【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBritish Journal of Haematologyに日本からの報告が載っていたのでご紹介します。

 

Prognostic factors of idiopathic hypereosinophilic syndrome: A nationwide survey in Japan

Honda A et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh.19527

 

【要旨】

特発性好酸球増多症候群(iHES)は、その他の明らかな原因がないにも関わらず、臓器障害を伴う持続する好酸球増多が起こる状態である。疾患がまれなため、知見の蓄積が未だ不十分である。

 

このため、我々は後方視的に多施設共同で日本のiHESについて全国調査を行った。合計で57人の患者が同定された。何らかの治療を受けた43人において、全ての症例で最初は副腎皮質ステロイドで治療された。骨髄の好酸球割合が30%未満、浮腫がないことがステロイド依存に関連する因子であった。5年間の全生存率は88.2%で、5人の患者がフォローアップ期間中に死亡した。全生存の悪化に関連する因子として、年齢(>50歳)、ヘモグロビン(<12g/dL)、APTT(>34秒)、呼吸困難あり、血栓傾向あり、腎不全ありが挙げられた。今回のコホートでは死亡がまれであったため、さらに次治療までの期間(TTNT)が解析された。腎不全、脾腫、肺の異常があるとTTNT悪化と関連した。

 

我々の全国調査により、iHES患者の臨床的特徴とアウトカムだけでなく、ステロイド依存性とファーストラインでの副腎皮質ステロイドの有効性に関連する臨床因子が初めて明らかになった。

 

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好酸球増多は血液内科へのコンサルトで頻度の高いものの一つです。特徴的な染色体異常が出れば診断も簡単なのですが、そのような症例はまれであり、そうなると二次性の除外(どこまで出来ているかが難しい)や持続期間(原因が良く分からなくても自然と治ることも多い)など、どこまで血液内科が関わって診断していくか、いつも悩まされます(転院されたり、外来通院が困難でフォロー出来ないことも)。その中で、他に説明のつかない何らかの臓器障害を抱える患者さんに対して、HESと診断してステロイド投与を検討することもありますが、症候群のため、自信を持って…というより、恐る恐るというのが実情ではないかと思います。

 

今回の報告は、そんな血液疾患のような血液疾患でないような境界領域であるiHESに焦点を当てたもので、臨床的アウトカムに与える因子がいくつか同定されました。これらを参考にして、フォローアップや治療介入のタイミングに濃淡を付けるのはありではないかと思いました。

 

おまけ

 

 

好きな野菜だけを入れて、無水鶏じゃがを作りました!