YukoBirdの英語な日々。
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学年末の成績評価、始まりました。

私はカナダの某大学でアカデミックアドバイザーをしています。さて、今年も成績査定が始まりました。昨年の9月から今年の4月末までの8ヶ月間分、コンピュータサイエンスから生命科学、数学、統計、物理、化学、環境科学などを網羅するマンモス学部、総学生数は8000人分を約1.5ヶ月間でやり抜きます。私の勤務する理学部では、学年ごと、学科ごとの成績評価に加え、進級基準を達しているかというチェックも行います。学生が適当な年次で卒業していくことを奨励するためもありますが、様々な理由から問題を抱える学生を拾い出し、適切な指導・支援を提供するという側面もあります。

 

大学に勤務している、というと、夏はお休みでいいですね、と言われる事が多いですが、学部に勤務する、少なくともアカデミック系の職員にとって、4月から7月は地獄の忙しさです。それは。。。

 

  • 4月の末に期末試験が終わるが、事情があって受験できなかった学生の再試験・成績記録更新などの対応が山積する。中には正当な理由でない場合も。今年は大体COVIDー19関連のため、一通り目を通すがほぼ承認。
  • 5月末は通常卒業式があるため、余裕を持って卒業予定する学生の成績確認したいが、上記の理由や採点が遅れてしまう。理学部の教授は採点が比較的機会的にできるためかほぼ締め切りを守って提出してくれる。反対に、PHIL1xxといったアーツ系は。。。
  • ほぼ成績が出揃ったところで、学年ごとに全ての学生の進級可否をチェックする。理学部の進級基準はもちろん厳しい。非理系の私ですら1年生の授業を落として2年生の授業は取れないのは自明と思うが、駄々をこねる(理)学生もいる。←時間を取られる。
  • 卒業予定の4年生を除くと、まず該当年一年生から始める。これは当校では一年生を終了後、学科への所属が決まるため(成績順)。
  • その後、3年生→2年生へ作業を進める。
  • 5月下旬:進級基準の理解が進み、進路も定まってくる3年生はまだまし。こんなアカデミックカレンダーと睨めっこして、学科ごとの進級基準に達しているかどうかを評価する。
  • 6月初旬:1年次の成績が悪かったせいで希望の学科に進めなかったものの(最近ではやはりCS系)諦めきれない学生や、不慮の怪我や病気により所定の基準に到達する事ができなかった学生など、2年生の評価は難度超高。しかも人数が一番多く、2年生の作業中は同僚間でのやりとりもかなり殺伐としたものになってくる。
5ー6月というと、バンクーバーでは一番いい季節ですね(遠い目)。流石にカナダ、休日出勤はほとんどありません(メールチェックは普通すぎるので特筆しません)が、この時期は体力・知力を使い果たし、ビーチに行く気力もなく、夕暮れ時に帰宅する毎日。ちなみにこの頃のバンクーバーの夕暮れというと、夜の8−9時です。
 
同じ大学勤務でも、アカデミック系でない職員さんにはこういうジレンマはないと思います(あったら教えて?)。晴れてリサーチに専念できる教授たちもルンルンの夏のキャンパス。
 
6−7月はコース登録です。アカデミックアドバイザーの暑い夏は続きます!
 

 

諦めないということ

私の住むバンクーバーでは、自宅隔離も7週目に入りました。10日に一度くらい、食料の買い出しに行き、ほぼ自炊、規則正しい生活を心がけています。

 

世の中あまり明るいニュースが聞こえてきませんが、自宅隔離生活中に始めたことについてお話したいと思います。ふたつあります。

 

 

一つ目はYouTubeヨガ。

 

 

B-LifeというYouTubeチャンネルで、日本語と英語バージョンがあります。何百という単位の短めのヨガビデオが無料で提供されています。朝ヨガ、寝る前のヨガ、肩首のコリをほぐすヨガ、などの目的別になっていて隙間時間で出来るのが素晴らしい。ちなみに、わざと英語バージョンのヨガをやってみるのも効果的な英語学習法だと思います。

 

カナダに移民後、20年近く複数の先生についてヨガやピラテスを実践してきましたが、Mariko先生は格別、本当にすごいです。元バレエ・ダンサーだっただけあってヨガが舞台芸術作品化していると言っても過言ではありません(True!)。

 

1−3本位のビデオを適当に選んで毎日続けていたら、50を過ぎて硬くなってしまっていた身体が徐々に解れていくのが実感できました。まずは、こんなに硬くなっていたんだ!という実感。そして、あ、なんか曲がるようになってきた。。。錯覚でないことを祈りたい、笑!

お布団の上で、寝ながら出来るヨガもあります。是非お試しを。

 

 

もう一つは遠隔会議通訳コースです。講師は英国ベースのベテラン会議通訳者さん、大半のクラスメートは日本(それも全国津々浦々)、私を含め数人は西海岸在住、その他欧州からも。バンクーバー時間だと授業開始が朝4時で、私にとっては一番キツい時間帯ですが、意を決して朝3時40分起きでライブ参加すると、その臨場感といい、クラスメートとのやりとりといい、楽しくて楽しくて思い切って申し込んで良かった!と心から思えるのです。

 

本コースは前半がノートテーキング(全8回)、後半が同時通訳(全8回)から成り、期間は通しで3ヶ月。EUや国連での通訳需要から開発された高度な通訳技術を、経験豊富な講師が日英通訳者向けに独自に応用させたものを伝授してくださるという、贅沢で実践的な内容になっています。

 

現在ノートテーキングコースの真最中。先生から学びをアウトプットするようお達しが出ているので、授業のことも(どんなことを間違えて、恥ずかしい思いをしたか、とか😄)そのうちお話してみたいと思いますが、今日はコース開始時に事前課題として視聴したTED Talkをシェアします。あなたはギバー(与える人)ですか?それともテーカー(奪う人)?

 

 

YouTuberヨガのMarikoさんにも共通する、ギバー精神。この遠隔会議通訳コースを提供するグリンズ・アカデミー主宰者、グリーン裕美先生のモットーなのです。私もその教えに強く賛同する一人。今、この状況をポジティブに捉え、身体を鍛え、頭を鍛え。来るポスト・コロナ社会で、微力ながらもGive backできるよう、日々準備していきたいと思います。

 

『ステイホーム(家にいよう)週間』、皆さんは何をしますか?

 

 

 

 

 

 

 

プリンセス・クルーズ社長の鳥肌スピーチ:その2

ダイアモンド・プリンセス関連のコロナ感染ニュースの影響で、日本でも一躍有名になったのではないかと思われる、プリンセスクルーズの社長、ジャン・シュワルツさん。彼女はハーバード・ビジネススクール出身の才媛、プリンセス・クルーズグループでの勤続20年というベテランです。

 

創業50周年の同社は、コロナ起因の金融恐慌の波にのまれ、ご多分に漏れず危機に瀕しています。親会社カーニバルラインの株式はコロナ感染の発覚当時50−60ドル代で安定していましたが、現在は一挙に10ドルそこそこまで下が利ました。それでも、同社には豪華客船ツアー、殊にプリンセスを熱烈に愛する顧客層が存在します。今後、コロナ感染患者を受け入れる救急クルーズ船としての活躍も期待されていて、コーポレート・シチズンとしての自覚もアピールも十分です。

 

では、スピーチの冒頭から順を追って解説します。

 

なお、下記、ピンクの部分は私が特にいいと思う言い回しや使用語彙を示しています。

青い部分はその他の解説部分です。

 

(0-0:30)

Fifty-five years ago, Princess Cruises sailed its first voyage. Since that time, we've had the privilege of helping millions of people enjoy unique travel experiences. We've connected cultures and like the rest of the world, we have navigated the highs and lows, the good times and bad that have impacted the countries we visit, the thousands of people we employ, and the businesses and communities we support in every corner of the world

 

100%カメラ目線、自然体でスピーチ開始。端的にプリンセス社の歴史と事業をまとめます。

 

  • Fifty-five years ago, 〜 its first voyageで、爽やかに社歴を披露。この#MeToo時代に処女航海、などと言ってはバッシングの対象になります。
  • privilege とは特典、という意味ですが、ここでの使い方は企業側が顧客に謙った「させていただいている」感を演出しています。もし、単にwe have helpedだと、「してやった」感が滲み出てしまいます。
  • helping millions of people enjoy unique travel experiencesでは、顧客層の厚さを誇示。
  • highs and lows, the good times and badは、結婚の誓いみたいですが、聞き手の想像力を掻き立て、大変な時もあったんだな、と湾曲な『弛みない企業努力が今に至る』アピールです。
  • in every corner of the worldと、自社のグローバルながら、多岐かつ仔細に及ぶ影響力を上品にまとめています。all over the worldというよりも謙虚さが感じられます。

 

(0:30-01:00)

Never in those fifty-five years and certainly not in the twenty years I have served in this company have we been tested in the ways we have been tested over the past 40 days. We have battled this virus on two continents. Always with the mission of doing the right thing taking care of our guests and teams so they get home safely while being as transparent as possible with everyone throughout the entire process. 

  • in the twenty years I have served in this companyと、自身の職歴を披露。数年でさっさと巨額ボーナスをもらって交代する、大企業のCEOではありません。一気に信頼度が上昇します。
  • fifty-five years、twenty years そして40 daysと、数字を使って、聞き手と実感を共有。ビジネスのプレゼンなどでは数字を視覚的に用いることがよくありますが、ここでも、長きに渡る順風万歩の事業の歴史で、困難を極めている現在の状況がいかに稀なものであるか、の強調です。
  • taking care of our guests and teams では、従業員を顧客と同列でtake careする対象と言っています。感染が蔓延した従業員の居住スペースが問題視されたこともありますが、今後の労使関係も意識しての表現でさすがの一言です。
  • transparentとは、近年多用される可視化という意味ですが、これもサービス産業でかつ上場企業としては外せないポイントです。今回のコロナ感染騒動では、ダイアモンド・プリンセス船の感染状況などに関して彼女やその他関係者がタイムリーにビデオメッセージを発信しています。言動一致、は信頼構築の第一歩です。

 

(01:00-01:25)

We've been asked and we've asked ourselves why COVID-19 seems to be impacting princess so heavily we don't really know. What we do know is that we are the world's cruise line and as such our guests, team members, and experiences onboard are a true reflection of the whole world

  • We've been asked and we've asked ourselves(回答を求められ、自らも問うた)のは、なぜプリンセス社にコロナ感染被害が集中したのかという疑問です。明らかに、同社のアジア市場への積極的な展開が招いた事態ですが、武漢にも中国にも一言も触れていません。弁解は全くなく、a true reflection of the whole worldと逆に自らの国際的多様性とグローバルな立ち位置を確認しています。ちなみに、この様にネガティブな要素をポジティブ要素に巧みに言い換える表現を英語でspinする、といいます。詭弁に長けた政治家など、spin doctorと言ったりします。←直接言わない悪口で報道上で耳にすることが多いです。

 

(01:25-01:45)

Every day nearly 50,000 people from over 70 nations and trust us with the most valuable time they have their vacation time. Our team comes from over 100 nations and we visit over three hundred and eighty ports of call around the world. 

  • nearly 50,000 people from over 70 nations =70以上の国家から約5万人
  • Our team comes from over 100 nations=従業員は100か国以上から
  • over three hundred and eighty ports=380以上の寄港地
  • あえてcountriesではなく、nationsを多用しているのも、同社の国際的意識の高さを感じます。台湾や香港など民族意識にセンシティブな地域を意識しているからでしょう。

(01:45-02:35)

The World Health Organization has now officially classified COVID-19 outbreak as a global pandemic with the virus now present in 121 countries and regions so perhaps the diverse mix of people onboard our ships is reflecting what is going on in communities around the world and being magnified by our core values to respect, protect, and connect the world by a rigorous reporting of every medical case onboard to the communities we visit. 

 

  • The World Health Organization has now officially classified COVID-19 outbreak as a global pandemic、WHOなど権威ある機関の正式な見解。大義名分です。pandemicのpanは環太平洋、というときのpanpacificのpanです。pansexualのpanも同じ。全て、という接頭語なので覚えておくと他でもイメージがつかみやすいです。
  • is reflecting what is going on in communities around the world and being magnified by our core values to respect, protect, and connect the world では、ここでも上記と同じくspinしています。さらに、Respect (尊敬)、Protect(地球保全)そして Connect(連帯)と、しっかりと韻を踏んだ同社の企業理念へと繋いでいます。下記、LinkedInサイトからのスクリーンショットですが、ここでも企業理念が紹介されています。計算し尽くされた企業広報。。。スピーチライターの腕の見せ所です。

  • respect, protect, and connect は、地球環境の保全を謳っています。クルーズ船といえば海洋汚染の懸念が頭をよぎります。。。ま、それはおいといて。

(02:35-

Throughout our entire response, every member of our team has repeated on common refrain. It is the foundation of how we've conducted ourselves that the health, safety, and well-being of our guests our teammates and the communities we visit are our number one priority. We have given every ounce of our effort to doing what's right and what's needed since this all began. Our teams have worked day and night to support our efforts and each other and we've found inspiration from leaders like Captain John Smith of Grand Princess and Diamond Princess Captain Gennaro Arma who rallied his crew as his gladiators. Tirelessly working to combat this virus while serving and protecting our entire onboard community, but sometimes even gladiators need to rest. 

  • Throughout our entire responseで、40日間の危機対応を大括り、そしてevery member of our teamでズームインします。ここでも、大小、強弱を混ぜ込んだ構成の巧みさが引き立つ所です。
  • our number one prioritythe health, safety, and well-being of our guests our teammates and the communitiesです。企業利益ではありません。
  • well-beingは、日本語に訳しにくい英語。好きな言葉なのですが、ピタッとハマる適訳がないように思います。国家のwell-beingであれば安寧(あんねい)、でもwell-beingはいろんな主語で使われます。ここでは顧客、従業員、そしてコミュニティのwell-being、カタカナでウェルビーイングで逃げちゃいたい私。健康、はもうhealthって言ってますし、私が英語圏で日常生活していて感じるwell-beingの語感は、健康をさらに包括的にした安定状況をさす印象ですね。良い邦訳があれば教えてください!

 

(03:15-03:30)

In the interest of doing what's right and upholding our core values. I regretfully am announcing a 60-day pause of our princess global ship operations. 

  • いよいよ一大発表です。doing what's right とはこのスピーチで繰り返されるフレーズですが、「ならぬものはならぬものです」という会津藩士、基礎の心得「什の掟」のような有無を言わせぬ感があります。ビジネス上の意思決定と藩士教育では趣が異なりますが、決定に対する質問を避けたい点は同じものがあります。
  • upholding our core valuesも上記の通り。Respect (尊敬)、Protect(地球保全)そして Connect(連帯)という企業理念のおさらいです。
  • I regretfully am announcingは「断腸の思い」と訳したいくらい、思い入れの入った倒置を使って、続く発表内容へ繋ぎます。
  • そして、60日間の休業を発表しますが、ここで使われるpauseが憎い!ここでoperation closureやtrip cancellationを使ってしまったら元も子もないですね。サンドイッチ話法というのがありますが、悪いニュースを伝えるには良い言葉で初めて、間に悪いニュースを挟み、和やかに終える、というあれです。あえてpauseという動詞を使うことで休業という大変重大で深刻なニュースを和らげています。

 

聴けば聴くほど、このスピーチの素晴らしさがじわじわと伝わってきませんか?企業危機管理・広報のお手本とも言えるこのスピーチ、その3に続きます。

 

***

 

スピーチの動画を添付しておきます。再生スピード調整など、その1ブログで説明しています。

 

 

 

続く♪

 

 

 

 

 

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