「ヤオト・・」もう一度カンはもう一度三文字を繰り返した。
「悪い話じゃない。リスクはこっちがカバーしますから。今までだって迷惑をかけたことがないでしょ」
「彼女に頼べばいいでしょ。同胞なんだから。興味は微塵もないよ!」うんざりな勇起。
「お金に糸目がないのは一緒だったではありませんか。急に正気に帰ったのですか?帰国ビジネスに噛み付いてきたのはあなたのほうではなかったですか?おつりがくるほど儲けるだけ儲けて、、あんな女、紙くずのように捨ててしまいな。あんたにずいぶん惚れているようだけど」
「その予定です。冗談じゃない」
惚れたとか腫れたとか愛は迷惑だって思う。ただ一方的に押し付けるものではないって由花を見て痛感する。
「一つだけ真実を教えてあげます。・・・・・警察が動いてます。今回の帰国事業の件で。その時は由花さんを売るつもりです」意味ありげな瞳の奥に限りない自信を漂わせている。それだけ言うとカンは勇起の横を通り過ぎて行った。
一筋の風が勇起の髪を掻き揚げた
「何でそんなに固執するんだよ」やりきれない思いで呟いた。
雲一つない快晴は勇起の重く沈んだ気持ちを救ってくれない。朝礼でも心ここにあらず、重く淀んでいたいた。
「押本くん、今日は横須賀の××マーケティング調査頼むよ」砂徒が期待を込めて言った。
「あ、はいっ」全てにおいて負けるわけにはいかない。どんなことがあっても。その思いが一瞬にして気力を振るい立たせる。
勇起の胸の中に小さな小さな希望が突然うずいた。
つづく、、