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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

ゴールデンウィークもいよいよ後半戦ですが、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は小児血液領域なので若干専門外?ですが、New England Journal of Medicineからで、先天性血栓性血小板減少性紫斑病に対する組み替え型ADAMTS13の補充療法についてご紹介いたします。

 

Recombinant ADAMTS13 in Congenital Thrombotic Thrombocytopenic Purpura

Scully M et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2314793

 

【背景】

先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は重篤な遺伝的ADAMTS13の欠乏の結果として起こる。先天性TTP患者において、定期補充もしくはオンデマンド治療として投与される組み替え型ADAMTS13と標準治療(血漿由来製剤)の有効性と安全性は分かっていない。

 

【方法】

今回の第Ⅲ相非盲検クロスオーバー試験では、患者を1:1の割合で6ヶ月の2つの期間において、組み替え型ADAMTS13(体重1kgあたり40IUを経静脈的投与)もしくは標準治療のどちらか、引き続いてもう一方を受けるようランダム化割り付けされた。その後、全ての患者はさらに6ヶ月間組み替え型ADAMTS13を投与された。今回の中間解析のトリガーは、少なくとも30症例での試験完遂であった。主要評価項目は急性TTPイベントだった。TTPの徴候、安全性、薬物動態が評価された。急性TTPイベントを認めた患者ではオンデマンド治療を受けることが出来た。

 

【結果】

合計で48人がランダム化を受け、32人が試験を終了した。組み替え型ADAMTS13による予防中に急性TTPイベントは起こらなかったが、標準治療での予防中に1人で急性TTPイベントを認めた(平均年間イベント率 0.05)。血小板減少が最も頻度の高いTTPの徴候だった(組み替え型ADAMTS13での年間イベント率 0.74、標準治療で1.73)。組み替え型ADAMTS13を使用した患者の71%で有害事象が起こり、標準治療では84%だった。試験参加医師が試験薬と関連すると考えた有害事象は、組み替え型ADAMTS13で9%の患者に、標準治療で48%の患者に起こった。有害事象による試験薬の中断もしくは中止は、組み替え型ADMATS13では認めず、標準治療では8人で認められた。組み替え型ADAMTS13治療中に中和抗体の産生は確認されなかった。ADAMTS13活性最大値の平均は、組み替え型ADAMTS13治療後で101%、対して標準治療後は19%だった。

 

【結論】

先天性TTP患者において、組み替え型ADAMTS13での予防中に、ADMATS13活性は正常レベルのほぼ100%に達し、有害事象は概ね軽度から中等度であり、TTPイベントや徴候は稀であった。

 

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血液内科(成人)だと後天性のTTPはたまに診るのですが、今回の論文は極めて稀な先天性のTTP患者さんが対象です。遺伝的にADAMTS13活性が低く、新鮮凍結血漿や血漿由来製剤が投与される(らしい)のですが、ドナーに依存しますし有効性も高いとは言えませんでした。今回の組み替え型ADAMTS13は、従来の治療と比較しても非常に高い有効性と安全性を示しました。使うことはないと思いますが、知識として知っておきたいと思います!

 

おまけ

 

 

先日食した鶏つくね串とビールです。つくねが輝いています!