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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はJCOからで、急性骨髄性白血病(AML)の早期再発に対するベネトクラックス+低用量シタラビンの有効性と安全性を検証した第Ⅱ相試験をご紹介いたします。

 

Targeting Molecular Measurable Residual Disease and Low-Blast Relapse in AML With Venetoclax and Low-Dose Cytarabine: A Prospective Phase II Study (VALDAC)

IS Tiong et al, J Clin Oncol 2024, doi: 10.1200/JCO.23.01599

 

【目的】

急性骨髄性白血病(AML)の微小残存病変(MRD)もしくは少芽球性の再発におけるベネトクラックスに低用量シタラビン(LDAC)を併用した治療の有効性と安全性を前向き第Ⅱ相試験で検証した。

 

【方法】

MRD(1 log10 以上の上昇)または少芽球性(芽球 5%~15%)再発が見られた患者が、ベネトクラックス 600mg 1日1回をD1からD28、加えてLDAC 1日1回をD1からD10に、28日サイクルで投与された。主要評価項目はMRD再発群でのMRD奏効、もしくは少芽球性再発群での完全寛解(CR/CRh/CRi)とした。

 

【結果】

MRD再発(n=26)もしくは少芽球性再発(n=22)の成人患者48人が組み入れられた。年齢中央値は67歳(範囲 18~80歳)で、94%が強力化学療法を以前に受けていた。患者は中央値で4サイクルの治療を受け、17%は12サイクル以上の治療を完遂した。少芽球性再発患者は、MRD再発患者と比較してグレード 3以上の貧血(32% vs. 4%;P=0.02)、感染症(36% vs. 8%;P=0.03)が多く、一方でグレード 4の好中球減少(32% vs. 23%)や血小板減少(27% vs. 15%)は同等だった。

 

分子学的MRD再発のマーカーにはNPM1変異(77%)、CBFB::MYH11(4%)、RUNX1::RUNX1T1(4%)もしくはKMT2A::MLLT3(4%)が含まれた。また、IDH1/2で1 log10 以上の上昇が見られた3人の患者(12%)が含まれた。MRD再発群において、2サイクルまでに69%の患者で1 log10 の減少が認められ、46%でMRD陰性の寛解が達成された。少芽球性再発群では73%がCR/CRh/CRiを達成した。全体で21人(44%)で造血幹細胞移植が実施された。全生存期間(OS)中央値はどちらの群でも未到達だった。推定2年OS率はMRD再発群で67%(95% CI 50-89)、少芽球性再発群で53%(95% CI 34-84)だった。

 

【結論】

第一寛解期AMLでMRD再発もしくは少芽球性再発を起こした患者において、ベネトクラックスとLDACの併用療法は忍容性に優れ、高い有効性を示した。

 

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AMLの再発治療は、疾患の進行状態・患者さんの全身状態・アクセスできるドナーにより大きく変わってきます。このため、再寛解導入から移植に持ち込むまでの戦略は多様化せざるを得ず、困難を感じる場合も多いです。そこで、例えばPh陽性の急性リンパ性白血病や急性前骨髄性白血病など分子標的薬による治療が確立した疾患においては既に一定のエビデンスがあるのですが、微小残存病変(MRD)をモニタリングして早期再発の段階で治療介入を開始する、というのはAMLにおいても合理的な治療戦略となる可能性があります。

 

しかしながら、現在のような分子標的薬による治療が発達する前の時代においては、結局のところどのような再発にしてもAMLは強力化学療法と移植をする以外のめぼしい選択肢がなかったため、MRDが陽転化した場合のどのタイミングで治療を開始するかについては一定の見解がなく、前向きの質の高いエビデンスは乏しい状況でした。

 

今回のVALDAC試験は、MRDが増加もしくは芽球が少ない状況での再発AML患者さんを対象として、近年AMLで猛威を振るっている新薬のベネトクラックスに低用量シタラビンを組み合わせた、比較的治療強度の弱い再寛解導入を行い、前向きに観察したという第Ⅱ相試験になります。

 

少数例のため一般化はまだ出来ませんが、まず早期に治療介入することで、血球減少が軽い状態で治療開始となるため合併症が減少する可能性があること、主要評価項目である治療初期の2サイクルでかなりの患者に奏効が得られること(より条件の良い移植につなげられる可能性があります)などがメリットとして挙げられました。これは最も頻度の高いNPM1変異でも同様で、今後多数例での検証が待たれます。

 

おまけ

 

 

鶏手羽元と大根の煮物です!大根の季節もそろそろ終わりですね。