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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はLancet Haematologyからで、職業的な低線量被曝と血液腫瘍による死亡率との関連を研究した大規模試験をご紹介いたします。

 

Leukaemia, lymphoma, and multiple myeloma mortality after low-level exposure to ionising radiation in nuclear workers (INWORKS): updated findings from an international cohort study

Leuraud K et al, Lancet Haematol 2024, doi: 10.1016/S2352-3026(24)00240-0

 

【背景】

透過する電離放射線への低線量被曝と死亡率の関連性についての理解を深めるために、International Nuclear Workers Study(INWORKS)の主要アップデートが着手された。本論文では、被曝量と血液悪性腫瘍による死亡率の関係について報告する。

 

【方法】

フランス(60,697人)、英国(147,872人)、および米国(101,363人)の原子力施設で少なくとも1年間勤務していた、放射線モニタリングされた労働者からなる309,932人のコホートを集めた(男性:269,487人[87%]、女性:40,445人[13%])。労働者は個別に外部放射線被曝をモニタリングされ、1944年1月1日から2016年12月31日までの期間を追跡し、合計1072万人年のフォローアップが行われた。放射線と死亡率の関連は、白血病(慢性リンパ性白血病[CLL]を除く)および白血病のサブタイプ、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫に対する赤色骨髄への放射線線量1Gyあたりの過剰相対率(ERR)で定量化された。関連の推定はポアソン回帰法を用いた。

 

【結果】

赤色骨髄への累積線量(2年遅れ)と白血病(CLLを除く)の死亡率との関連は、線形モデルによってよく説明することができた(1GyあたりのERR 2.68、90% CI 1.13~4.55、n=771)。この関連は中性子被曝、内部汚染モニタリングの状態、または雇用期間によって修正されなかった。また、慢性骨髄性白血病(9.57、4.00~17.91、n=122)および骨髄異形成症候群のみ(3.19、0.35~7.33、n=163)もしくは急性骨髄性白血病との合併(1.55、0.05~3.42、n=598)についても正の関連が観察された。急性リンパ性白血病(4.25、–4.19~19.32、n=49)またはCLL(0.20、–1.81~2.21、n=242)には有意な関連は認められなかった。放射線線量と多発性骨髄腫との間には正の関連が観察された(1.62、0.06~3.64、n=527)一方で、放射線線量と非ホジキンリンパ腫(0.27、–0.61~1.39、n=1146)またはホジキンリンパ腫(0.60、–3.64~4.83、n=122)の死亡との間で観察された関連性はわずかだった。

 

【解釈】

この研究は、長期間にわたる低線量の電離放射線被曝と、一部の血液悪性腫瘍による死亡率との正の関連を報告している。この研究での労働者が通常蓄積する比較的低い線量(平均累積赤色骨髄線量16mGy)を考慮すると、この集団において放射線被曝が白血病による死亡に寄与する絶対リスクは低い(35年間で1万人の労働者につき1人の余剰死亡)。これらの結果は放射線防護基準に影響を与え、放射線防護システムに関する議論に寄与するだろう。

 

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普段あまり読まないタイプの論文でしたが、原子力施設で勤務する労働者における、被曝線量と血液悪性腫瘍による死亡との関連を検討した論文でした。リスクは低いものの一部の疾患で関連性が観察されましたが、絶対リスクは低いので過度な心配は必要なさそうです。医療者も(血液内科医はあまり放射線科には行かないかもですが)放射線に曝露しやすいですから、きちんと放射線防護をすることが重要ですね!

 

おまけ

 

 

トマトソースのパスタです(詳細は忘れましたが・・・)!