本日2回目の更新です。

 

  夏月都さん&早花まこさん 朗読劇『手紙』

 

今日は東京紀尾井ホールで朗読劇『手紙』を拝見しました。

紀尾井ホールに来るのは初めてのことです。

 


宝塚歌劇団OGである夏月都さん、早花まこさんの朗読劇『手紙』の初演は昨年、2023年2月3日、場所はアルカイックホール・ミニ。

かつてのエフエムあまがさきのスタジオのお隣の劇場です。


私は初演を拝見する予定で楽しみにしていたのですが、父の容態が急変、2月1日に急死してしまい、とてもではありませんが、舞台を拝見する余裕がなく、キャンセルさせていただいたのでした。


その後、小豆島で再演された時も伺うことができず。


今回ようやく拝見することができたのでした。

やれ、うれしや。




朗読劇『手紙』は第一部 椅子、第二部 分際

の二部構成。


第一部の『椅子』は、江戸川乱歩の『人間椅子』をベースにした心理ドラマです。


江戸川乱歩の『人間椅子』は昔一度読んだことがありますが、戦慄したことを覚えています。

怖いというか、おぞましいというか、ヘンタイというか…

多分、今のお若い方でしたら

「きしょっ!」「キモッ!」の一言で撃退しちゃうのではないかしら。

ある職人が書いた手紙が重要な意味を持つ物語ですが、その手紙が彼の独り言のように感じられるし、実際に彼が「人間椅子」になっているさまを想像すると怖気だってしまうくらい、本当に不気味な話です。


しかし、その「キモッ!」の奥底には、人間の業、底知れぬ欲望、願望、陶酔があり、江戸川乱歩はやはり天才なのだなと思わせられる作品です。


名作とはいえ若干古めかしい言葉遣いで書かれている原作を、現代的に平易な言葉に置き換え、さらに日本的な余韻を付け加えた作品となっていました。


出演者である夏月都さんと早花まこさんはお着物で登場。


クリーム色(だったかな?)の小紋をすっきりと着こなしておられました。


舞台中央上手側の椅子に早花さん、下手側の椅子に夏月さんが座られました。

そしてより下手側にはピアノがセッティングされており、橋沼黎さんのピアノ演奏ベートーベンの『運命』の演奏から物語が始まるのでした。


夏月さんと早花さんは宝塚歌劇団の同期生。

息がぴったりあっていますし、さすが舞台人。

声量、滑舌、芝居心、三拍子揃っていて、すっと物語世界に引き込まれてしまいました。

さすが!


第二部「分際」は実在の人物を描いた朗読劇です。

1986年、74歳でこの世を去った伊藤静野さんについて、ご本人の手紙や、彼女の死後に親しかった人が寄せた手紙を紹介することで、静野さんの生きざまを紹介する物語。

彼女は人道的な活動をなしたかたですが、歴史に名を残したり、評価を得たわけではありません。市井のひとにすぎないはずの伊藤静野さんなのに、彼女にまつわる手紙から浮かび上がる人となりの美しいこと。

人間が生きていく上で大切なことは何か、考えさせられました。

「きれいごと」ということばは、否定の意味を表すものだけれど、本当のきれいごとは、裏も表もないから「きれい」としか言いようがないのだと感じました。


個人的には「分際」のなかで、静野さんの旦那様のお父さんの命日が2月1日というくだりにハッとしました。私の父の命日と一緒なので。


夏月さん、早花さんは第二部では清楚なワンピースに衣装替え。

今度は夏月さんが上手がわ、早花さんが下手側の椅子に座られました。


第一部とちがい、第二部は1人で何役もこなさねばなりませんし、怒ったり笑ったりといった極端な感情表現のない、抑えた演技が必要とされていて、容易ではないでしょうに、さすがだなと思いましたよ。



  脚本・演出 仲野好重さん

 

この朗読劇の脚本・演出を担当されたのは仲野好重さん。

前 尼崎市文化振興財団の理事長でいらっしゃり、エフエムあまがさきでパーソナリティを担当させていただいていた時に大変お世話になりました。


私は仲野さんを好重先生とお呼びします。

というのは、好重先生は以前大学で心理学を教えておられましたし、現在も教育に携わっておられます。

そして毎年、春から冬までの半年間、関西で月に一度、歴史上の人物からさまざまなことを学ぶ講座を開講しておられ、私はいつも参加させていただいているので、自然と先生とお呼びするようになりました。


好重先生の講座って本当に面白いのです。

遠い存在だった歴史上の人物や物事が、とても身近に感じられる…


話すことを生業にしている私としては、勉強なることばかり。

日頃尊敬する好重先生が今度は脚本・演出を手がけられたと知った時には、ちょっと「ズルい!」と思いました。天が何物も与えすぎでしょうと思って。


ごまをするわけではありません。

『手紙』は折に触れて再演してほしい演目です。



今回、好重先生の作品ということだからでしょうか、音響や照明スタッフにエフエムあまがさき時代にお世話になったかたが おおぜいおられて、紀尾井ホールではプチ同窓会のようでした。

みなさま、お疲れ様です。久しぶりにお会いできて嬉しかったです。


好重先生、夏月さん、早花さんとのご縁はこちらにも


  ピアノ演奏 橋沼黎さん

 今回、チケットぴあで入手したチケットは2列2番。

思いっきり下手端っこ。

夏月さんや早花さんを斜めから拝見することになり、もう少し後ろの列でもいいからセンター寄りのチケットを取るべきだったか…と後悔しかけましたが、しばらくして、思い切り下手のお席も悪くないと思いました。

というのも、ピアノが下手がわにセッティングされているので、私の席からはピアニストの手元がしっかり見えたから。


私は楽器の中でピアノの音が一番好きなのです。


劇中に演奏された曲の中には

久石譲「人生のメリーゴーランド」、ピアソラの「リベルタンゴ」、リスト「愛の夢」などがあり、手の動きを拝見しながら聞けるなんて特等席だわ、と思い返しました。


アンコール曲は「革命のエチュード」と、「ダニーボーイ」。

私はショパンの中で「革命のエチュード」が一番好きだし、「ダニーボーイ」を聞くと、1983年花組『メイフラワー』のペイさん(髙汐巴)の歌が勝手に脳内再生されるのです。


二重三重に楽しませていただきました。



  お土産

 第二幕のヒロイン 伊藤静野さんのご実家は慶応3年創業の和菓子屋さんで、今も変わらず営業されているのですって。


その岡田長栄堂の和菓子がお客様全員にプレゼントということで、私も頂戴しました。

嬉しい〜


岡田長栄堂さんからのお花。





  余談

 客席のあちこちには、元タカラジェンヌが。


仕事でお世話になったかたや、懐かしすぎる方には失礼ながらお声をかけさせていただきました。


観劇されていたことをここでご紹介して良いか確認させていただかなかったので、実名は伏せておきますね。



最後に。

紀尾井ホールのロビーに飾られていた屏風が素敵でした。



 

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