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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はJCOからで、比較的まれな疾患のWaldenström Macroglobulinemiaにおける新しい予後予測モデルをご紹介いたします。

 

Simplified Risk Stratification Model for Patients With Waldenström Macroglobulinemia

Zanwar S et al, J Clin Oncol 2024, doi: 10.1200/JCO.23.02066

 

【目的】

Waldenström Macroglobulinemia(WM)患者は全く異なるアウトカムを呈する。International Prognostic Scoring Systemが開発されて以降で新しい治療法が出現しており、またMYD88L265P変異が現在では診断時に頻繁に評価されており、予後パラメーターの再評価を必要としている。

 

【患者と方法】

我々は、単変量解析において全生存(OS)の臨床的な予後因子を同定するために、1996年1月1日から2017年12月31日までの間で、連続的に認められた活動性の未治療WM患者889人の記録をレビューした。単変量解析で有意なパラメーターが完全な患者(n=341)は予後予測モデルを開発するための多変量解析に組み入れられ、引き続いて多施設コホートで検証された。

 

【結果】

導出コホートにおいて(n=341)、年齢(ハザード比[HR] 1.9[95% CI 1.2-2.1];P=0.0009)、血清LDHが基準値を超える(HR 2.3[95% CI 1.3-4.5];P=0.007)と血清アルブミンが3.5g/dL未満(HR 1.5[95% CI 0.99-2.3];P=0.056)が独立した予後因子だった。アルブミン値 3.5g/dL未満(HR 1.5)と年齢 66~75歳(HR 1.4)にそれぞれ1ポイント、年齢が75歳を超える(HR 2.6)もしくはLDH上昇(HR 2.3)に2ポイントを割り当てると、スコアの合計に基づいて明瞭にアウトカムの異なる4つの群が認められた。5年間のOSはlow-risk群(スコア 0)で93%、low-intermediate risk群(スコア 1)で82%、intermediate-risk群(スコア 2)で69%、high-risk群(スコア 3以上;P<0.0001)で55%であった。検証コホートにおいて(n=335)、予測モデルは予測能力を維持しており、5年間のOSは4群それぞれで93%、90%、75%、57%であった(P<0.0001)。

 

【結論】

年齢、アルブミン値、LDHを用いたWMの修正ステージングシステム(MSS-WM)は単純で臨床で有用で、外部で検証された予後予測モデルであり、症候性WM患者を明確に予後の異なる4つの群に信頼度高くリスク層別化出来る。


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WMは比較的まれな(と言っても、それほどまれでもない)タイプの悪性リンパ腫です。現状では下記のrevised IPSS-WMがメジャーでよく使われているかと思いますが、患者数が少ないこともあり、このシステムは1991年~2014年の症例に基づいて算出されました。

 

 

 

今回のMSS-WMは1996年~2017年と、比較的最近(と言っても古い症例も含まれる)の患者群を対象に開発された予後予測モデルで、revised IPSS-WMよりも予測力が優れており、特に中間から高リスク群の検出力が上がっているので、積極的な治療を検討すべき患者群がより分かりやすくなったように思いました。因子がシンプルでどの施設でも測定しているものなのもポイント高いです!最近話題のMYD88変異はどうだったのかと言うと、残念ながら予後因子としては残りませんでした。しかしながら、診断ツールとしては重要なことに変わりはありません。今後の研究に期待します。

 

おまけ

 

 

恒例のローテーター歓迎会で、病院近くのお店で美味しい刺身をいただきました!