第85回

全国都市問題会議

文化芸術・スポーツが生み出す

都市の魅力と発展

(1日目午後の部後半)

長野県東御市花岡市長からは「標高差1,500mの地勢を活かしたスポーツ・ツーリズムの創出」というテーマでした。もともと自然豊かなまちで高山植物の宝庫で「花高原」として親しまれていました。ただ、他の観光資源がなく、標高差を活用してワイン特区認定を受け、ワイン醸造を行っていました。

まちの転機は、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まったことです。水泳の高地トレーニングを探していた日本水泳連盟がこの1,750mという標高に目が留まり、興味をもったそうです。車で現地に入ることもでき、東京都心からでも3時間弱で移動ができ、高地トレーニングという特殊性がオリンピック種目でメダルをもたらした大きな要因となったようです。

さらに、水泳から注目された東御市は世界で活躍する選手の育成や土壌を活かしたもともとのウェルネスシティとして高齢者の転倒・介護予防活動やトライアスロン競技のまちとしての発展を試みておられます。

 

次に、Jリーグの鹿島アントラーズFC鈴木秀樹副社長からは、「まちづくりにおけるプロスポーツクラブ有効活用」という内容の話でした。今でこそ全国にバスケットチームなどを含め、プロスポーツクラブは100を超えていますが、1993年のJリーグ発足時は60もなかったそうです。スポーツ文化が醸成していなかった時代に「鹿島」に44,000人収容のサッカー専用屋根付きスタジアムをつくり、自治体・民間企業・アントラーズが一体となり、地域の活性化・地域振興を進めてきました。元ブラジル代表のジーコ選手を招致する一方、地道に行政職員とは出向などの人事交流を行い、アントラーズの使い道を理解した職員が行政に戻ってクラブの思想と潜在能力が知れ渡るようになったそうです。これが行政内で仕事決定プロセスの進化となり、行政側もスピード感をもって仕事が進んでいったとのことでした。鹿嶋市の総合計画には、アントラーズとの関わりが記載されているなど、「他の資源と結びつけながら地域経済の核とする」とまちづくりを進めると明示しています。

また、ふるさと納税型クラウドファンディングを活用して寄付金を集め、人材育成の応援をお願いしたりそうです。1民間企業の支援を目的としたふるさと納税実施は考えにくいものですが、アントラーズが公共性の高い存在となったことで、その「地域資源」に対する存在や30年にわたる地域貢献によって、アントラーズが地域の資源・財産として価値を認められるものとなりました。

ほかには、高度な医療や教育機関が乏しかった地域ではありましたが、アントラーズのヘルスケア事業を行うことでも貢献ができています。さらに地域に出向き、学校でICT教育の指導でプログラミング教育を進めたり、選手の食事面での指導を食育教育に活かし、時には選手が登場する英語教材を提供するなどキャリアデザイン教育にも寄与しているとのことです。

 

Jリーグの試合のたびにアンケートを実施し、その結果から道路の渋滞・交通アクセス・宿泊施設・駐車場の問題などの地域の抱える課題が浮き上がり、自治体にとって移住の促進や交流人口の増加を施策を進める貴重な声も集めている。このようなデータ蓄積したことを分析し、「顧客満足→商品の販売→滞留時間を増やす」など更なる地域貢献に努めている。また、スタジアムをラボ(実験の場)として活用し、試合のない日を含め1年間を通じてスタジアムに来てもらうようなビアガーデンやスタジアムキャンプ、遠足・運動会にも活用してもらっている。

最後に自治体に求めたいこととして、プロスポーツクラブの有効活用であり、まちづくりを推進することであると閉められた。

 

このスポーツに関する2事例における共通点として、スポーツを通じて自治体の認知力を上げ、まちぐるみでスポーツを応援し、雇用を生み出すことで地域の活性化、そして、選手たちとの双方向のコミュニケーションをとることでの「人づくり」が大切である事項であると認識しました。

(2日目へと続く)