第7部 私の愛まで 第9章 見知らぬ影 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
朱理は奈央子がいない朝を迎え、学校にいく気も失せ、未歩もいない家で一人過ごしていると思いもかけぬ来訪者がやってきた。幼馴染の青木詠太だった。小さい頃よく遊んでいた詠太が朱理の家を尋ねできたのは10年振りだった。朱理は吃驚しながらも突然の幼馴染をだれもいない家に通した。
「なんだかとっても懐かしいね。ごめんね。突然尋ねてきちゃったりして、驚いただろ?」
「うん、少し。今日はどうしたの?」 
「心配していたんだよ!昨日、朱理ちゃん何か顔が腫れていたような気がしたから何かあったのかなぁって?だから学校に来なかったのかなぁって。僕には本当のことを言ってもいいよ」 詠太は少し厚かましくいった。
「別に大丈夫だよ!今日はそれだけなの?」 
「・・・・う、うん…」 
「心配しなくても大丈夫だよ!心配かけてごめんね」 
「大変だね…朱理ちゃんのお母さんは?」 
「…もう一週間も帰って来ないよ!」 
朱理は遠い目をしながら呟いた。 
「えっ!?」詠太は少し驚いたように絶句した。 
「…うちはどうなっているんだろうね?」 
「どうやって暮らしているの?」 
「家にあるものを妹とぼそぼそと食べて生きているのよ!」 
「でも、限界が来るよ!お母さんの連絡先は知らないの?」 
「知っているよ!」 
「連絡したの?」詠太の問いかけに 
「うん」コクリと朱理は頷いた。 
「ちゃんと連絡は取れたの?」 
「うん」 
「朱理ちゃんのお母さんはどうして帰ってこないの?」 
「何だかお母さんには彼氏でもいるのかなぁって感じなんだよね」 
「彼氏…でも連絡くらいはよこすだろう」 
「そのうち帰ってくるんじゃないの?」朱理は呑気に言った。 
「すごく呑気じゃないかよ。どうしてそんなにのんびりでいられるんだよ!」 
「どうしてだろ!?…わかんない!考えてもどうしようもないからじゃない?」 
「まるで他人事(ひとごと)だな」 
「だってどうすることも出来ないじゃない。子供である私や妹はどうすることも出来ないよ!本当の本当のことは私や妹にだってわからないのよ!一体どうなっているのかさっぱりわからない!つらいよ。周りから責められていても当の娘達は本当のことなんか知らない!知らないことばかりなのよ!それなのにいろんなことを言われて、訳わかんないわよ!」朱理は塞ぎ込むように頭を抱え込んだ。詠太はその朱理の姿をみた時自分の祖父から聞いた山崎家の秘密を話していいのか、一瞬迷った。
「朱理ちゃん、頭上げてよ!」詠太の声に朱理はのろのろと頭を上げた。 
「大丈夫だよ!きっと大丈夫だよ!実は昨日、こんなこと、話していいのかわからないけれど、僕のおじいちゃんから聞いたんだ。朱理ちゃんは知らないかもしれないけれど朱理ちゃんの家にはある秘密があるんだって聞いたんだ…」詠太は少し頭を伏せるように聞いた。 
「うちの秘密?」 
「えっ!?何のこと?」朱理は少しキョトンとした。 
「多分、朱理ちゃんやそのお母さんは知らないとかも知れない…」 
朱理は思わず首をひねった。 
「私たち家族が知らなくて他人が知っている秘密なんてものがあるの?」朱理は不可解そうな顔を詠太に向けた。詠太は朱理の顔を見てゆっくりみて頷いた。