【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今週はアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)からの報告が相次いでおり、New England Journal of Medicineにも続々論文が掲載されています。今回はその中から、IMROZ試験をご紹介いたします。

 

Isatuximab, Bortezomib, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma

Facon T et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2400712

 

【背景】

ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメサゾン(VRd)は新規診断多発性骨髄腫間はにおける推奨初回治療選択肢である。抗CD38抗体であるイサツキシマブをVRdレジメンに追加すると、移植非適応患者において原疾患進行もしくは死亡のリスクを下げるかどうかは不明である。

 

【方法】

国際非盲検第Ⅲ相試験において、18歳から80歳の移植非適応の新規診断多発性骨髄腫患者が、3:2の割合でイサツキシマブ併用VRd療法もしくはVRd療法のみにランダム化割り付けされた。主要有効性評価項目は無増悪生存率である。主要副次的評価項目には完全寛解以上を達成する率と、完全寛解を達成した患者における微小残存病変(MRD)陰性率が含まれた。

 

【結果】

合計446人がランダム化を受けた。フォローアップ期間中央値59.7カ月時点で、60カ月の推定無増悪生存率はイサツキシマブ+VRd群で63.2%、対してVRd群では45.2%であった(原疾患進行もしくは死亡のハザード比 0.60;98.5% CI 0.41-0.88;P<0.0001)。完全寛解以上を達成した患者の割合は、イサツキシマブ+VRd群がVRd群と比較し有意に高かった(74.7% vs. 64.1%、P=0.01)。MRD陰性を伴う完全寛解率についても同様だった(55.5% vs. 40.9%、P=0.003)。イサツキシマブ+VRdレジメンで新たな安全性の懸念点はなかった。治療期間中の重篤な有害事象の頻度と、治療中断につながる有害事象は、2群間で同等だった。

 

【結論】

18歳から80歳の新規診断で移植非適応の多発性骨髄腫患者に対する初回治療において、イサツキシマブ+VRd療法はVRd療法よりも有効性が高かった。

 

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ついに、という感じで移植非適応多発性骨髄腫に対する四剤併用化学療法の第Ⅲ相試験が出てきました。既存の標準治療の一つであるVRd療法にイサツキシマブを上乗せすることにより、予想通りに有意に無増悪生存率を改善させるという結果となりました。患者群をみると70代の高齢者も多く含まれていましたが、個人的にはリアルワールドだと標準量をこなせるのか心配な部分もあるように思いました。データを細かく見ると、やはり血球減少や感染関連合併症はイサツキシマブ併用のほうが頻度は高そうで、このあたりの予防や治療をいかに上手にしていくのかが、この治療を実施する上での重要なポイントになるでしょう。いずれにしても標準治療を塗り替える素晴らしい結果です。

 

おまけ

 

 

写真がネタ切れ気味で、少し前に食したパンケーキを載せます!