千広と恭一は並んで微妙な映画を見た。愛してはいけないと知りつつ愛を育む男女が愛しすぎて破滅していく映画だった。この映画を見ていると自分と恭一は愛しすぎて破滅することはまずなさそうである。千広はこの映画のように心の底から愛し合える愛にどうして23年の人生で一度たりともたどりつくことがないのだろうともどかしく思った。千広は手元の映画のパンフレットに刻まれているもう一人の彼の名前をみる。
(何だか恭一とこの人の映画をみるなんて・・・・不思議・・・・怖いなぁ・・・・)
千広はそっと恭一の横顔をみる。
(気持ちを今日こそしっかり伝えよう)千広は恭一の横顔をしっかり見守っている。
二人は映画館をあとにすると建物の裏にある噴水の近くにあるベンチに腰をかけた。何を話す訳でもなくただ黙りこんでいる。
「天気いいね」重苦しい沈黙を破ったのは恭一だった。
「そうね」取り繕う千広。
「千広ちゃんはいつ東京に出てきたの?」
「・・・・かれこれ4年前」
「進学か何かで」
「うん・・・学校やめちゃったけど」
「何か働いているの?」
「しがない雑誌の読者モデルたまーにやったりして」
「へえ~すごいじゃん。千広ちゃんはかわいいからさ、俺なんかよりもっといい人現れてくれるよ。ちゃんと君のことを好きになってくれる人が」
「・・・・・・・あたし、、、西本くんのことがたまらなく好きなの。どうして好きなのか理由はよくわからないんだけどずっと心の奥では好きだった気がするの。今までも」
「・・・・・・」俯く恭一。
「付き合ってほしいの」言葉を振り絞ると千広は精一杯重たいこの空気に耐えるように両手をひざの上で拳を握りしめた。
「・・・・・・・ごめん。付き合っている彼女がいるんだ。結婚を前提に考えているんだ。君とは付き合えない。君の優しさには感謝してる。ありがとう。君の幸せを祈っているよ」そういうと恭一は立ち上がり千広に優しく微笑み返すと千広からどんどん遠ざかっていく。
(どうして!こんなに好きなのに・・・ただ側にいたいだけなのに・・・こんなにこんなに愛しているのに!!!)
-思い出は思い出のままそっとしておいた方がいいよ。
-西本先輩の家が女優の母親に大企業の重役を父親にもつサラブレット一家だからじゃない?
-自分でも気づいていないかもしれないけど上昇志向が強いのよ。
千広の心の中で亜砂美の言葉が次々浮かんでくる。
「すさんでいるのはあたしなのかもしれない」千広は呟いた。