【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBritish journal of haematologyに日本から面白いというか耳が痛い報告が出ていたのでご紹介いたします。

 

Prevalence of massively diluted bone marrow cell samples aspirated from patients with myelodysplastic syndromes (MDS) or suspected of MDS: A retrospective analysis of nationwide samples in Japan

Ogata K et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh

 

【要旨】

骨髄検査は骨髄異形成症候群(MDS)の診断と予後グレード決定における主要な要素であり、適切な骨髄細胞サンプルを得ることが正確な検査結果に不可欠である。吸引した骨髄サンプルが末梢血で大きく希釈されることが問題としてよく知られている。しかし、MDS患者における頻度はあまり研究されていない。我々は、日本においてMDSと診断されたかもしくは疑われた患者から吸引された全国の骨髄サンプルでの多量末梢血混入頻度を調べた最初の研究を報告する。

 

解析に使用できた283症例のうち、92症例(32.5%)から得られた骨髄スメアは骨髄の顆粒が少なく(多量末梢血混入)、特に52症例(18.4%)で骨髄の顆粒が見られなかった。骨髄の顆粒が少ない症例について、我々は主治医が自分たちの患者の骨髄スメアをどのように解釈したかを調査した。92症例のうちわずか19症例(20.7%)において、主治医は骨髄スメアに末梢血が混入していると気づいた。その上、末梢血混入が医師によって見過ごされている時、顆粒の少ない症例で診断の助けになる骨髄生検はしばしば実施されなかった(73症例中50症例)。

 

これらのリアルワールドデータから、診断のための検査を改善させるため働いている研究者だけでなく、診断のための検査を実施し使用する臨床医もこの頻度が高く潜在的に重大な問題を自覚しなければならないことが強調される。

 

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骨髄異形成症候群(MDS)に限らず、骨髄検査は血液疾患の診断に重要な検査です。診断する上で採取する骨髄液のクオリティが重要な事は今更言うまでもないのですが、リアルワールドではそのクオリティが高くない場合が多く、さらに医師がそれをあまり認識・問題視していないことが指摘されています(耳が痛い・・・)。さらに、吸引された骨髄検体のクオリティが低い場合でも骨髄生検を行うことでカバーされるのに、骨髄生検が実施される割合が低いことも書かれていました(耳が以下略)。

 

紹介元で採取された骨髄サンプルのクオリティが低かったとしても、著者らの施設で採取しなおすとクオリティが上がった症例も多かったことも示されており、検査において骨髄液のクオリティを意識することや、残念ながら採取されたサンプルの質が低かった(適切に採取してもそのようなことはあります)としても、それを認識した上で、より良い再検査や診断へつなげることが重要なのだと思います。

 

良い骨髄液がなかなか取れないとだんだん嫌な汗が出てきて、場の空気も停滞してきて、何より患者さんも大変で、ようやく何とか取れた骨髄液の質まで気にかける余裕はない!・・・というのは誰しも経験すると思うのですが、やはり診断がきちんとしていないと、その後の治療がうまく行きませんから・・・グッとこらえてクオリティの高い骨髄検体が取れるように精進したいと思いました。

 

おまけ


 

前回に引き続き送別会シリーズで、前菜のオリーブとバゲットです!