こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はLancet Haematologyからで、自家造血幹細胞移植後地固め療法としての抗CD30 CAR-T細胞療法の第Ⅰ相試験結果をご紹介いたします。
Grover NS et al, Lancet Haematol 2024, doi: 10.1016/S2352-3026(24)00064-4
【背景】
CD30を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、先行するリンパ球除去化学療法を行うことにより、安全で有望な効果を持つ。我々は、再発リスクの高いCD30陽性リンパ腫患者を対象に、自家造血幹細胞移植(HSCT)後の地固め療法としての抗CD30CAR-T細胞の安全性を検証することを目的とした臨床試験を行った。
【方法】
今回の第Ⅰ相用量漸増試験は米国の2施設で実施された。患者は3歳以上で、古典的ホジキンリンパ腫もしくは免疫組織学的に確認されたCD30陽性非ホジキンリンパ腫に罹患し、Karnofsky performance scoreが60%を超え、自家HSCTを計画されている場合に、もし患者が初回治療不応もしくは初回治療12カ月以内の再発、または移植前の救援化学療法開始時に節外性浸潤を認めることで定義される再発リスクが高いと考えられた場合に適格とした。
患者はカルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファラン(BEAM)併用HSCT後に3系統の造血細胞生着が確認された後(好中球絶対数 500/μL以上が3日間、輸血なしで血小板数 2.5万/μL以上が5日間、輸血なしでヘモグロビン 8g/dL以上が5日間で定義)に、地固め療法としてCAR-T細胞の単回投与を受けた(体表面積 1m2あたりのCAR-T細胞が2 × 107細胞、1 × 108細胞または2 × 108細胞)。主要評価項目は最大耐容量の決定で、CAR-T細胞注入を受けた患者における用量制限毒性率に基づいて決定された。
【結果】
2016年6月7日から2020年11月30日の間で、21人の患者が参加し、18人(ホジキンリンパ腫 11人、T細胞性リンパ腫 6人、グレーゾーンリンパ腫 1人)が自家HSCT後に中央値で22日(範囲 16-44)時点で抗CD30 CAR-T細胞の注入を受けた。用量制限毒性は観察されず、試験された最大量である体表面積 1m2あたり2 × 108細胞が最大耐容量と決定した。1人の患者でグレード 1のサイトカイン放出症候群が見られた。最も頻度の高いグレード 3-4の有害事象はリンパ球減少症(18人中2人[11%])と白血球減少症だった(18人中2人[11%])。治療関連死亡はなかった。2人の患者が、治療後およそ2年および2.5年で二次がんを発症した(1人がステージ 4の肺非小細胞がん、1人が精巣がん)が、これらは治療と関連しないと判断された。注入後フォローアップ期間中央値48.2カ月時点(四分位範囲 27.5-60.7)で、全ての治療を受けた患者での無増悪生存期間中央値は32.3カ月(95% CI 4.6カ月-未到達)で、ホジキンリンパ腫で治療を受けた患者(n=11)の無増悪生存期間中央値は未到達であった。全ての治療を受けた患者での全生存期間は未到達だった。
【解釈】
BEAM療法併用自家HSCT後の地固め療法としての抗CD30 CAR-T細胞の注入は安全で、毒性発現率は低く、再発リスクの高いホジキンリンパ腫患者で有望な効果を示す予備的結果だった。これにより結果の確認のためさらに大規模な試験が必要であることが強調される。
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ホジキンリンパ腫の治療戦略は現在大きな転換期にあり、ブレンツキシマブ・ベドチンや免疫チェックポイント阻害剤も有望視されています。これらの治療と比較して、あるいは組み合わせてCAR-T細胞療法がどうかというところですが、新たな治療戦略の登場により選択肢が増えるのは大歓迎です!
おまけ
春らしいアスパラガスのチーズグラタンを食べました!