小説のタイトルが『いなかのせんきょ』(藤谷治・著。祥伝社文庫)。
数十年にわたり、村の長老などの裁定で村長候補がひとり決まるため、舞台の戸陰村には民主主義の民意を問う選挙は行われていなかった。 その伝統を守るため、助役の平山忠則はまず、四角四面の村議・深沢清春に村長選に出馬するように持ちかけ、清春の同意を得る。
平山は、町村合併で失敗した前村長のもとで、自分が村政のすべてを取り仕切ってきたという自負心のある人間である。平山は、村会議長、村の雇用を担う有力会社の社長など村の有力者に、深沢でいくのでよろしくと挨拶して回る。当然、清春も有力者に挨拶して回る。
ところが、村会議長は突然、態度を変え、平山を候補者にしてしまう。
村の有力者を推薦人にした平山と、不利を承知で選挙を戦うことを決めた清春との選挙戦が始まる。
選挙事務所もない、事務長も名前だけの清春ではあったが、横浜に住む広告会社を経営する実弟とキャリアウーマンとして東京で働く娘が駆けつける。清春の陣営は、母、長男夫婦、実弟、娘だけであり、実際に動いたのは実弟のみであった。
清春は平山陣営が選挙事務所でのみ気勢を上げているときに、村を走り、訴える。
選挙とは何か、なぜ人は選挙に出るのか、周囲の人間は何を考えるのか。選挙を通じていろいろなことがわかってくる。
総選挙が近そうだと思って手にしたこの作品は非常に参考になり、おもしろかった。