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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

怒濤の仕事ラッシュが押し寄せてきた連休明けでしたが、皆様はいかがでしたでしょうか。

 

今回はBloodからで、血栓性血小板減少性紫斑病におけるカプラシズマブ治療後のADMATS-13活性の回復を検証した論文です。

 

ADAMTS13 recovery in acute thrombotic thrombocytopenic purpura after caplacizumab therapy

ME Mingot-Castellano et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023022725

 

【要旨】

カプラシズマブはvon Willebrand因子と血小板の相互作用を妨げ、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(iTTP)の治療に使用される。カプラシズマブ投与は、血漿交換(PEX)停止後のADAMTS-13活性回復の遅延と関連するとされてきた。我々はスペインのTTPレジストリで同定された108人の患者における、113件のiTTPエピソードを解析した。そのうちの75エピソードはカプラシズマブで治療されていた。

 

カプラシズマブは血小板数正常化までの期間を短縮し、PEXの必要性、悪化、再発を減少させた。PEX終了後にADAMTS-13活性20%以上を達成するまでの期間は、カプラシズマブで治療を受けたエピソードと受けていないエピソードの間で有意差はなかった(中央値[四分位範囲] 14.5[7.7-27.2] vs 13.0[8.0-29.0]、P=0.653)。しかし、iTTP診断後3日以内でカプラシズマブが開始された36エピソードについて考慮すると、iTTP診断後3日を超えてからカプラシズマブが開始されたエピソード(20.0[12.0-43.0] vs 11.0[3.5-20.0]、P=0.003)もしくはカプラシズマブなしで治療されたエピソード(P=0.033)と比較し、これらのエピソードではPEX終了からADAMTS-13回復までの期間は長かった。この結果は、カプラシズマブ治療が遅かったエピソード(5.5[4.0-9.0] vs 15.0[11.0-21.5]、P<0.001)やカプラシズマブなしで治療したエピソード(11.0[6.0-26.0]、P<0.001)と比較して、カプラシズマブで早期治療されたエピソードで著明にPEX期間が短縮されたことに関連するかもしれない。PEX開始からADAMTS-13回復までの期間に有意差はなかった(早期カプラシズマブ治療群:28.0[17.2-47.5]、カプラシズマブ治療が遅かった群:27.0[19.0-37.5]、カプラシズマブ治療なしの群:29.5[15.2-45.0])。カプラシズマブ早期投与は免疫抑制療法の必要性を低下させない、重大な安全性の懸念を伴わずにPEXの必要期間を短縮させる利益をもたらす。

 

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後天性の血栓性血小板減少性紫斑病は、ADAMTS-13に対する自己抗体が産生され、それによりvon Willebrand因子の重合体が切断されず、血栓傾向を呈します。従来は血漿交換やステロイドなどで治療されていましたが、最近一本鎖ヒト化抗von Willebrand因子モノクローナル抗体であるカプラシズマブが使用できるようになりました。カプラシズマブはvon Willebrand因子と血小板との相互作用を直接阻害することで、血栓傾向を改善させます。従来の治療と組み合わせると劇的な効果を示します。

 

カプラシズマブは非常に良く効く薬剤ですが、血漿交換終了後のADAMTS-13活性の回復を遅延させるという報告があり、今回はスペインのレジストリデータを用いて、さらなる検証を行ったという論文になります。

 

今回の検証ではカプラシズマブ使用の有無に関わらず、ADAMTS-13活性回復に差はなかったのですが、カプラシズマブを診断後早期に投与された群では血漿交換終了後にADMATS-13活性が回復するまでの期間が延長されました。これはカプラシズマブにより血漿交換から早く離脱できたことが一因ではないかと考察されており、血漿交換開始からの期間で検討すると有意差はないという結果となりました。カプラシズマブにより血小板増加や血漿交換短縮、原疾患悪化、再発に明らかなメリットがありますから、今後も安心して使用していけると思いました!

 

おまけ

 

 

既出の画像なのですが、カプラシズマブと聞くたびにカプレーゼを思い出すので、画像フォルダからカプレーゼっぽい料理の写真を探してきました!