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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBritish Journal of Haematologyからで、ベンダムスチン治療における感染症や予防薬に関する後方視的解析です。

 

Infection risk and antimicrobial prophylaxis in bendamustine-treated patients with indolent non-Hodgkin lymphoma: An Australasian Lymphoma Alliance study

Manos K et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh.19407

 

【要旨】

感染症とリンパ球減少症は、ベンダムスチン関連で確立した合併症である。リンパ球減少症の重症度と感染症リスクの関連性、および抗菌薬予防の果たす役割についてはよく分かっていない。今回の多施設共同後方視的研究では、302人のベンダムスチンにより治療されたインドレント非ホジキンリンパ腫患者における、感染症の特徴と抗菌薬予防について解析を行った。

 

リンパ球減少症(1000/μL未満)はほぼ必発であり、リンパ球数回復にはベンダムスチンの累積投与量が相関した。リンパ球減少症の重症度および期間と感染症に相関は見られなかった。感染症は44%の患者に起こり(50%が細菌性)、27%が入院した。32%の感染症はベンダムスチン完遂後3カ月以上経過してから起こった。感染症はオビヌツズマブ and/or 抗CD20維持療法、前治療歴の有無、進行期と相関した。21人の患者に24件の日和見感染が認められ、10件が水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)、7件が単純ヘルペスウィルス(HSV)、1件のサイトメガロウイルス、1件の進行性多巣性白質脳症、1件のノカルジア症、1件のニューモシスチス・イロベチイ肺炎(PJP)、3件のその他の真菌感染だった。VZV/HSVとPJP予防は、それぞれ42%、54%に処方されていた。VZV/HSV感染は予防を受けている感染で少なかった(HR 0.14、p=0.061)。一方で、PJP予防により細菌感染頻度が減少した(HR 0.48、p=0.004)。

 

我々の研究により、リンパ球減少症の重症度にかかわらず感染症のリスクが高いことが示され、早期および晩期感染症のリスクを減少させるための予防が支持される。

 

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ベンダムスチンは、低悪性度非ホジキンリンパ腫において劇的な効果を示し、現在のキードラッグの一つです。非常に優れた薬剤なのですが、免疫不全に起因する感染症にしばしば悩まされます。このためST合剤や抗ウィルス薬による予防が推奨されていますが、包括的な感染症リスクや予防効果については不明な点が多いのが現状です。

 

今回は後方視的解析で限界はあるのですが、やはり感染症の頻度は高く、特に日和見感染も無視できない頻度で起こっていたという、臨床的感覚に合う結果でした。本研究はコロナ禍前のデータですが、現在では新型コロナウィルスにも注意をはらう必要があり、さらに感染症管理は複雑化しています。また、本来であればした方がよいと思われるオビヌツズマブやリツキシマブ維持療法による感染症頻度の上昇がみられ、このあたりの判断は非常に悩ましいですが、感染症が重篤化しやすい患者群では維持療法の適応は慎重に考慮する必要がありそうです。

 

おまけ

 

 

大ぶりなジャガイモが非常に美味しかった、鶏じゃがです!