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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はNew England Journal of Medicineから、再発難治DLBCLに対する新規治療レジメンをご紹介致します。

 

Combination Targeted Therapy in Relapsed Diffuse Large B-Cell Lymphoma

Melani C et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2401532

 

【背景】

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)における発がん変異の同定が、極めて重要な生存経路を標的とする薬剤の開発につながってきた。しかし、複数の生存経路を標的とすることがDLBCLの治癒をもたらすかどうかは不明である。

 

【方法】

我々は、再発もしくは難治性のDLBCLに対し、ベネトクラックス、イブルチニブ、プレドニゾロン、オビヌツズマブ、レナリドミド(ViPOR)レジメンの単施設での第1b-2相試験を行った。

 

第1b相では、DLBCLおよびインドレントリンパ腫の患者が含まれ、第2相試験の推奨用量を同定するために、ベネトクラックスの4つの用量レベルが検証された。その他の4つの薬剤の用量は固定された。第2相の拡張パートはGCBおよびnon-GCB DLBCL患者を対象に行われた。ViPORは21日ごとに6サイクル投与された。

 

【結果】

第1b相では20人の患者が参加し(10人がDLBCL)、1件の用量制限毒性であるグレード 3の頭蓋内出血が起こり、結果としてベネトクラックス 800mgが第2相試験の推奨用量として確立した。第2相試験はDLBCL患者40人が参加した。毒性は全ての患者で観察され、グレード 3もしくは4の好中球減少症(24%のサイクル)、血小板減少(23%)、貧血(7%)、発熱性好中球減少症(1%)が含まれた。奏効は評価可能なDLBCL患者48人のうち54%で認められ、完全寛解が38%で見られた。完全寛解はとりわけnon-GCB DLBCLと、MYCおよびBCL2またはBCL6(もしくは両方)の転座を有するhigh-grade B-cell lymphomaで認められた。ViPOR治療の終了時で、33%の患者で循環腫瘍DNAが検出出来なくなった。フォローアップ期間中央値40カ月時点で、2年無増悪生存率と全生存率は、それぞれ34%(95% CI 21-47)と36%(95% CI 23-49)だった。

 

【結論】

ViPORによる治療は、特定の遺伝子異常を有するDLBCLサブタイプで持続する寛解をもたらし、概ね可逆性の有害事象を示した。

 

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既存の分子標的薬をオールスター的に集めて来ましたという感じの(実際はもちろん基礎検討が行われていますが)ViPORレジメンの臨床試験となります。DLBCLは最近進歩の著しい分野ですが、それでも移植やCAR-T細胞療法に行けない再発難治症例や高齢者の治療は厳しいものがあります。今回は分子標的薬の全部盛りという感じで、複数のシグナル経路をブロックすることが主眼の治療となります。いわゆる殺細胞薬を使用していませんが、既存のレジメンを上回ることが期待できそうな治療反応が示されました。特に治療が難しい事の多いnon-GCB DLBCLやダブルヒットリンパ腫に優れた効果を発揮しており、今後の多数例での検討が待たれます。

 

おまけ

 

 

今年度は多くのローテーターに勉強に来ていただいており、歓送迎会が頻繁に開かれています(嬉しい悲鳴)。美味しい麻婆豆腐を食しました!