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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBloodからで、ハイリスク染色体異常のある多発性骨髄腫を対象とした第Ⅱ相試験結果をご紹介いたします。

 

Daratumumab, carfilzomib, lenalidomide, and dexamethasone with tandem transplant for high-risk newly diagnosed myeloma

Touzeau C et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023023597

 

【要旨】

高リスク(HR)染色体異常は、新規診断多発性骨髄腫(NDMM)の予後不良と関連し、この治療困難な患者群に対応することを目的とした特定の研究がなされるべきである。今回のIntergroupe Francophone du Myelomeで行われた第Ⅱ相試験の2018-04では、HR移植適応(TE)NDMM患者における、四剤併用寛解導入および地固め療法にタンデム移植を組み合わせた強度の高い治療戦略の実行可能性を評価した。

 

HR染色体はdel(17p)、t(4;14) and/or t(14;16)を認めることと定義された。治療はダラツムマブ・カルフィルゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用(D-KRd)寛解導入療法、自家造血幹細胞移植(ASCT)、D-KRd地固め療法、2回目のASCT、そしてダラツムマブ・レナリドミド維持療法からなるものだった。主要評価項目は実現可能性だった。

 

未治療のNDMM患者50人が試験に組み入れられた。年齢中央値は57歳だった。Del(17p)、t(4;14)、t(14;16)はそれぞれ患者の40%、52%、20%に認められた。データカットオフ時点で、36人の患者が2回目の移植を完遂しており、主要評価項目にメットした。20人の患者が臨床試験を中断しており、理由は幹細胞採取不良(8人)、原疾患進行(7人)、有害事象(4人)、同意の撤回(1人)だった。D-KRd寛解導入/地固め療法に関連したグレード 3から4の有害事象(患者の5%を超える)は、好中球減少症(39%)、貧血(12%)、血小板減少症(7%)と感染症(6%)だった。2回の移植を完遂した患者では全奏効率は100%であり、完全寛解81%が含まれた。維持療法前の微小残存病変(MRD)陰性率(10-6)は94%だった。フォローアップ期間中央値33カ月時点で、30カ月の無増悪生存率(PFS)と全生存率はそれぞれ80%と91%だった。

 

結論として、D-KRdとタンデム移植はHR TE-NDMM患者において実現可能であり、高い奏効率とPFSをもたらした。

 

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最近トップジャーナルには四剤併用化学療法の試験が多く取り上げられており、百花繚乱という感じです。今回はフランスのグループからで、未治療の移植適応多発性骨髄腫患者を対象とした第Ⅱ相試験になります。内容はD-KRd療法と2回の移植と維持療法という、CAR-T細胞療法とBiTE療法(とその他の細々した新薬)を除いた、考えられる最強の薬剤で臨んだデザインになります。

 

多発性骨髄腫としては比較的若年で条件の良さそうな患者群と思われましたが、主要評価項目である70%の症例が2回目の移植までを完遂することができ、実現可能性には問題ないと判定されました。とは言っても、2名の患者で治療関連死亡が出ていますし、幹細胞採取が出来なかった症例もかなりあり、リアルワールドで安定して実行するのは難しそうな印象です。きちんと対象症例を選んで、注意して行えば、ハイリスク症例に対しては今後充分選択肢になりえると思います。

 

現在、この試験と若干内容は違うのですが、タンデム移植と1回の移植+四剤併用化学療法を比較する第Ⅲ相試験が走っているので、安全性と有効性のどちらに軍配が上がるかに注目していきたいです。

 

おまけ

 

 

春の味覚の中でも好物上位に入るスナップエンドウをシチューに入れました(泡立ちすぎた…)。いつも行くスーパーでポップに全部「スナッ"ク"エンドウ」と書かれているのが個人的春の風物詩で、毎年ニヤリとしてしまいます。