DX(デジタルトランスフォーメーション)化が強く語られる世の中になってきました。さらに、DX化とデジタル化の違いが不明確のまま取り組むと、全く違う方向に進むと言われます。

 そこで、このDX化とデジタル化との違いについて、興味がありましたので調べて見ました。今回は会計の話とは少し外れますが、しばらくお付き合いください。

 

 そもそも、取っ付きは、デジタルトランスフォーメーションだったら略字は、DXじゃなくて、DTでしょうが?というところからでした。

 この点については、簡単な回答が用意されていました。『英語圏では、トランスという接頭語を持つ言葉の略字は“X”と表記する』というものです。

 「そういうものだ!」と言われれば、「はいそうですか」と言うしかありません。

 

 続きまして、日本にDXが進展しないと大変なことになるという経済産業省の「DXレポート」に言う『2025年の崖』についてです。

 

 簡単に言えば、昔からのシステム(レガシーシステム)を使い続けると、みずほFGで発生したシステム障害のような事象が2025年頃には、国内で多発しますよと警告しています。これを経済的損失として計算すると毎年12兆円程度が失われるというのです。概ねGDP(国内総生産)の2%程度が毎年消失してしまうとレポートは語っています。

 

 その他『2025年の崖』で想定されているリスクとしては、以下のようなものがあります。

①    既存システムの過剰なカスタマイズによってデータを活用できない

②    IT人材が約43万人不足、かつ古いシステムを理解できる人材も少ない

③    古いシステムの維持・管理費が高額で、IT予算の9割を占めてしまう

 

 こうならない為にも、DX化に励みましょうという事です。これが『2025年の崖』問題です。

 

 「人々の生活を根底から変える」と言われているDXですが、まずどのようなものなのかを見て見たいと思います。以下は、経済産業省によるDXの定義です。

 キー・ワードは「デジタル技術の活用」、「変革」と「競争優位性の確立」だと思います。

 

 これに対してデジタル化とは、デジタル機器を使って業務の効率化を図ることです。例えば、紙媒体で保管していたものをPDFなどデジタル化して、ペーパーレスへの取組や、アナログで非効率な業務をシステムやロボットで改善して、生産性を向上させることなどを差します。

 

 そして、デジタル化は、DX化への入り口だと言われています。そして、製品やサービスの変革を繰り返して、発展していったもので、業務内容や組織等の変革を伴い同業他社に比して競争優位を確立したものがDX化なのです。

 

 経済産業省の研究会で報告されていた実例をご紹介すると、こういうのがあります。

神奈川県の関係会社を含めて従業員150名の鋳造会社のDX化のストーリです。

①    2007年にドイツ製のレーザー工法装置を導入する。

②    国内で初の3Dプリンターによる砂型づくりに成功する。

③    納期を2週間から2~3日に短縮することに成功する。

④    金属粉末を電子ビームで成型する3Dプリンターを導入する。

⑤    鋳造では難しかった複雑な形状の鋳物の製造が可能となる。

⑥    ベテラン職人の技の再現性が高まり、取引先の要望に正確に答えられるようになる。

 

 この会社は、このようなプロセスを経て、日本国内の全ての大手自動車会社を顧客に持てるようになりました。

 さらに、今後この会社で使われているレーザー工法が、業界に広まれば、鋳造という古来のビジネスモデルが一気に刷新されて、DX化に成功した企業が一夜のうちに競業他社を圧倒するくらいに優位に立つという現実が起こり得るのです。

 これがDX化の最大のメリットなのだと思います。組織や会社風土など従来からの古いシステム(レガシーシステム)に未だに手を付けられずにいる会社が、DX化された企業に淘汰される日は、2025年を待たずして起きてしまうかもしれません。

 

 現在政府としても、産業競争力強化法や投資促進税制などでDX化に取り組む企業を応援する仕組みもできています。

 

 今は、対岸の出来事として傍観するのではなく、少しずつ行動に移してみることも必要なのではないでしょうか。

 日本経済新聞社が昨年の暮れから「安いニッポン」と題したシリーズの記事をいくつか掲載しています。

 その記事からすると、例えば「100円ショップ」で商品を100円で販売しているのは、世界中で日本だけで、米国では162円、中国では153円、なんとタイでは214円で同じ商品が売られているというのです。また、「アマゾンプライム」の年会費も、米国では12,900円なのが、日本では4,900円。さらに、ディズニーランドの入園料も、世界中で日本のTDLが一番安いのです。今や、日本での買い物が一番安くつくのです。

 

 この安さの原因の一つが為替レートによる影響です。下のグラフを見てください。これは、日本銀行のHPに掲載されている「実質実効為替レート」を指数表示したものです。簡単に言えば『通貨としての“円の力”』を表したものだと言えます。

 1985年9月にプラザ合意によりドル安が容認されて以降、“円の力”は一気に上昇しています。

 ほんの少し前の中国人よろしく、その当時の日本人は、強くなっていく円を使い世界中で“爆買い”をしていたものです。

 しかし、今では40年前(1980年)当時より“円の力”が弱く(小さく)なっている状況なのです。上の図で言えば、1980年1月=78であり、2021年7月=71というデータとなっています。

今から35年前新婚旅行でハワイに行ったのですが、その時の為替レートが1$=220円であったことを今でも覚えています。現在は1$=110円であったとしても、当時から見ると円での購買力が低くなっているということです。

 

 そこで今回の本題「給料」です。

 なぜ、このように“安い国”に日本がなってしまったか? その一つの要因が「上がらない賃金」というわけです。

 

 次の図表をご覧ください。厚生労働省社会保障審議会での資料からのデータで、日米独の1995年から2016年までの実質雇用者報酬の推移です。

 日本だけが下落傾向を示しています。1995年以降を表したこのグラフと、“円の力”の推移を表した上の図表の1995年以降を比べて見てください。何やら相関しているように思えませんか。

 戦後一貫して上昇していた日本の賃金水準が、1995年を境に上昇を止めてしまったのです。中には、日中の単位労働コストは2010年に逆転しており、今では中国の方が高賃金になっているという研究もあるくらいです。

 また、名目賃金に目を向けると、日本だけが大きく下落していることが見て取れます(下図)。

 

 なぜ、我が国の賃金上昇が止まってしまったのか、原因をいくつか拾ってみました。

 まず、日本の労使関係の特異性という要因があります。

 欧米は、景気悪化に対しては雇用量を調整するという手段で対応します。一方日本では、雇用量を維持して賃金で調整するという傾向が強いのです。

 良い例が、コロナ禍での労働者所得の維持の手法を見れば一目瞭然です。米国では、「雇用保険の上乗せ」で対処したわけですが、日本では各企業に「雇用調整助成金支給」で無対処しました。労働者を解雇してしまう国と、解雇しない国との違いですね。

 

 さらに、なかなか解雇できないということが原因で、労働者への賃金の変動が上方硬直的となってしまうこと、さらに、転職が一般的ではなく、労働力の流動性が低いことも賃金の伸びを阻む原因となっているようです。

 

 ここで、素朴な疑問が生じます。

『では、なぜ1995年までの日本では右肩上がりの賃金の上昇が見られたのか?』ということです。

 これにもいくつかの要因があります。

①    一定の人口伸び率のもとで右肩上がりの高度経済成長期を含む成長の時代が続いていたこと。

②    物価が上昇するのが当たり前との通年のもとで、品質の向上を伴わない財やサービスでも値上げが受け入れられる環境にあったこと。

③    「春闘」を通して、最も賃上げ余力のある産業がリードして社会全体の賃金底上げを図るという、日本独特の仕組みが機能していたこと。

 

 2000年代の初頭、OECD(経済開発協力機構)のレポートに『日本は21世紀半ばまでに、OECD諸国の中で下から4番目に“貧しい国”になるだろう』と書いていました。

 

 「安いニッポン」でいいはずはありません。世界と同じように、賃金の上昇が実現でき、そして適度なインフレが存在する国に戻すことができないものかと思っています。そのためには、労働力の流動性を向上させることが一番の近道なのではないでしょうか。

 

 コロナ禍で日本中の多くの店舗が疲弊している状況が続いています。経済産業省も『事業再構築補助事業』などを立ち上げるなどして、中小零細企業の支援に懸命です。この補助事業ですが、事業者が取組む「新分野展開」「事業転換」「業種・業態転換」などを助成金で後押ししようとするものです。

 第1回通常枠の公募では全国で17050者の応募があったとされています。新製品の開発、新市場の開拓、新たな提供手段の構築などへの取り組みに関する事業計画が試されるのです。

 

 新たな取り組みを行うのも、既存の商売を盛り上げていくものにも、売上をどのように創造していくのかが課題となります。

 どこでも言われていることなのですが、売上高を因数分解すると以下のようになります。

 前述の補助金申請などでは、事業計画の作成が肝になります。新規事業でどのように売上高を創造するかがミソなのです。

 

 事業の対象とするお客は誰で、客数はどのように見込むのか。客単価はどのように設定するのか。そして、リピート率をどうやって上げて行くのかを設計して行かなければなりません。

 

 今回は、難しい話は置いておいて、最近、ハッ!とする内容の本を読んだものですので、若干その内容を書いてみようかと思います。

 

 高田靖久著の『「1回きりのお客様」を「100回客」に育てなさい!』という本です。

 

 おそらく多くの経営者の方が同じような悩みを持っていると思います。それは、お客様がお店に一回しか来てくれないこと。つまりリピーターになってくれないことです。

 せっかくお店に来てくれたお客様が一回きりで終わってしまうのは経営者としては悲しいことです。

 

 まずこの本で書かれているのは、『お客様がリピートしない理由』.......です。

 答えは明快で、『ただ単純に「忘れている」から』

 

≪以下、引用開始≫

 実は、人間の脳には「3つの法則」というものがある。

 これは、人間の脳は「3」のつくタイミングで物事を「忘れる」ようにできているという考え方だ。

 まず、最初のタイミングは「3日後」。

(中略)

 次のタイミングが「3週間後」。

(中略)

 そして、その次のタイミングは3ケ月後。

 人間は、ある物事を経験してから3ケ月間そのことを一度も思い出すことがなければ、それ以降、そのことを思い出す確率は極めて低くなると言われている。

≪引用終わり≫

 

 どんなに良い商品やサービスを提供しても、3日も経てば忘れられていくとは、経営者としてはなんと悲しきことでしょうか。

 

 そこで、この本では著者の高田靖久氏の秘策が紹介されています。その秘策とはDM(ダイレクトメール)戦略です。以下、簡単にご紹介します。

 

 まず、お店のことを忘れられる最初のタイミングである3日後はどのようなDMをお客様に届けるのか。それは、お店に来てくれた「感謝の気持ち」から始まり、自分たちの「こだわり」や、経営者としての「熱い思い」を書いたものを送るというものです。(著者は「サンキューメール」と名付けています)

 

 そして、次に記憶が、脳の思い出し難い部分に格納されてしまう3週間後にお客様に届けるDMは、お店のすばらしさを伝えることに特化したものだと言うのです。

 たとえば、同業者に推奨していただいたり、ランキングであったり、過去にこのような賞をいただいたとかという受賞歴などを伝えるのだそうです。さらに、「お客様の声」なども加えると良いというとのこと。

 とにかく、お客様に「予期せぬ驚き」を与えることが重要たという事です。(著者は「ライクメール」と名付けています)

 

 そして、最後の3ヶ月後のDMは、著者曰く『劇薬』。この劇薬の中身については、直接この本をお読みいただければ納得してもらえると思います。

 

 以上が、1回客を100回客に変えて行く手法の一つとして書かれているのです。

 

 そうそう、素朴な疑問として頭に浮かぶのは『DMを送るって、お客様の氏名や住所若しくはメールアドレスをどうやって入手するんだ?』という事だろうと思います。

 

 その点は、この著者の高田靖久氏はしっかりと心得ていて、高田氏のブログでその簡単な集め方を公開しているのです。

 

 売上高が伸び悩んでいて、集客方法を模索している事業所は、一回でも試してみる価値はあるのではないでしょうか。