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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBJHから、造血幹細胞移植ドナーのコロナウィルス感染と移植アウトカムを解析した論文をご紹介いたします。

 

Recent infection with SARS-CoV-2 in donors was associated with a higher incidence of acute graft-versus-host disease in recipients undergoing allogeneic haematopoietic stem cell transplantation

Lin F et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh.19594

 

【要旨】

世界的なパンデミックにより、一般集団でのSARS-CoV-2感染症はありふれたものとなった。パンデミック後の時代において、ドナーのSARS-CoV-2感染症が、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)の成績に与える影響を理解することは必須である。我々は、軽度SARS-CoV-2感染もしくは早期改善期(ERS)(グループ 1、n = 65)および晩期改善期(グループ 2、n = 120)ドナーからのallo-HSCTを後方視的に解析した。さらに、SARS-CoV-2感染歴のないドナーからのallo-HSCTをグループ 0として加えた(n = 194)。

 

異なるSARS-CoV-2感染ステータスのドナーからの移植は、生着率と生存率は同等であった。しかし、グループ 1は急性GVHD(aGvHD)のグレードⅡ-Ⅳ(41.5% vs. グループ 0で28.1%[p = 0.014]、グループ 2で30.6%[p = 0.067])、グレードⅢ-Ⅳ(22.2% vs. グループ 0で9.6%[p = 0.004]、グループ 2で12.2%[p = 0.049])の頻度が高かった。逆に、グループ 2のaGvHDのリスクはグループ 0と同等だった。多変量解析により、グループ 1はグレードⅡ-Ⅳ(ハザード比 [HR]2.307、p = 0.01)とグレードⅢ-Ⅳ(HR 2.962、p = 0.001)のaGvHDと関連したが、生存の危険因子としては有意でなかった。

 

結論として、本研究により活動性感染状態もしくは軽度SARS-CoV-2感染のERSが、血縁ドナーからの移植のaGvHDの頻度が高くなることと相関することを示した。

 

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ドナーがSARS-CoV-2感染の急性期にある場合はさすがに幹細胞採取をすることはないでしょうが、ごく軽い風邪症状で検査を受けていなかったり、改善傾向にあって一般的な隔離解除期間を過ぎていれば、感染者が幹細胞採取されることもあるかと思います。今回の報告では、感染が起こってすぐの状態での採取は、生存まで影響を与えなかったものの、急性GVHDを増やすかもしれないという結果になりました。後方視的な解析なので何ともですが、そもそもドナーの安全が第一ですから、しっかり落ち着かせてから採取したいものですね。

 

おまけ

 

 

歓迎会シリーズで、棒々鶏です!