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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBritish journal of Haematologyからで、古典的ホジキンリンパ腫患者における肺合併症の研究をご紹介いたします。

 

Pulmonary diseases in patients with classical Hodgkin lymphoma relative to a matched background population: A Danish national cohort study

JH Vandtved et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh.19475

 

【要旨】

古典的ホジキンリンパ腫(cHL)患者でブレオマイシン含有化学療法後の肺毒性が問題となっている人において、晩期毒性は生存に影響をもたらしうる。今回のデンマークの人口ベース研究において、肺疾患の頻度が調査された。

 

成人cHL患者で、2000年から2018年の間にABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)もしくはBEACOPP(ブレオマイシン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、プロカルバジン、プレドニゾロン)で治療された1474人が解析含まれ、同時に背景手段より抽出された年齢と性別をマッチさせた7370人からなる比較群が用いられた。

 

患者のフォローアップ期間中央値は8.6年だった。cHL患者は肺疾患のリスクが上昇しており(HR 2.91[95% CI 2.30-3.68])、10年間の累積危険度は7.4%で、対する比較群は2.9%だった。過剰リスクは間質性肺疾患(HR 15.84[95% CI 9.35-26.84])および慢性閉塞性肺疾患(HR 1.99[95% CI 1.43-2.76])で観察され、患者の10年間の累積危険度はそれぞれ4.1%と3.5%だった。喘息(HR 0.82[95% CI 0.43-1.56])では過剰リスクは認められなかった。間質性肺疾患のリスク因子は年齢60歳以上、B症状あり、低アルブミンだった。

 

これらの結果はcHL患者における肺疾患は著明な負担であることを示し、診断時の呼吸器症状のワークアップの重要性が強調される。

 

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ホジキンリンパ腫はブレオマイシンを含め肺に影響が出やすい薬剤が多い治療のため、呼吸器関連合併症にはいつも悩まされ、科内でも急性期・晩期含めてよくトピックになります。最近はA+AVD療法が進行期ホジキンリンパ腫の標準治療となりましたので、ブレオマイシンの処方量が若干減っているのが多少の救いですが、限局期ではABVD療法はまだ標準治療ですから・・・

 

ホジキンリンパ腫でさらに悩ましいのは、メジャーなリンパ腫の割に例えばDLBCLの場合のようなエビデンスレベルの高い代替レジメンがほとんどないことです。なので、懸念があってもブレオマイシンを使わざるを得ないし、仮に副作用が出てしまうと一気に治療が難しくなるというジレンマにしばしばぶつかります。

 

そんな中で今回の報告ですが、デンマーク全国でのコホート研究からのデータで、分かってはいたことですが、ホジキンリンパ腫患者さんは治療後も一般集団より間質性肺疾患や慢性閉塞性肺疾患のリスクが高いことが示されています。このため、注意深い経過観察が必要ですし、喫煙者の方はリスクを避けるため禁煙するべきでしょう。

 

おまけ

 

 

濃厚なアンキモを食しました!博多と言えば、の芋焼酎ともよく合います。