みのおエフエム 「図書館だより」

私がパーソナリティを担当している

大阪府箕面市のコミュニティFM みのおエフエムの「デイライトタッキー」。

その中の”図書館だより”は箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介するコーナー。

私は司書さんのコメントの代読をし、そのあと自分の感想も付け加えます。

 

本日(10月4日)放送の番組では、サン=テグジュペリさんの『星の王子さま』をご紹介しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  サン=テグジュペリさん『星の王子さま」

「大切なものは、目に見えない」が余りにも有名な『星の王子さま』。

1943年に出版されて以来、世界中で愛されている児童文学です。

日本では1953年に岩波少年文庫から出版されました。

80年もの月日が流れているのに『星の王子さま』は全く古びていません。

おそらく、いつどんな時代にも当てはまる「人生について」書かれているからだと思います。

 

私はこの小説を2度読んだことがあります。

1度目は小学生か中学生の頃。

2度目は2012年、宝塚歌劇団花組で『サン=テグジュペリ 「星の王子さま」になった操縦士(パイロット)』が上演された際に読みました。

2回とも、素敵な話だとは思ったけれど、深い感動などは感じませんでした。

この作品に散りばめられた人生の格言が、当時の私には実感できなかったのだと思います。

 

ところが今回、3度目に読んだら涙してしまいました。

というのも、この作品の中に、先日亡くなった母がいたからです。

 

もちろん、登場人物のモデルが私の母だ、なんてことではありません。

 

王子さまのある言葉が、ある日の母の発言と全く同じだったのです。

 

「ぼくはわかってなかったよ!花のことは、なにを言ったかじゃなくてなにをしてくれたかで判断しなきゃならなかったんだ。(後略)」

(サン=テグジュペリさん『星の王子さま』ポプラ社 P53より引用)

 

10年ほど前のことでしょうか、私はその時、ある人の発言に腹を立てていました。

すると母が「人を判断するときに、その人が言ったことではなくて、何をしてくれたのか、行動を見て判断した方がいい」と言うのです。

「あなた(私)が喜びそうなことを言ってくれなくても、日頃あなたにどんな態度でいてくれているか、それを思い返してみたら?」と。

 

重ねて「発言って、必ずしもその人の本心だとは限らないよ。何かの加減で、その場のノリや相手の売り言葉に反応してしまったりして、思ってもいないことを口にしてしまうことは誰にでもあるでしょ。だから、嫌なことを言われたとしても、心の底から相手が思っていることだと受け止めない方がいい。それより、相手が何をしてくれたか、どんな態度の人か、日頃からどんな行動をしているか、それを見て相手を判断した方がいい」と。

 

星の王子さまは、小さな星から地球に落ちてきました。

王子さまの星には1輪の花が咲いていました。棘がある美しい花というのですから、おそらく薔薇でしょう。この花ときたら、可愛げがないのです。いつも王子様に対して「あれをして、これをして」と指図するばかり。王子さまはこの花をお高くとまっていると感じていました。

そして王子は、他の星々を旅するために、この花をたった一人で小さな星に置いてきてしまったのです。さまざまな星を巡った後、地球に落ち、サン=テグジュペリ(と思われる人物)と出会い色々な話をしているうちに、花を孤独なまま置いてきてしまったことを思い返して、上のように言ったのでした。

 

高慢に見えた花だけど、いい匂いで癒してくれたし、その場を明るくしてくれたな、と。

 

私が腹を立てていた人は、口では憎たらしいことを言うけれど、私のために色々なことをしてくれていたのでした。もちろん、発言も優しくて行動も伴うのが一番いいのですが、そんな仏様のような人はなかなかいません。

 

嫌なことを言うけれど行動が誠実な人と、口では優しいことを言うけれど何もしてくれない、もしくは人を陥れようとする人、どちらがいい人なのかは言うまでもないことです。(中には口も悪い上に行いも悪い人もいるけれど、これはまぁ論外)

 

まさか『星の王子さま』の中に母が隠れていようとは思ってもいなくて、私は思わず涙ぐんでしまいましたよ。

 

これまでの読書では、この部分に感動した覚えがないので、さっと読み飛ばしてしまっていたのでしょう。母が亡くなってまだ10日ほどのこの時期でなければ、3度目の読書でもこの部分にこんなに感動することはなかったと思います。物事は不思議な縁で繋がっているのだなと、この本を選んでくださった図書館司書さんに感謝。

 

ちなみに、これまでの『星の王子さま』では、挿絵は全て原作者のサン=テグジュペリのものを採用していましたが、ポプラ社が出版したこの本では、お笑い芸人カラテカの矢部太郎さんが絵を担当されています。図書館司書さんは、矢部さんの描く『星の王子さま』が気になって「図書館だより」に選んだそうですよ。じゃあ、私が亡き母と作中で再会できたのは矢部太郎さんのおかげということかしら。

矢部さん、ありがとう。とても癒されるほんわかした王子さまですね。

加藤かおりさんの訳がとても読みやすかったことも書き添えておかなくては。

 

最後に、今回私が感動した部分をいくつかご紹介しておきますね。

 

「ならば、自分を裁くがよい。それがいちばん難しい。自分を裁くのは、ほかのひとを裁くのよりはるかに難しい。自分を見事に裁けたら、そなたはまことの賢者じゃ」

(サン=テグジュペリさん『星の王子さま』ポプラ社 P57より引用)

 

「秘密を教えてやるよ。すごくかんたんなことさ。ものごとは心で見なきゃ、ちゃんと見えない。大切なことは、目に見えない」

(サン=テグジュペリさん『星の王子さま』ポプラ社 P118より引用)

 

悲しみはいつだってやわらぐものだからね

(サン=テグジュペリさん『星の王子さま』ポプラ社 P144より引用)

 

これだけにとどまらず、児童書とは思えない深い内容が収められている『星の王子さま』。

10年おきくらいに読み返すべき物語だなと思います。

 

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いつもお送りしている声の書評。

通常は、このブログとは違う切り口で語っているのですが、

今回に限り、ほぼ同じような内容になっています。

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