彼は奈良県大和郡山市にある私の実家の近くの大きな
皮靴工場会社(オリエンタルシューズ)の課長さんだった。
電話帳の広告で私の商売を見つけ、彼の会社にカーテンを
売ったのが始めての取引だった。店もない車1台で必死に
頑張って商売する私を気にいってくれたのか、お客さんを
沢山紹介してくれた。沖縄から集団就職で来て、会社の寮に
住んでいる若い人たちが結婚すると、彼らの婚礼家具一式を
全部私から買ってくれた。
私にとっては大事な大事なお客さんだった。
「ようこんだけ簡単に注文を取ってくれるなあ」と、
不思議に思うほど注文を取ってくれた。
婚礼の家具は普通は婚約者同士が家具屋へ行って
品定めして買うのが多いのですが、彼は私の家具の
カタログだけで、決めさせてくる。
私の取引していた大阪の家具屋の大将も「カタログだけで、
婚礼家具一式をこんだけ仰山売ったのは
“男前のトクサン”だけや」と言って驚いていた。
彼は世話好きで、話をまとめるのが上手で、人を信用したら、
とことん信用して、親切にする。
彼はその人の仕事よりも、その人をとことん信用した。
「誰でも、一度や二度の間違いはある。
一度信用したら、とことん信用しよう」、
そんな心の広い人だったようであった。
大工さんが造った自分の家が雨漏りがする。
その大工さんさえも信用してまた人に紹介する人だった。
続く
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