経営の基本はいかにして自社が提供する商品をお客様に買っていただくかを考えて工夫し、そして実践することです。そもそも、売り上げが実現できなくては経営もへったくれもないのです。

 

 売上高を要素に分解すれば、「単価」×「数」です。売上高を増加させたければ、「単価」を上げるか、「数」を増やすか、はたまたその両方を実現するかしかありません。しかし、これがなかなか難しい。簡単にできるようであれば、誰だって社長になれるし、大金持ちだって夢じゃなくなりますよね。

 

 今回は、どのようにして売上高を上げるのか...という話ではなく、もっともっと根っこの話で、「お客様に買っていただく」、「お客様が買う」をネタにお話ししてみようと思います。

 

 読者の皆様も、「買う」という行為を何気なく行っていると思います。喉が渇けば冷たく冷えたペットボトル飲料とか、お腹が減ったらお弁当とかを買いますよね。

 

 人が買い物をする場合、必ず揃っていなければならない要素が三つあると言われます。この三つの要素が揃っていなければ、人は買い物をしません(買い物ができません)。反対に、人にこの三つの要素を与えてあげれば、その人はお客様になってくれて、商品やサービスを買っ貰えるのです。

 

 

 まずは、「目的」です。人は必ず目的を持って買い物をします。喉が渇く、お腹が減るなどの欲求を満たすことも「目的」となります。

 

 次に「資金」です。お金が無いことには買い物などできませんよね。この要素は他にも“高い”“安い”、さらには“分割”とか“カード使用”とかの要素も絡んできます。

 

 そして最後の要素が「情報」です。お腹が減っていて、そしてポケットには千円札があっても、どこにコンビニがあるかの情報がなければお弁当を買うことはできませんね。

 

 お客様に自社の商品やサービスを買っていただくためには、①「目的」②「資金」③「情報」をしっかり揃えてあげることが必要なのです。

 

 では反対に、お客様が商品やサービスを買わない場合を考えて見ましょう。人は、次の四つの要素(または壁)が存在した場合、お買い物はしません。この要素は四つのうち一つでも存在すれば、それでアウト!

 

  1. 「本当に大丈夫?」「何だか高くない?」...不信の壁

  2. 「私には似合わないわ」「お宅じゃなくてもいいのよ」...不適の壁

  3. 「そんなの要らないよ」「使う当てもないから」...不要の壁

  4. 「今すぐじゃなくてもいいよ」「検討しておくよ」...不急の壁

     

     この四つの要素(または壁)をお客様から取り除く努力をしない限り、お客様はあなたが提供する商品やサービスを買ってはくれません。

     

     お客様が、あなたのお店の前を素通りしてしまっているような場合や、あなたからの提案をなかなか受け入れてくれないような場合、ここに書いた、「買い物をする三つの要素」をお客様に与えているか?そして、「買い物を阻害する四つの要素」を取り除く努力をしているかを、もう一度しっかりと考えて見てください。

     

     では、考えたかのヒントをひとつ。
     

     それぞれの要素をクロスして考えて見ることも方法の一つです。たとえば、買う要素の中の「情報」をお客様にしっかりと与えることによって、買わない要素の「不信」や「不適」を取り除けたりもします。

     しっかりとした「目的」を与えることによって、「不要」や「不急」を取り除くことができたりするかもしれませんね。

 案外、「あっ!」と思いつくような簡単なヒントが隠れているかもしれませんよ。

 

 将来的に、わが国の人口減少がクローズアップされていますが、それに関連して2015年5月に空家等対策特別措置法が施行されてから、「空き家問題」という言葉を耳にする機会が多くなっています。

 

 また、空き家の中でも特に問題として私が挙げたいのは「特定空家」というものです。

空家等対策特別措置法では、『特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう』とされています。

 

 このような問題を解決するための一つのアイデアとして思いついたのが国際会計基準や国内の大会社などで、会計処理として認識され使われている「資産除去債務」という考え方の採用です。

 

 工場建物や機械などの固定資産を新たに取得する場合、将来発生するであろう資産除去のための費用を、予めその対象資産取得時に見積もり、債務として計上して置くというものです。人の人生設計で日常の生活費だけでなく、最後の葬儀費用まで見積もって計画してキャッシュフローを考えるようなイメージです。

 

 あくまでも私の思い付きなのですが、たとえば、「特定空家対策」として、持ち家を新築等した場合、将来必要となる解体のための費用を見積り、その必要額を分割し毎年固定資産税に上乗せする形で市役所に収めて置くというアイデアはどうでしょうか。

 もし、途中で誰かに売却したり、自分で取り壊したりした場合には、積立金額が還付されるルールです。

 まあ、様々なご意見はあるとは思いますが、今後このくらいは建物を所有する者の責務として負ってもらうことも必要なのではないでしょうか。

 

 ここで「資産除去債務」の会計処理をご紹介します。とても合理的な考え方ですので、頭の片隅にでも置いておかれるとよいと思います。

 

 では、事業用定期借地契約のケースで考えて見ましょう。

 以下のような設定を想定してみます。

 誰かから土地を定期借地契約で賃借し、その上に建物を5000万円で取得し、30年後には全てを取り壊して土地を返還する契約です。その際の建物除去費用は1000万円だとします。ただし、建物除去費用は今使うお金ではなく、30年後に必要となるお金です。定期預金などで30年後に1000万円になる預金元本は幾ら(30年後の1000万円の「現在価値」)?という問題を解かなくてはなりません。しかし、情報が一つ足りません。それまでの預金金利はどのくらいで評価?

 

 ここで、想定するのが割引率というものです。簡単に言えば30年間の予測金利みたいなものです。ここでは3.0%と想定しておきます。30年間の3.0%の金利で預けた場合1000万円にするための元本は4,119,868円となります(下図参照)。

 会計処理は以下のようになります。

 

 

 30年後の費用の見積もりという点では不確実な部分は多いのですが、会計処理上30年で確実に債務の積立ができる仕組みとなっていることには合理性を感じます。(※資産除去債務に係る費用は税法上損金の取り扱いはできません。)

 

 相続税法が改正されて以来、相続税の節税目的でのアパマンブームが目立つようになってきました。街を歩いていても新築アパートが増えてきているように見えます。人口減少社会で空き家が問題視される中、賃貸住宅が異常な増加を見せるおかしな状況が進行しています。

 「家賃保証」を武器に、賃貸アパートのサブリースシステムを売込むアパート管理業者の営業が上手いのか、土地オーナーの経済リテラシーが足らないのか、理由は何にせよ経済学の原理原則を無視したかのようなアパートが乱立しているかのように見えます。

 そのような近視眼的思考の土地オーナーにこそ、将来的な空きアパートの放置を防ぐためにも、地方自治体による「資産除去債務」を意識した解体費用の強制的な積立徴収が必要なのではないでしょうか。彼らは、単に名目の収入金額から通常のランニングコストを差し引くだけの初歩的な会計でアパート経営を考えているわけですからね。

 

 今回は、資産を取得したと同時に発生する資産所有者の責任というものに対し、会計がどう対処しているのかの話をいたしました。空き家問題を耳にするにつけ、「資産除去債務」という会計処理が思い出されるのです。

 

 

 売上は増えるに越したことはありませんが、時には減少する場合だってあります。


 売上高減少の原因は大きく分けて2種類ありまして、一つは販売数量の減少です。そしてもう一つは販売価格の減少です。値引きなども販売価格の減少になるのですが、この値引きという行為が会計に及ぼす怖い影響について詳しく知ってないと大変な結果になってしまうことをご存知でしょうか。

 

 では、簡単なシミュレーションを以下で行ってみましょう。


 ここに1本の仕入単価が60円で、販売価格が1本100円のミネラルウォーターがあるとします。

このミネラルウォーターを販売するためにかかる固定費は300円だとした場合、2種類の売上減少の原因別の利益金額の違いを見てみることにしましょう。

 

売上減少率は10%だとします。
 

◎通常のケース


 ミネラルウォーター10本を正価で販売したケース
☞1000円(売上高)-600円(仕入高)-300円(固定費)=100円(利益)


では、シミュレーション開始です。
【ケース①:10%の販売数量の減少の場合】
販売数量が10本から9本になったとしましょう。この場合の利益額を計算すると以下のようになります。
☞900円(売上高)-540円(仕入高)-300円(固定費)=60円(利益)


【ケース②:10%分値引き販売した場合】
 今度は、同じく10%の売上高の減少のケースですが、販売時点で10%の値引きをした場合です。バーゲンセールなどがこれに当たります。この場合の利益額を計算してみると以下のようになってしまいます。
☞900円(売上高)-600円(仕入高)-300円(固定費)=0円(利益)

 いかがですか。同じ売上の減少なのですが、結果の利益金額が大きく違います。
 
 冷静になって考えて見れば、誰だってこの違いはわかりますよね。でも、実際に経営の現場に立つとこの2種類の違いがわからなくなるみたいなのです。
 知っていただきたいのは、値引き販売の怖さです。


 
 巷ではそろそろ年末商戦が始まろうとするころあいでしょうか。年末バーゲンセールもよ~く考えて行って下さい。下手をすると赤字転落になってしまうかもしれませんよ。