクしてくる。暑い窓ガラスに薄っすらと浮かぶどこかあどけない表情(かお)にみずほは鳥肌が立つのを覚えた。
かたっ、かたっ、窓ガラスがカタカタ音を立てて微かに開いていた。ほんの10センチほど開くとそれ以上窓ガラスは開かなかったけれど、10センチの隙間からまだ小学生か自分とさほど変わらないあどけない男子の表情(かお)が無表情でこちらを見つめている。顔が全てが見えている訳ではない鼻から上が見えている。こちらの視界に入ろうともがくようにこちらをみていた。みずほは恐怖の絶頂になり思わずカーテンを閉めた。みずほはあまりの恐怖で駆け足で台所にいる芙美のもとに駆けつけた。
「お母さん!!お母さん!」
「どうしたのよ?そんなに慌てて!!」
「隣の幽霊屋敷、誰か人が住んでいるの?窓ガラスから人の顔が見えたのよ。こちらを苦しそうにみていたのよ」みずほはさきほどみた恐怖の一部始終を芙美に伝えた。
「何、寝ぼけたこといっているの?お隣さんはとおの昔にお引越ししてもういないのよ。まだ家は売れていないけれど、無人の家じゃない?」芙美は淡々とした口調で言った。
「でも確かに男の子がこちらを窓ガラス越しにみていたんだよ!!じっーと。怖いよ。絶対お化けだよ!!」
「誰かが来ているんじゃないかしら?業者の人間とか・・。でも前の人はあそこに一ヶ月もいられなくてすぐに引き払ったってきいたけれど、お化けでもでるのかしら?あまり隣の部屋をみるんじゃないわよ」
「はーい」みずほは小さくうなづいた。みずほは着替えるために2階に続く階段から再び窓ガラス越しに隣をみたが、そこには誰もいなかった。
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