【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

先週から引き続いて、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)からの話題を取り上げます。慢性骨髄性白血病に対するアシミニブとチロシンキナーゼ阻害剤を比較した第Ⅲ相試験となります。

 

Asciminib in Newly Diagnosed Chronic Myeloid Leukemia

Hochhaus A et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2400858

 

【背景】

新規診断の慢性骨髄性白血病(CML)患者には有効性と安全性の高い、長期間にわたる治療が必要となる。BCR::ABL1阻害剤であるアシミニブは、特異的にABLミリストイルポケットを標的として、現在使用されているフロントラインのATP競合的チロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)よりも、より高い有効性と安全性、そしてより少ない副作用をもたらすかもしれない。

 

【方法】

今回の第Ⅲ相試験では、未治療CML患者が1:1の割合で、アシミニブ(80mg 1日1回)もしくは試験参加医師が選択したTKIを受ける群にランダム化割り付けされた。ランダム化はEUTOSの長期生存スコア分類(low、intermediate、high risk)と試験参加医師によってランダム化前に選択されたTKI(イマチニブと第2世代TKI)によって層別化された。主要評価項目は48週でのMMR(International Scale[IS]によりBCR::ABL1転写レベル0.1%以下で定義)で、アシミニブと試験参加医師の選択によるTKIの比較、およびアシミニブとイマチニブが比較された。

 

【結果】

合計201人の患者がアシミニブに、204人が試験参加医師が選択したTKIに割り付けされた。フォローアップ期間中央値はアシミニブ群で16.3カ月、TKI群は15.7カ月だった。48週でのMMRはアシミニブ群で67.7%で、対するTKI群では49.0%だった(差異 18.9パーセントポイント;95% CI 9.6~28.2;修正両側P<0.001)。イマチニブとの比較で層別化された患者群において、アシミニブは69.3%、対してイマチニブは40.2%だった(差異 29.6パーセントポイント;95% CI 16.9~42.2;修正両側P<0.001)。第2世代TKIとの比較で層別化された患者群において、48週でのMMRはアシミニブ群で66.0%、第2世代TKIで57.8%だった(差異 8.2パーセントポイント;95% CI -5.1~21.5)。

 

グレード3以上の有害事象と、試験薬の中止に至った有害事象はアシミニブ群(それぞれ38.0%と4.5%)がイマチニブ(同44.1%と11.1%)と第2世代TKI(同54.9%と9.8%)より少なかった。

 

【結論】

今回のアシミニブと試験参加医師が選択したTKIやイマチニブの比較試験において、アシミニブは新規診断慢性期CML患者において、より優れた有効性と良好な安全性プロファイルを示した。アシミニブと第2世代TKIとの直接比較は主要評価項目ではない。

 

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CMLの歴史を変える論文が登場してきました。既に再発難治症例で日本でも承認を得ているアシミニブですが、今回は初発未治療患者を対象に、試験参加医師が選択したTKI(イマチニブと第2世代TKIの双方が含まれる)、およびイマチニブとの直接比較が行われました。結果としては、48週でのMMRの達成率でいずれの比較でもアシミニブが優れた奏効と安全性を示す結果となりました。フォローアップ期間中央値が短いので、長期フォローの結果も確認する必要がありますが、今後のCML初発治療はアシミニブに大きく傾きそうな結果です。

 

注意しないといけないのは、今回の試験デザインではアシミニブと第2世代TKIの直接比較は主要評価項目として行われていない点です。サブグループ解析では48週のMMR達成率において(アシミニブがやや有望そうではあるものの)統計学的には有意差はなく、またアシミニブ耐性を示した症例でTKIが一定の有効性を示したとの記載もあり、第2世代以降のTKIにもまだまだ出番はあると思います。こちらも長期フォローの結果を注視する必要があります。

 

おまけ

 

 

前回画像がネタ切れ気味と書いたら、早速素敵な紫陽花の写真をいただきました。引き続き関係者の皆様からの画像提供もお待ちしております(笑)。