三月は春のお彼岸を迎えますので、彼岸月とも呼ばれます。
そんな彼岸月に入って、早いものでもう二週間、いよいよ今週末から春のお彼岸となります。
いわゆるお彼岸という時期は、ご存知のように春と秋の二回ありまして、それぞれ春分の日と秋分の日を挟んだ一週間の期間です。
昔からお墓参りシーズンとしても定着していますから、この時期は墓地に行くという方も多いのではないでしょうか。
お墓事情も昨今は一昔前と様変わりしつつありますが、それでも建墓であったり戒名の彫り入れであったりといった仕事について、お彼岸までをメドにと依頼されることは多く、お墓をめぐる大きな節目であるという意識は今でも変わらず根付いているように感じます。
ちなみに春分の日、秋分の日というのは昼と夜の長さが等しくなる日のことであり、天文学的な観測によって決まるため、毎年その日付が変動するという珍しい祝日になっていますね。
内閣府のホームページによりますと、「国立天文台が毎年2月に公表する暦要項により、翌年の春分の日と秋分の日の日にちが確定します」とのことです。
なぜこの日にお墓参りに行く習慣があるのかというと、よくなされる説明があります。
すなわち昼をこの世(此岸)、夜をあの世(彼岸)と見立てまして、その時間が等しくなるというのは此岸と彼岸が最も近付く日なのだ、ということになり、亡くなった方を最も身近に感じられるこの時期にお墓参りに行くのだ、とされます。
農耕民族としましては、そもそも季節を感じ取る上で大事な日付でもあったでしょうし、いろんな文化的な要素が流れ込んで、今に見られるような先祖供養に関わる日となっていったのでしょうね。
なお、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日とされているのは秋分の日で、国民の祝日の意義づけとして春分の日の方は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされています。
これは春という多くの生命が芽吹く季節によるところも大きいと思いますが、いずれにせよ命をめぐる祝日と考えられているわけですね。
さて、暑さ寒さも彼岸まで、などと言われますが、今年は三月に入ると一気に暖かく、それどころか暑いほどになっています。
従来はこの時期というと三寒四温と言われ、天候も不安定で、一雨ごとに少しずつ暖かくなっていくというイメージですが、今年は寒の戻りを感じることもほとんどなく、このまま一気に夏まで駆け込んでしまいそうな雰囲気すらあります。
どうしても地球温暖化といったことが脳裡によぎりますが、そういうことに思いを馳せるのも、「自然をたたえ」るという祝日の意義につながるのかもしれませんね。
そして自然の中で文化と歴史を積み上げてきたご先祖様のことも想像し、お墓参りに行っていただければ、われわれとしましても嬉しいところでございます。