第85回

全国都市問題会議

文化芸術・スポーツが生み出す

都市の魅力と発展

 

(2日目)

前日の基調講演や報告などが2日目のパネルディスカッションの前振りとなっていたことで、より大きな学びの深さとなりました。

 

東京大学大学院教授小林真理氏が進行の前に自身の文化芸術を活用したまちづくりへの想いを話していただきました。

1990年代に全国各地で公立文化施設がオープンが相次ぎ、「最後に残るのは文化」という思いがあり、社会が豊かになる期待感をもっていたそうです。

2020年に「文化観光推進法」が制定され、「文化の振興を、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興に再投資される好循環を創出することを目的とするもの」と位置付けられています。

しかし、文化庁が力を入れだしたのは、行政内を文化で横串しを差し、取組みやプロセスであり、達成度をみていないことを指摘しています。よって、予算が取りにくい現状があるとも指摘されていました。

 

最初のパネラーは今川和佳子氏です。「八戸の独自性が生み出してきたもの」として、八戸市の公共施設である「八戸ブックセンター」「八戸まちなか広場マチニワ」「八戸市美術館」などの開館準備に携わる嘱託職員コーディネーターとして30のプレ事業などに関わってこられました。

複合的な施設として、貸館事業・自主事業・会所場づくり事業の3つの事業を行い、八戸という地域を再発見する視点で仕事をしてきました。

 

☆「マチニワ」の内部です

☆「マチニワ」の内部です

 

東北六県で約3200の「無形民俗文化財」があり、日本全国には指定されているもので約9000件、未指定を含めると10万もの芸能や行事が存在されているものと推定されている。生活と文化が密着している土壌があり、その魅力を再発見し向上させていくこともコーディネーターとして求められていました。

「八戸三社大祭」では、本番だけでなく稽古や日常を取材することで、芸能をする人、支える地域の魅力を再発見しました。地域外からのアーテイストや見学者を受け入れをすることで、交流と芸能者ご本人たちが新たな発見をすることができます。若手に注目することで、次世代への継承や芸能そのものの面白さの追求をすることができます。

 

 

また、「酔っ払いに愛を~横丁オンリーユーシアター~」などでは、横丁の中で思いがけずアートに遭遇することもあり、横丁固有の空間の面白さを再発見できたと。一年を通して町の話題の核になるスタッフと町の人のコミュニケーションの潤滑油になることにも努めてこられました。このような誰でも受け入れられる寛容性や相互理解を高めることでコミュニケーションがより活発になっていることを発見しています。

120組を超えるアーティストが来訪され、交流人口の拡大にも寄与されていました。

 

この発表では、まちの面白さを再発見することで、そこに関わる人の発見、人づくりを育成している仕組みのプロセスを知ることができました。

 

 

 

 

 

 

 

2人目は、拓殖大学教授の松橋崇史氏です。

「地域活性化におけるスポーツの役割とその変化」のテーマで、スポーツでまちづくりをしている紹介がありました。地域密着としてJリーグやバスケットボールなどのプロスポーツが地域に根付くことで、市民がそのスポーツに関わる大切さの話もありました。能代町はバスケットボールで、釜石市はラグビーでまちを挙げての黄金期を創り出しました。スポーツの価値は時代により変わることもありますが、スポーツは可視化することができるので、注目されることで選手やチームの全力を引き出すことができます。

一定のルール下での「全力」で「懸命」なプレーを発信するプロスポーツであり、伝達するメディアもいます。失敗や負け、「弱さ」「脆弱さ」も含めて発信されるので、スポーツは人々の共感を得やすいものです。

 

スポーツの役割と持ちうる価値として、身体性・規律性・自発性・遊戯性の「本質的価値」。関連産業の活性化・ツーリズムの推進・人々の健康増進の「経済的価値」。コミュティの醸成・一体感の醸成・ライフスキルの習得、学習の「社会的価値」。

この3つの価値が相互に関わることでまちが元気に活性化されると話をされました。

地域活性化の文脈における役割とは何か、どう活かすのか考えていくことが重要と話しを終えました。

 

 

 

3人目の沼津市の頼重秀一市長は、「スポーツとアニメを活用したにぎわいの創出」のテーマです。ここに来て、「アニメ」が文化として認知されている内容の話の展開になることに少しびっくりしました。

アニメ『ラブライズ!サンシャイン!!』が同市の学校を舞台に描かれた作品で、アニメ放送が始まると全国各地から「聖地巡礼」と称して、ファンが集まるようになったようです。ファンたちは聖地巡礼から周辺各地に広がり、グルメスポットや絶景スポットなどを深堀し、SNSで発信しています。

行政側もしっかりとこの機会を捉え、民間事業者が中心となり、商店街のフラッグ掲出・バス、タクシーのラッピング・特産品とのコラボレーション・パスルラリー開催など、まちを挙げてのおもてなしを実施しています。また、キャラクタースタンプを押して市内の店舗を巡る「沼津まちあるきスタンプ」など、回遊性を高める取り組みを行っているそうです。

行政は、アニメの主人公に観光大使に就任してもらい、観光PR動画の作成・市制100周年記念ポスターの制作などのさまざまコラボレーションを行いました。また、これらの施策がファンの心をわしずかみにし、ポスターを購入するなど定住人口を超える関係人口の確保を努めています。

 

このようにアニメがバズれば、市にとっても大きなビジネスチャンスが生まれることが期待できるものと思います。

スポーツに関しては、他の登壇者と同じくプロスポーツチームの活動拠点があり、選手が地域貢献として、教室を行い、市の防災・健康づくり・環境美化・物産PRなどのイベントに協力してもらっています。

 

最後は、綾部市の山崎善也市長です。「文化芸術・スポーツで紡ぐまち・綾部」として、自身が加入している合唱団の内容も話してくれました。

綾部市では市民一人1文化・1スポーツの推進によるまちづくりを目指しています。

「合唱のまち・綾部」として、市内20団体にある合唱団に指導者を市から派遣し、合唱祭を盛大に実施しています。合唱を通して、「ふるさと教育」を行い、綾部市縁りの市歌・太鼓・踊りを広げようとしています。文化芸術分野において高齢化や後継者難の課題に直面しており、入門から育成・発表・鑑賞を組み合わせた「PDCAサイクルのような事業」を検討しています

また、スポーツ分野においては自然豊かなまちの特性を活かした「トレイルラン」が開催され、地域住民のおもてなしのもと参加者から好評を博したイベントを実施しています。

 

結びに「近き者悦べば 遠き者来る」と孔子の言葉を紹介されました。➀コロナ禍では文化芸術やスポーツの意義に気づくことができ、また文化芸術のもつ潤いや癒しがいかに大切であったのか。②行政の役割として、文化芸術やスポーツの意義を住民に伝え、ソフト・ハード両面の環境の整備に努める。③文化芸術やスポーツをまちづくりに活かすことは、ふるさと教育に貢献し、地域アイデンティティの確立に寄与すること。④文化芸術やスポーツの魅力や価値を最大限活用することは、地方創生の「鍵」となること。

そして、継続的に事業を進めるには、「感動体験をし仲間になる」「コアのコミュニテイづくり」「思いを共有する」「当事者意識の役割・貢献ができる」ことが大切でプロセスに税金を投入する「大義」になる。

 

地元出身の山崎市長がUターンで綾部に戻って思ったことが、「井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る」と自身のふるさとへの想いを語ってくれました。

私も知らなかった「されど空の青さを知る」とはよく言ったもので、井の中で空ばかり見ている蛙は日々変化する空の奥深い青さをしっかりと知っているのだと痛感させられました。

「若者 よそ者 バカ者」。地域分権社会でよく例えに出てくる言葉です。しかし、山崎市長のふるさとへの深い想いをどこまで知ることができるのか、考えさせられる内容となりました。

(終わり)