「その学生証僕のなんで返してもらえませんか?」少年は真広にツカツカ歩み寄ってくる真広の手から学生証を奪い返した。
「ここに落ちていたもんで」真広は引きつり笑いを浮かべた。
「ふんっ!」少年は真広を横目で流したように一瞥をくれるバカにしたような表情(かお)をして、ふてくされた顔でその場を去っていった。
真広は少年がその場を立ち去っていくのを見届けると、真広は思わず周りをキョロキョロ見回した。草むらをさりげなくみた。すると木の棒にチラシを巻き、ゴムで括りつけたものをみつけた。先っぽは黒く燃えているようにみえた。真広は合点がいった。
(あの子、犯人の一人?マツナガリョウスケ?まさかここのマンションの住人?)真広はマンションを見上げた。
真広は買ってきたお惣菜をつれない気持ちで並べていた。今日で誠一の会社がなくなるため、少しでも元気づけようといろいろ買ってきたけれど、今日のあの子をみてから真広のテンションはガタ落ちだった。世間をニュースで騒がせている犯人を自分は知ってしまったのだろうか?それも犯人の名前まで。マツナガリョウスケ 真広はその名前を頭の中で繰り返して思わず頭をふった。
(関係ないわよ。全然関係ないわよ。変なことに巻き込まれる前に引っ越したいわ。)真広の脳裏に<引っ越し>という言葉が否が応でも浮かんできた。
(そうよ!引っ越しすればいいのよ。これで全てが解決するわ!)
ピンポーン。部屋のインターホンがなった。真広はインターホンのカメラで誠一であることを確認すると、部屋のドアを開けた。
「ただいま」誠一は神妙な顔で部屋の中に入った。コートを脱ぐとソファーにボンッと投げかけた。
誠一はペタンとフローリングに座った。誠一が機嫌が悪い理由も真広には痛いほどわかっていた。それでも聞かずにはいられなかった。
「ねぇ・・」真広は恐る恐る誠一の横顔に声をかけた。
「…ん?」
「今日、帰ってくる時、駐輪場に誰か人はいなかった?」
「別に」誠一は膨れるようにそっぽを向いていった。
「そう・・・。お願いがあるのよ」真広は懇願するように言った。
「・・・・・何?」
「唐突で悪いけれど、ここのマンション引っ越さない?」真広の問いかけに誠一はようやく真広の方を振り返った。
「何で?」
「言葉では簡単に説明するのが難しい理由があって、とにかく嫌だし、面倒なことに巻き込まれたくないのよ」
「どうしたんだよ?まだ、ここにきて一年も経ってないだろう?おまえがいくらあるか知らないけれど引っ越し貧乏になるよ!俺にはいくらもないんだから」誠一はぶっきらぼうにいった。
「私のわがままでお願いしているからあなたに迷惑をかけないようにするわよ!だからお願い、引っ越そうよ。あとでゆっくり理由を話すわ。すぐにでも出て行きたいのよ」真広はあせるようにいった。
「なんでだよ。来たばかりだろ。引っ越しも面倒だよ。お金もかかるし。ちゃんと理由を説明してよ」
「いやなのよ。変なのみちゃったのよ」真広はうまく言葉が出てこなくて拗ねるように言った。
「変なのって」
「何の確証もないけれど、今、ニュースで不審火の事件をやっているじゃない?」
「あぁ・・・」誠一は頷いた。
「犯人をみちゃったかもしれないのよ」真広は呟くようにいった。
「向こうもわたしのことをみていて、ひょっとしたら、いや恐らく、このマンションに住んでいるのよ!」真広は胸のうちをずばっといった。
「えっ?」誠一は絶句した。
「別にそんなの好き好んで見たくてみたわけじゃなくて、たまたまみちゃったの。気持ち悪くてさ、変なことに巻き込まれたら嫌なのよ。だから引っ越そう」真広は誠一にせがむようにお願いした。誠一は真広のお願いに正直、困惑気の表情を浮かべた。
「・・・・・わかったよ。近いうちに引っ越そう」誠一は少しめんどくさそうに真広のお願いを承諾した。
「ありがとう。本当にありがとう」真広の顔にどんどん笑顔が広がっていた。
「でも、会社をたたむ手続きがあるし、来月で終わらせるからそれまでいろいろ手続きがあるから、その後でも大丈夫かい?」
「・・・うん。たぶん大丈夫だと思う」真広は微かに頷いた。
真広は誠一が自分の気持ちを受け入れてくれて引っ越しを受け入れてくれたことで安心が心の中に広がった。真広はその日、夢をみた。
p.s
体調が悪すぎでつらいし、いいこと何にもないし、つらかったのですが、ある人に小説
がいいみたいな事を言われて、何にもいいこともない中に元気をもらい空元気で更新しています。でも、もうじき運気が⤴︎予定なので、、信じて生きています(笑)小説を少しだけ褒められたことが唯一よかったことかなぁ。あー、つらい。頭がボッーとするし、咳が止まらない。でも1年に1度、とてつもなく大きな風邪をひくのよね。でも治ったらしばらく風邪引かないの。年1度の厄除けかしら。必ずひくよ。でも熱もないし、鼻水もでないし、ひたすら咳ばかりだけど、どこも痛くない。不思議。でも「悲しみの雨」を少しでも愛してくれている人がいるようなので嬉しいです!