昭和歌謡あれこれ Vol.36 杉山清貴&オメガトライブ『ガラスのPALM TREE』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。
昭和の歌をお送りする番組です。

今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。

昨日は、杉山清貴&オメガトライブの『ガラスのPARM TREE』に注目しました。

『ガラスのPALM TREE』のリリースは1985年11月。
杉山清貴&オメガトライブにとって7枚目にして最後のシングルです。
デビューが1983年ですので、
私が大学に入学した後でデビューし、
卒業するまでに解散(杉山さんが脱退)してしまったことになります。
短い期間ながら、ヒット曲は多いですね。

杉山清貴&オメガトライブの曲の作詞作曲は全て
康珍化さん、林哲司さんが担当しています。
お二人は同郷(静岡)のご出身なんだそうですね。
杉山清貴&オメガトライブ以外にも楽曲を提供しており、
代表的なものとしては
杏里さん『悲しみがとまらない』(角松敏生 編曲)
菊池桃子さん『もう逢えないかもしれない』などがあります。

では歌詞を見ましょう。
敬称略になることがあるかもしれませんが、
ご容赦ください。

ガラスのPALM TREE  (作詞:康珍化 作曲:林哲司)

ためらいを切り裂いて
空に伸びてくヘッドライト
あの時と同じだね
アクセルを踏み込めば
夜霧の彼方 道はわかれる
ふたつの愛をためすようにね
Never Say Good-bye, Never Again
青い海の底を 泳ぐように車は走る
初めからあなたを 泣かせるつもりで
呼び出した ドラマティック・ナイト


夜のドライブ、ヘッドライトが空に伸びていくというのだから、
坂道を登っているのでしょうか。
運転しているのはどうやら語り手である男性のよう。
アクセルを踏み込んでおります。
すると夜霧の向こうに道が分かれているのが見えてきます。
この分岐を「ふたつの愛をためすようにね」と言う彼。
その前には「あの時と同じだね」なんてことも言っています。
なんだかチクチク遠回しに言っている感じ。
あら「初めからあなたを 泣かせるつもり」だったと
暴露しましたわよ。
ドラマティック・ナイトって、どんなドラマなの、
女性にとって苦しい展開になりそうな予感。

実はこの曲はどうやら、
デビュー曲『SUMMER SUSPICION』の続きのようです。

歌詞全文についてはこちらをご覧ください。

杉山清貴&オメガトライブ『SUMMER SUSPICION』歌詞
かいつまんで説明すると、
サスピションとは疑いという意味らしいですね。
彼女が運転する車に乗り込んでみたら、
僕があげた銀の指輪をはめていない、
誰か別の男性の影を感じる、というもの。
どうやらその勘は当たっていて、
彼女は泣きながら運転しております。

『SUMMER SUSPICION』の中で、
何度も繰り返される歌詞は
「僕と誰を くらべてるの
 つのるジェラシーに灼かれて」
彼女が急にドライブに誘ったのは、
別れを言い出すためかもしれない、と
彼は薄々感じながら、
彼女にちゃんと確かめることもできず、
これは夏の悪戯なんだと無理に思い込もうとする……
というのが
『SUMMER SUSPICION』なのでした。

「あの時」とは逆転し、
今度は自分の方から呼び出して、
泣くまで攻めてやる、と気合満々の彼なのでした。

それを踏まえての二番。


思い出は一度だけ
その胸に預けたね
白いサンゴの枝のよう
壊れやすい女(ひと)だった
ガラスのパームツリー
リアウインドに
真冬の月あかりを集めて

Never Say Good-bye, Never Again
もしあなたこのまま 帰したら 愛は流星
その日から僕には 夜は来ないだろう
果てしない ドラマティック・ナイト

Oh Girl あなたの 心のさざ波が
Oh Girl 忘れた夕陽を 連れてくる
Never Say Good-bye, Never Again
見つめ合う瞳に せつなさを取り返すまで
Never Say Good-bye, Never Again
月が銀の弓を 引きしぼる
ドラマティック・ナイト


女性をサンゴに例える男性に初めて会いましたわ。
それって嬉しいですか?
それとも皮肉なの?
なぜかここだけ過去形ですし、
この辺りの歌詞は微妙ですね。
ちなみに耳で聞くと
「白いサンゴ」ではなく「白サンゴ」と
歌っているように聞こえます。

そしてタイトルでもあるガラスのパームツリー登場!
パームツリーとはヤシの木の子でしょう?
ガラス製のヤシの木、
もしかしたら二人が盛り上がっていた頃に旅行した先で
買ったお土産物かな?

今はハッチバックの乗用車が多いですが、
当時の車は車の後ろにトランクがあり、
後部座席の後ろはちょっと物が置けるくらいの
空間がありましたね。
そこにガラス製のヤシの木が置いてあって、
リアウインドにさす月あかりを集めて煌めいている……
きっとそれを買った頃の二人もきらめていたんでしょうね。
しかし、そんな飾り物を車に置いているの、
私にはちょっとカッコ悪く感じるナ。
(個人的な好みです)


真冬の歌なのに夏を思わせる言葉も多く、
『SUMMER SUSPICION』を連想させます。
でもあの時の僕とは違う、と思っている彼。
絶対にサヨナラは言わない、
もしこのまま君を帰してしまったら、
愛は流れ星のように消えていくから。

そうなった時に、普通の人なら、
彼女を失ったら光がなくなると言うでしょうに、
この男性は「二度と夜が来なくなる」と言っています。
不思議だ。

私なんかはこの流れを見るに
「もう諦めた方が良いんじゃないですか?」と
助言したくなりますが、彼は諦めておりません。
見つめあう瞳に せつなさを取り戻してみせると思っている。

あー、切なさねぇ。
古今東西、恋に落ちた男女が感じる
「胸がキュンとする」感覚。
これが切なさ、です。
しかし、想いが相手に届き、
恋愛期間が長くなると、
愛は深まるかもしれないけど、
切なさを感じることは少なくなりませんか?
もっと穏やかな何かが育っているはず。
つまり切なさは、恋愛初期にのみ味わえるものではないかと。

ましてや、夏に別の男性と浮気(?)してしまった彼女と
このまま付き合い続けられるものかも疑問なのに、
もう一度切なさを取り戻すなんて難しいと思うけどなぁ。
でも、そういう状況になるまで
彼女を帰さないぞと思っている彼。
今だったらちょっとした犯罪と認定されそうな状況ではありますが、
美しいメロディー、
主旋律にかぶさる弦楽器やキーボードの音のステキさ、
(素人の表現しかできずお恥ずかしい)
月(三日月でしょう)が弓を引きしぼる、
といった文学的な表現、
何より杉山清貴さんの声が素晴らしくて、
私はオメガトライブの歌の中でこの曲が一番好きです。

昨日はちょうど美しい三日月が出ていて、
まさに「月が銀の弓を引きしぼる」かのようで、
この曲をかけるにふさわしい夜だったなぁ。

しかし、この歌がリリースされた時には
杉山清貴さんの脱退は決まっていたそうで、
歌番組でも杉山さんは、やる気なさげに歌っていたらしいです。
それが逆にクールに感じられて、良かったのかもしれません。

それでは聞いてみましょう。
YouTubeからお借りします。
アップ主様、ありがとうございます。



ところで、カッコいい車でドライブする時に聞きたいこの歌、
なぜか車やタイヤのCMではなく、
ダイドーコーヒーのCMに起用されていました。
Why!!

『SUMMER SUSPICION』から順番にお聞きになりたい方は、
こちらを先にお聞きくださいね。



昭和歌謡のちょっと妙な世界観を深堀りした内容のブログは
「昭和あれこれ」というテーマにして投稿しています。
これまでの深掘りはこちらで読んでいただけます。
ずらりと表示されるタイトルから、
読みたいと思っていただける部分をクリックしてくださいね。

茶々吉24時 テーマ別記事一覧「昭和あれこれ」



ブログランキングに挑戦しています。

もし記事を気に入っていただけたなら、

ポチッとクリックよろしくお願いします。


   ↓



人気ブログランキング