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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBlood Advancesからで、個人的には興味深いITPに対する治療戦略の比較試験をご紹介いたします。

 

Prednisone vs high-dose dexamethasone in newly diagnosed adult primary immune thrombocytopenia: a randomized trial

MGG Mazzucconi et al, Blood Adv 2024, doi: 10.1182/bloodadvances.2023010975

 

【要旨】

成人新規診断未治療の原発性免疫性血小板減少症(pITP)患者において、どのタイプの副腎皮質ステロイド(標準的用量のプレドニゾロン[PDN]もしくは高用量デキサメサゾン[HD-DXM])が最善の初期治療かについては議論がある。今回の報告は、新規診断で未治療のpITP(18歳以上80歳以下、血小板数 2万以下もしくは2万/μLを超えるが5万/μL未満でbleeding score 8以上)においてPDNとHD-DXMの比較を行ったアドホック試験である。

 

患者はPDN 1mg/kg/日をday 0からday 28に投与される群(A群)もしくはHD-DXM 40mg/日を4日間、14日ごとに連続して3コース投与される群(B群)にランダム化割り付けされた。113人のうち59人(52.2%)がA群に、54人(47.8%)がB群に割り付けられた。評価可能な患者において、全初回奏効(完全寛解[CR]、部分寛解[PR]、最小奏効[MR])は、A群でday 42で56人中44人(78.57%)、B群でday 46で49人中46人(93.88%)だった(P=0.0284)。最終的な全奏効(初回治療からday 180)はA群で43人中26人(60.47%)、B群で39人中23人だった(P=0.8907)。持続する奏効(初回治療から12カ月時点)はA群で31人中25人(80.65%)、B群で36人中20人(55.56%)だった(P=0.0292)。7例で再発が見られた。フォローアップ期間中央値は44.4カ月だった。48カ月での全生存率は100%、day 180から48カ月までの全無増悪生存率は81.11%だった。

 

PDNとHD-DXMパルスは忍容性に優れていた。HD-DXMは初回治療反応が良好だったが、PDNほど治療効果が持続しなかった。

 

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ITPは最も頻度の高い血液良性疾患の一つかと思います。初期治療は副腎皮質ステロイドというところに異論の余地はないのですが、頻度の高い疾患の割にステロイドの種類や量、適切な減量スケジュールについての質の高いエビデンスは意外に少なく、経験的にプレドニゾロンか高用量デキサメサゾンが選択されます。

 

今回は比較的軽症のITP患者を対象としたプレドニゾロンと高用量デキサメサゾンの前向きランダム化比較試験で、概ね予想出来る結果ではあるのですが、前向き試験で証明されたというのは非常に意義があります。早期の治療反応は高用量デキサメサゾンが優れ、副作用も少ないメリットがある一方で、プレドニゾロンは副作用がやや多めですが効果が持続するメリットがあり、症例によっての使い分けが重要だと再認識しました。

 

おまけ

 

 

冷蔵庫にある材料で適当に作ったグラタンです。たしか鶏挽肉がメインだったような・・・ちょっといいチーズを使ったので、味は大変美味しかったです。