【お知らせ】
当科ではスタッフ医師を募集しています。募集要項はこちらです。当科の紹介記事はこちらから。メールでのお問い合わせはhematology@aih-net.comまでお願いいたします。

 

こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回は、いつもの論文紹介の特別編をお送りしたいと思います!

 

先日ブログ読者の方から嬉しいお便りをいただきました。

 

とある医院にお勤めで、血液内科外来でご活躍の先生なのですが、周期性血小板減少症の症例報告がInternational Journal of Laboratory Hematology誌に掲載されたので、その内容を当ブログで紹介してほしいとのご依頼でした。

 

内容を拝見し、大変興味深く日常臨床にも役立つと思いましたので、活用方法も含めて共有したいと思います!

 

今回は偶然ですが、読者の先生からこのようなお話をいただきまして大変光栄に思っております。もしご自分で執筆した論文や症例報告を当ブログで共有したい!という先生がいらっしゃいましたら、第2弾も企画したいと思いますので、是非ご連絡ください!(コメント欄か、冒頭のメールアドレスをご使用ください)

 

というわけで、症例報告はこちらになります。

 

Revealing cyclic thrombocytopenia: The role of periodogram analysis and the impact of thrombopoietin receptor agonist therapy

Isoda A et al, Int J Lab Hematol 2024, doi: 10.1111/ijlh.14278

 

報告の要旨としては、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断していた患者さんが、長期間副腎皮質ステロイドを投与されていたのですが、ステロイド合併症が出現したためステロイドを減量してトロンボポエチン受容体作動薬を上乗せしたところ、血小板数のベースラインが上昇するとともに、それまでよく分からなかった血小板数の上下が顕在化し、ピリオドグラムで解析したところ稀な疾患である周期性血小板減少症(CIP)の診断に至ったという症例報告になります。

 

この機序として、トロンボポエチン受容体作動薬がCIPにおける血小板数調整のフィードバック機構を強めるからではないか、と考察されていました。この症例では偶発的ですが動脈血栓もあったことが発覚しており、長期のステロイドやトロンボポエチン受容体作動薬による血小板数上昇の有害性も懸念される、という示唆に富んだ症例です。

 

この症例報告のもう一つの特徴が、著者らが解析に用いたピリオドグラムが公開されているところです。リンク貼りますね。

 

 

私も使ってみたのですが、最初少し面食らうかもしれないので、使用方法を解説します。と言っても分かれば簡単です。

 

まず、患者さんの血小板数と測定日を入力したExcelファイルを準備します。画像のように日付("date")と血小板数("platelets")の列にデータを入力します。日付はYYYY/MM/DDもしくはYYYY-MM-DDの形式、血小板数は単位をはずして数字だけを入れるのが注意点です。

 

 

このデータをCSVファイル形式で出力します。

 

 

次に、上述のGoogle Colabにアクセスします。環境により多少の違いはあるかと思いますが、上部に英語で説明書があると思います。それに従い、「ファイル」→「ドライブにコピーを保存」を選択しますと、別タブが開くと思います。

 

 

別タブにある「runボタン」をクリックします。

 

 

画面下部に「ファイルを選択」ボタンが出現するので、先程準備したCSVファイルを読み込ませます。うまく出来ていると、ピリオドグラムが出力されるので、画像を右クリック保存します。今回出来上がったのがこちらです。

 

 

今回は最も検出力の高い「best period」が27.3日と算出されましたが、False Alarm Probability(誤警報確率)が9.1539%と高いので、この症例では有意な周期性はないという判断になりました。

 

操作に慣れると簡単でした。CTPのスクリーニングに便利だと思うので、「ずっとITPだと思っていたけど、治療反応も悪いしもしかして・・・」と疑う症例がありましたら、是非活用してみて下さい。