米ハワイのマウイ島で8月8日に発生した山火事は死者115人、2200棟とも3000棟ともされる建物が損壊するなどの被害を生じさせ、経済損失は約8700億円との試算が公表された。カナダ西部では400件以上の山火事が発生した(全土では1000件以上)。例年も山火事は被発しているが、州政府は今年は「州史上、最悪の山火事シーズン」だとし、約3万人に避難命令、約3万6千人に避難警報が出された。消失面積は約1400万ha。

 

 山火事は毎年、世界各国で発生しているが、今年は大規模な山火事が報じられている。スペイン・カナリア諸島では消失面積が8000haを超し、2万6千人以上が避難した。ポルトガルの山火事では消失面積8400ha、フランス南西部では同500haのほか、ギリシャでは観光地のロードス島から約1万9000人が避難し、伊シチリア島や米ワシントン州東部などでも山火事が発生したという。

 

 世界各地での山火事のニュースが増え、地球温暖化の影響を指摘する報道も多く、「地球環境が温暖化すると山火事が増えるのか。日本は山林が多いから、そのうちに全国各地で山火事が多発する時代になる」と心配する人がいた。どうやら、気温が上昇すると自然発火で山火事が発生すると連想したらしい。

 

 山火事が地球温暖化により増えると懸念されるのは、地球温暖化が地域によっては乾燥した気候をもたらし、枯れ葉や枯れ枝などを含め山や野原が「燃えやすい」状態になったところに、何らかの着火によって火災が生じ、消火が適切になされていない状況では、山火事が燃え広がるからだ。米西海岸やオーストラリアなどで毎年、山火事が多発するのは乾燥した気候の頃だ。

 

 日本は周囲を海に囲まれていて、夏の猛暑は高い湿度を伴い、ジメジメとして暑苦しい。海も暖められて水分を蒸発させるからで、猛暑だけれどカラッとした湿度の低い夏の日は日本では珍しいだろう。海に囲まれて湿度が高い日本では、乾燥による大規模な山火事が起きる確率は少ないかもしれない(大規模な山火事が起きる確率はゼロではない)。

 

 気候変動の影響で今年の世界各地での熱波がもたらされたとの解釈があり、熱波で自然発火して各地で山火事が発生したと早合点する人もいるらしい。だが発火温度(発火点)は枯葉で350度、木材は250〜260度、木炭は250〜300度、新聞紙は290度、ガソリンは300度、ゴムは350度、古タイヤ150〜200度などと、気温が仮に50度に達したとしても枯葉や枯れ枝、木材などが自然に燃え上がることはない。

 

 燃焼の3要素は「可燃物」「酸素」「着火エネルギー」で、山火事は何らかの着火によって発生する。マウイ島の山火事でマウイ郡は電力会社が通電していた送電線が倒壊して火災が発生したと電力会社を訴え、電力会社は送電は止まっていたと反論した。焼失面積13万haとEUで過去最大規模の山火事に見舞われたギリシャで警察が放火容疑で79人を逮捕した。放火のほか焚き火、野焼き、バーベキューやタバコの火の不始末など人為的な原因も多いという。世界の山火事を検証するには、地球温暖化との関係を重視し過ぎるよりも、着火が何かを調べることがいい。