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バラの微笑み
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5月5日、気温23度、晴天の青い空・・・
まだ朝の9時前なのに
平日の数倍の人たちが訪れている。
例年は連休明けに訪れる、この港の見える丘公園
今年は1週間ほど早めにやって来たが、
早くもバラは満開状態。
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ここは港の見える丘の旧イギリス公邸跡の
イングリッシュ・ローズガーデン
横浜イングリッシュガーデンは有料だが、
ここの庭園は無料で楽しめる。
東側斜面に咲くバラも壮観を極め、
多くの目線を集めている。
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ウォークマンから流れるボレロを聴きながら、
咲き立てのべっぴんさんを求めて
時間をかけてじっくりとバラと戯れたいと、
想いを巡らしながら構想を練っていた。
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一歩下がったところで前方にカメラを向けていると、
その前を行き来し止まって撮影が始まる。
じっくりどころか何度も視界を遮られ、
意図する画面が見つからない。
よし、今だっと、シャッターを切ったら、
その瞬間には余計な物が映り込んでいたりする。
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悪戦苦闘を避け日陰の椅子に腰を下ろした目の前には
微笑んでくれている一輪のバラ
汚れのない咲き立ての君を求めて
やっと見つけた記憶の微笑み
やや俯き加減に見つめられ
鼓動と温もりの中で夢中で何かを飲み込んでいた
記憶の主はあの時のあなたの微笑みだった
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汚れのない美しい微笑みに逢うと
ついついあなたとの記憶を追ってしまう
数少ないこの世での絆としておぼろげな記憶の時を
暗闇の中で必死でもがいていた
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小さな手に白いカーネーションを渡され
冷たい石の上にそっと置いて無言で両手を合わせていた
この世でいちばん辛かった時
今年の母の日は感謝の気持ちで赤いバラを捧げたい
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バラの香りをお届け
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