YukoBirdの英語な日々。 -3ページ目

映画 『フェアウェル』を観て

映画『クレイジー・リッチ!』で主人公レイチェルの学生時代の親友を演じたオークワフィナ(ウィキペディア)が主演する『フェアウェル』を観ました。香港出身の友人が観たがっていて、同じく香港系の夫と3人で観賞。オークワフィナはこの主演でゴールデングローブを受賞しています。

 

監督のルル・ワンは北京上流階級出身の両親を持つ、米国移民。ピアニストとなる夢を学生時代に方向転換し、現在は映画監督として米国の東西海岸を行き来しているようですね。第2作目となる『フェアウェル』は、いわば彼女の自伝的映画で、実際、大叔母が本人役で出演しているんだとか。観賞中は知らなかったトリビアですが、振り返ってみると素人の彼女の「演技」は光っていたと思います!

 

残念ながら、映画全体の感想はイマイチでした。期待していた分、ガッカリが優ってしまったのかもしれません。また、私が日頃から、家族の絆について批判的(否定的、ではなく)に捉えているせいかもしれません。または単純にコメディ・ドラマというジャンルがよくないのか。いづれにせよ、映画の中の家族の絆の描写が典型的すぎて、往年の名映画『ジョイ・ラック・クラブ』での、中国系米国人の心の琴線に触れるような描写が観られなかったのを残念に思います。よく考えると、『ジョイ・ラック・クラブ』も「嘘」というか「あえて語られない」移民家族の複雑である意味不都合な事情が素材になっていましたが。

 

オークワフィナについても、私は『クレイジー・リッチ!』や『オーシャンズ8』での活きいきした彼女の演技の方が好み。もちろん、これは個人的な感想で、私が映画に求める事、にも関連していると思います。今回は役柄もあるのでしょうが、移民家庭出身でニューヨーク育ちの設定を考えると、もっとオークワフィナの良さを引き出した役作りでも良かったのでは。グッゲンハイム・フェローに応募するような、上昇志向のあるアジア系女性移民役ですよ!まあ、彼女は実際にこれでゴールデングローブが取れたし吉、なのでしょうが、私は消化不良です。大体、幼い頃に移民していった孫娘と北京に残るおばあちゃんが、20年以上の時を経て、あの調子で電話でしあう事って現実的なんでしょうか?で、そんな孫娘を死に目に合わせない?細かい事ですが、今時、お手伝いさんが文盲って、本当?しかも彼女、かなり若そうでしたが。。。それから、日本の医師に病状を相談しておいてネットで薬を買うって。。。在日本中国系移民の振る舞いなんでしょうか?在カナダ中国系移民なら、ネット販売の医薬品は信用しないと思います。しかも、抗癌系?日本人のaikoちゃんについては、役柄や描写についてのコメントを控えたいと思いますが、監督の意図は知りたいですね。。。

 

以上、好みでない『パラサイト』を再評価したくなるような、ステレオタイプな中国移民「あるある」満載の米国製アジア映画でした。映画にしろ、本にしろ、博士論文だろうと、自分の実経験を動機付けに作品を膨らませていくのはよくある事ですが、多分、深く吟味する事なくストーリーの展開に応じた「付け足し」をしてしまうと、表面的なつぎはぎが透けて見える作品になってしまうのではないか、と思うのです。ワン監督の次回作は科学系ショートストーリーフィクションとか。期待しています!

 

 

 

英検1級、合格しました!

今日は、英検二次試験の結果発表の日。ドキドキしながら結果発表を待っていましたが、英検1級の二次試験、合格!英語圏のカナダに移住して25年以上だったら取れて当たり前という資格ではなく、さらに海外受験は受験料も国内受験の2倍近く、ロスまでの2度の往復にもコストがかかっていたので、無事合格に心底ホッとしました。

 

 

内訳:一次素点87/100 (バンド+6)、二次素点 37/40 (バンド+3)

 

二次試験の終わった後は反省ばかりでしたが、スピーチは満点取れてました。ん?落ち込んで損した。。。笑。それにしても、渡加当時のどん底の英語力から(本当に!)、英語を使って生活しながら念願の英検1級までの長く険しい道のり。。。どれだけ笑われても、馬鹿にされても、英語の仕事にこだわってきた甲斐がありました。

 

私の場合、英検に特化した試験対策を始めたのは昨年の12月。過去問を5回分、週1ペースでこなしました。こんな『仕上げ』的な試験準備は一般的な参考にならないと思います、ごめんなさい。でも強いて分析すると、こちらの大学で教育学修士号を5年間かけて取得した経験が(仕事と子育てしながらです)そのまま今回の合格に直結したように思います。また、ここ10年ほどは大学で勤務していますが、OJTで身に付けられる語彙とスピーチ力は、英語が母語でないにもかかわらず、複数回の転職で職場を厳選してきたご褒美と言えるでしょう。近年はワーホリで渡航可能な国も増えていますね。英語力(or 現地語)を鍛えたいワーホリメーカーさんは、安易にジャパレスで仕事しないで、と強く訴えたいです。

 

今回の英検受験で参考にさせていただいたブログなどで、1級合格はあくまで英語修行の新たな出発点、という趣旨のメッセージを散見しました。まさにその通り、私も全く同じ意見です。二次試験の個人成績表は未着ですが、一次、二次と共通して、語彙力にやや難ありという自覚があるので、英検1級用に購入した単熟語EXは手元に置いておくつもりです。というのも、5月にある同通コンテストに無謀にも申し込んでしまったのです。衝動的に。。。しかも、今月から新たに引き受けた某国際教育協会のボランティアもあり。。。かなり準備不足になりそうな予感大ですが、トライしてみようと思っています。カナダ在住で、毎日生活イコール勉強という有り難い環境に感謝しつつ。

オスカー受賞映画『パラサイト』を観て感じた、リプレゼンテーション問題。

先日のオスカー授賞式では、松たか子のフローズン2歌唱を見逃し、期待していた『マリッジ・ストーリー』のスカーレット・ヨハンソンは主演女優賞受賞を逃し、『パラサイト』が各賞総ナメ状態のなかジェーン・フォンダの銀髪やトム・ハンクスのお茶目な「照明つけろ」ムーブメントなどを楽しみました。その時はまだ『パラサイト』を観ていなかったので、ポン・ジュノ監督をはじめ、『パラサイト』制作チームの微笑ましい所作を見守っていました。

 

今更ですが、先日機内で観ました。『パラサイト』!

 

韓国映画は『猟奇的な彼女』以来観ていませんでした。K-Popは娘に影響されてラブです。セブンティーンのコンサートにも行ってしまいましたし。BTSのジミンくんから目が離せません。。。

 

でもこの『パラサイト』。オスカー受賞って、本当??単なる趣味の悪い猟奇映画でないの?!もっと社会派的な骨太な映画だと勝手に誤解していました。

 

ここからはネタバレになるかも知れないので、未鑑賞の方は読まないでくださいね。。。

 

一番気になったのは、最近何かと話題になるリプレゼンテーション問題。カナダのトルドー首相も、教師時代のハロウィンパーティでの顔面黒塗り写真が出回り、大騒ぎになりましたね。外面的なリプレゼンテーション問題もあれば、一見、外見では分からない、リプレゼンテーション問題もあります。リプレゼンテーションとは、すでに有るものを再表現すること、とありますが、要するに(他人が)フリをする事は倫理に反する、という事なんですね。

 

『パラサイト』は韓国の貧困と富裕のギャップを描き上げた、ブラックコメディとか言われているようですが、製作者は超エリート、富裕層の方々。。。オスカーでの授賞スピーチがとっても可愛らしかったあの女性、私はてっきり女優さんかと思っていましたが、サムソン創業者の孫娘、イ・ミギョン女史で『パラサイト』のスポンサー様だったんですね。そしてそんな彼女に溺愛されているのがポン・ジュノ監督なのでしょう(って、オスカー授賞式で公言してましたから)。ただ、私は芸術家とそのスポンサーの関係は否定するものではありません。真の芸術家にはお金のことなんか無頓着に、芸術に没頭して欲しいと思っているからです。しかし、私は『パラサイト』を芸術作品と呼ぶ事に抵抗があるのです。

 

そうして見ると、あのオスカーでの授賞式風景こそ、韓国の格差社会の闇を投影した、社会的な強者が弱者の不幸に寄り添うことなく栄光を手にしたリプレゼンテーション問題に抵触する瞬間だったのでは。映画ファンへのメッセージも心がほっこりしていたのに、こうやって背景をわかってみると、韓国の複雑すぎる社会が透けてきます。

 

韓国同様、日本も暗ーく、日本の闇を扱った映画を作っていて、それらはカンヌやサンダンスなどの国際映画祭で評価されています。『パラサイト』もカンヌでパルムドールを受賞しています。また、日本映画もそうですが、暴力表現には閉口します。特に、社会問題を扱う映画は教材になる可能性もあるのに、意味のないヌードや流血シーンはそういったチャンスさえ無駄にしています。今時、テレビのニュースを見ればおどろおどろしい現実のニュースが目白押しなのに。。。これ以上必要ですか?

 

東アジア3強国家の一つである韓国。その社会が抱える闇は(日本同様に)深く、祖国分断、北朝鮮、徴兵制、家父長制度、超学歴、財閥問題などなど。一方で、サムソン、LGなどの家電・通信系はグローバルですし、全世界的に中国人同様、同胞ネットワークが確立しているなど、多くの強みを持った国でもあります。次回はもっと明るい映画を観たいです。

 

映画とは、まず芸術であってほしい、その上で人間の葛藤や社会の闇を曝け出す事で見るものの洞察を導く媒体であってほしいと、私は時代錯誤な夢を抱いているのかもしれませんね。