上の表に並べた10個の数字ですが、いくつ説明することができるでしょうか?全て知っているよ!という人はすごいです。

 

 

 

では、順番に簡単にざっくりと解説していきます。詳しいことはネットなどでお調べください。

 

❶ 800万円.....これは、3つの意味あります。

①    全額が損金となる「セーフティ共済」の掛金限度額です。

②    中小法人の接待費の上限です。これ以上は損金とはなりません。

③    中小法人の法人税率が15%となる所得の上限金額です。所得が800万円超では23.2%となってしまいます。
 

❷ 約30%.....これも、3つの意味あります。

①    法人の「実効税率」。税金額の目安を見積もるときなどに使う数字です。

②    自己資本比率の取り敢えずの目標数字です。

③    年商に対する借入金割合の目安となります。

 

❸ 1000万円.....これも3つの意味があります。

①    消費税の課税事業者・免税事業者を区分する売上高の境界線です。

②    資本金1000万円未満の法人は、ケースによっては設立後概ね2年間は消費税の納税義務が生じません。

③    法人の資本金額が1000万円を超えると地方自治体への均等割り額が引き上がります。

 

❹ 5000万円

①    売上高が5000万円以下だと、消費税の「簡易課税制度」が使えます。

 

❺ 15%

①    会社が負担しなければならない「社会保険料」の負担率です。
例えば社員の年間給料が300万円だとしたら、300万円×15%=45万円の社会保険料を会社負担しなければいけません。

 

❻ 2年....消費税法に係る重要な年数です。

①    課税事業者か免税事業者かを決定する売上高は2年前のそれが対象です。

②    摘要制度(簡易⇔原則)を変更した場合、最低2年間は元に戻せません。

③    組織変更した場合(個人⇔法人)や新設法人では、場合によっては最長2年間は免税事業者となることができます。

 

❼ 23%.......不自然な上昇率?

 所得税率で、所得695万円超、900万円以下のラインがそれ以下、又はそれ以上の所得ラインと比べると税率の上昇率が緩和(10%上昇がここだけ3%となっている)されています。

 会社経営者の役員報酬を決定する際の目安(コスパ最高)となる数字です。

 

❽ 290万円.....個人事業者の重要な数字

①    個人事業税の「事業主控除」の金額です。営んでいる業種にもよりますが、この控除額を超える所得には3%~5%の個人事業税がかかります。

 

❾ 月額7万円......経営者の老後資金

①    個人事業主や会社の役員が加入できる「小規模企業共済」の月掛金の限度額です。掛金全額が所得控除となり、節税しながら老後資金を貯蓄できます。また、iDeCoと組み合わせることにより、月額で9.3万円まで節税しながら貯蓄可能となります。

 

❿ 3倍.....社長が持つ最強の出口戦略

①    社長の「功績倍率」です。役員の退職金額の計算方法に「平均功績倍率法」というものがあります。計算式は、「退職慰労金=最終の役員報酬月額×役員勤務年数×功績倍率」で、社長の場合功績倍率=3倍が使えるという事です。
昭和55年の東京地裁の判決で『社長3・0、専務2・4、常務2・2、平取締役1・8、監査役1・6』とあるのが根拠のようです。

 

 いかがですか?いくつご存じでしたでしょうか。知っていることが、いかに大切かという事です。

 突然ですが、下の図表をご存じでしょうか。

 

 損益分岐点図表と言います。

 損失と利益の分かれ目となる売上高を示す図表で、ある期間の損益分岐点が仮に500万円という場合、売上高がそれを上回れば利益が出るが、もし下回ったとしたら損失が生じるということを表しているのです。

 

 しかし、この図表には一つの大前提がありまして、それは『販売単価が一定であること』というものです。もし、この前提が崩れたとしたら、たとえ売上高が損益分岐点を上回ったとしても、利益が出ないことだってありますよ、というのが今回のお話です。

 

 コロナ禍ということで、なかなか売り上げが伸びない中、社長からこのような激が飛びました。

『弊社の月当たりの損益分岐点売上高は500万円である。みんなで何とかしてこの目標を達成してほしい!』

 

 そこで、社員Aは考えました。「現在販売している商品の価格は1個5万円である。それを20%引きの4万円で提供すれば、きっとよりたくさんのお客さんが買ってくれるはずだ。今、目標売上高500万円であれば、100個の売上が必要となるが、仮に値下して、もし150個(50%増)売れれば、売上高は600万円となり、きっと社長は喜んでくれるはず。」

 

 これって、「危険な値引き」と言われる行為です。

 

 検証してみましょう。ただし、この商品の原価は3万円だったと想定して説明します。

 

 社員Aの考える通り、この商品を値下げしたことが好感され、お客さんが月に150人買ってくれたとします。さて、この場合どのような結果となるでしょうか。

 

 目標とする月額売上高は500万円以上であり、この場合粗利は200万円以上となる計算です。社員Aの戦略では、月額売上高は600万円と目標値を超えるのですが、粗利は150万円と反対に下がってしまいます。

 このケースでは、目標個数の2倍である200個、それ以上を売らなくては必要とする粗利を稼げないという事になります。思い付きだけの20%の値下げで、実際には100%を超える販売数の増加が必要となるケースなのです。

 

 ここで重要なのは、会社経営に必要なのは、単に売上高ではなく粗利であることを忘れてはならないという事です。

 

しかし、「売上高重視」で目標売上高○○円とだけ設定する計画が多いというもの事実です。そして、「売上至上主義」よろしく、社員に単に売上高を上げろとだけ指示を出す。このような誤った指示が、ともすると社員に誤った行動を起こさせる原因になってしまうかも知れません。

 

 企業経営の格言にこのようなものがありますのでご紹介差し上げます。

 単に売上高から議論をスタートしてしまうと、勢いおかしな方向に向かってしまうこともあり得るということです。売上高よりも『商品1個の儲けの積み重ね』の方が大事であるという事なのです。

 

 コロナ禍で、売上高の減少に頭を痛めている事業者さんも多いことだろうと思います。売上高の回復を狙うことも大切なのだと思いますが、もう一歩踏み込んで、商品一つ一つの粗利、その粗利の積み重ねというものにも細心の注意を払っていただいて、この危機を乗り越えてもらいたいと、真に思っております。

 

 

 昼休みに、牛丼チェーン店で牛丼を食べ、その後、コーヒーチェーン店でコーヒーを飲む。そして、午後からの仕事に精を出す。これって当たり前のことのように捉えられるかもしれませんが、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

 牛丼とコーヒー、価格がほぼ同じなんです。不思議に思ったことはありませんか。今回は、日米で全く違う進化を遂げた「値決め」についてのお話です。

 

 日本の牛丼と、アメリカのコーヒーとではなぜ値段が同じになるのでしょうか。コストから考えてみれば、やはり日本の牛丼の方がコストはそれなりにかかっていると思います。一体、何が違うというのでしょうか?

 

 それは、「値決めの数式」が日米で違うのです。

その数式とは......

 我が国は、戦後の高度経済成長期に高成長を背景に一つの経済思想の元、一心不乱に商売をしてきたのです。その経済思想とは「より良いものを、より安く」です。経済が人口の増加を背景にすくすくと成長した時代の値決めの法則をいまだに守っているのです。それが「コスト+利益=売価」です。

 

 掛かったコストを基本に売価を決めるという風習が未だに我が国では主流となっています。古き良き時代の「大量生産、大量版売」に根差したスケールメリットを頼みとするマーケティング一本やりの世界観です。また、今のようなデフレの時代となっても、相変わらずの「値引き」合戦がマーケティングの主流?になっているかのようにも見受けられます。

 

 一方、アメリカではどうでしょうか。1970年代に、日本のモノづくりの猛攻を受け、米国のモノ作りは大打撃を受けました。それを機にアメリカはモノ作りから離れ、サービス産業を目指す目標へと舵を切ったのです。その後、飛躍的に進化を遂げたものが、彼らなりのマーケティング戦略なのです。

 

 その中心となった産業が「IT・金融・サービス」などの分野です。モノを作らない産業、無形の情報やサービスを顧客に提供してカネを稼ぐビジネスモデルというわけです。

 

 モノを作らない以上、コストを基本とするプライシング(値決め)をそのまま使うことはできません。そこで、アメリカでは、新しいプライシングのモデルを生み出す必要に迫られました。

 コストに利益を加える方式ではなく、それまでに無かった新しいプライシングモデルが「顧客を中心とした」プライシングモデルだったのです。

 

 『売価-コスト=利益』、この式の始まりは“売価”であって“コスト”ではありません。

 

 「顧客はどれくらいの価格なら買ってくれるか」という問いが発想の起点です。

要するに、顧客はこの製品・情報・サービスにどれだけの価値を認めてくれるか、顧客の感じるバリューがスタートとなるのです。

 

 我が国の牛丼チェーンは、いかにコストの低廉化に果敢に挑み、それに利潤を乗せた価格を提供しているのに対し、アメリカのコーヒーチェーン店は“場の提供”という価値にいくらの値を付けるのかを考えて価格設定を行っています。コーヒーをいくらで買うのかという感覚ではなく、ゆったりとコーヒーを飲むことができる環境をいくらで買うのかを問うているのです。

 

 スケールメリット頼みの値引き合戦は、企業体力の消耗戦を強いるだけのむなしい戦いです。日本人の短絡的な経営志向の一つである『安くすれば売れる』を私たちはもう一度、考え直してみるべきなのではないでしょうか。

『価格を売るな、価値を売れ!』

 

戦後、アメリカとのモノづくりの競争に勝った我が国では、「値決め」という経営の根幹が未だに旧態依然としたまま思考のどこかにに刷り込まれて残っています。形のないものの価値に価格を付けることができない国民性がそこにはあるのではないでしょうか。

 

 最後に、「値決めは経営である」の稲盛和夫氏の言葉です。

『商売というのは、値段を安くすれば誰でも売れる。それでは経営はできない。お客様が納得し、喜んで買ってくれる最大級の値段。それよりも低かったらいくらでも注文は取れるが、それ以上高ければ注文が逃げるという、このギリギリの一点で注文を取るようにしなければならない』....稲盛和夫著「実学」より